Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「自己流園芸ベランダ派」いとうせいこう著(毎日新聞社)

2009-01-13 | エッセイ・実用書・その他
「自己流園芸ベランダ派」いとうせいこう著(毎日新聞社)を読みました。
大切な夜に咲いた月下美人、あんずの人工授粉、恥じらう夜顔。
小さなベランダで起こる数々のできごと。
自分の経験を元に書物を調べないで育てる「自己流」を楽しむせいこうさん。
「ボタニカル・ライフ」に続く植物エッセイで、園芸家・柳生真吾さん、詩人の伊藤比呂美さんとの対談も収録されています。

笑える度でいえば「ボタニカル・ライフ」の方がおすすめですが、この本は文章が短くて読みやすく、またその後のいとうさんのベランダ生活が垣間見られて興味深く読めます。

「桜は見上げる者の方を向いて咲くのだ。もし太陽に顔を向ける花ならば、われわれは裏側しか見ることができず、花見に興じることもないだろう。」

「どの園芸本にも「なった実をどの時点で収穫すべきか」は載っていない。それは農家の知識だからである。俺はベランダーであり、落ちた実を拾って食ったらうまかった、というようないい加減な存在でいたい。
が、しかしいい加減ではあれ、収穫そのものには非常に憧れる俺だ。」

「俺がどうしても気に入らないのは「ほう」のある植物。しかもそれが花にしか見えない植物である。たとえばミズバショウ、カラー、アンスリウム。
考えてみれば、「ほう」は虫をだますために花らしく見せているのである。そういうたかが昆虫風情に対するカムフラージュに、人間たる俺までがだまされているという事実に愕然とする。」

それから伊藤比呂美さんとの対談のなかの印象的な言葉。

「せいこうさん:植物始めてみたい人っていう人は、みんな怖がるんですよ。柳生真吾さんとの話にも出たんですけど、枯らしたらどうしよう、って。これが園芸の最大のネックになってる。」
「比呂美:うん。それは間違っていると思います。あれはもう、死んでなんぼですよ。買ってきた時が最高の状態なの!」
「せいこう:アハハ。つまり、それをダメにしていくんですよね。」

目からウロコ!そのとおり。
私が園芸に興味ありつつ、いつも切花でお茶を濁しているのは、「ダメにしたくない」という気持ちがあるからです。「死んでなんぼ」ってすごいなあ。おふたりの体験からくる言葉ですね。

いとうさんが「失敗はありえない」と絶賛のシシトウを私も育ててみるかな!?






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