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日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「世界の果てのビートルズ」ミカエル・ニエミ著(岩本正恵訳)新潮社

2007-09-25 | いしいしんじ
「世界の果てのビートルズ」ミカエル・ニエミ著(岩本正恵訳)新潮クレスト・ブックスを読みました。
凍てつく川、薄明りの森。スウェーデンの北極圏、笑えるほど最果てのパヤラ村で育ったぼく・マッティと、親友のニイラ。
きこりの父たち、殴りあう兄たち。そして姉さんのプレーヤーで聞いた衝撃のビートルズ。スウェーデンでは12人に1人が読んだというベストセラーになった小説。カバーにいしいしんじさんの短いコメントが寄せられています。

スウェーデンの超田舎町の情景が目に見えてくるような小説。
リアリズム小説かと思いきや、突然ボイラーに閉じ込められたまま巨人になったり、3年前に亡くなった祖母を退治する場面になったり、なんの注釈もなく空想的な世界に飛んでしまう文章も面白いです。
町には楽器店もなく、最新ポップ・チャートを聞くには高い木に銅線をはってラジオを受信しなければならない町。そんな中で聞いたビートルズの一枚のレコードがどんなに少年たちに興奮と憧れをもたらしたかがよくわかります。
結婚式でのホラ話とサウナ対決、ねずみを退治する夏のアルバイト(最後が辛い!)、下水処理場でのどぶろく合戦、すべてが生き生きとして面白い。
最後の冬の闇の場面は静かでとても心象的です。



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