Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「蒼穹の昴(第三巻)」浅田次郎著(講談社)

2009-01-15 | 日本の作家
「蒼穹の昴(第三巻)」浅田次郎著(講談社)を読みました。
落日の清国分割を狙う列強諸外国。
勇将・李鴻章(リイホンチャン)は知略をもって立ち向かいますが、かつて栄華を誇った王朝の崩壊は誰の目にも明らかでした。
権力闘争の渦巻く王宮では恐るべき暗殺計画が実行に移されます。
西太后(シータイホウ)の側近となった春児(チュンル)と、改革派の俊英・文秀(ウェンシウ)は、互いの立場を違(たが)えたまま時代の激流に飲み込まれます。

皇帝に政権を受け渡す決意をした西太后。いよいよ物語は佳境へ。
今巻では、ある人物が謀殺されてしまいます。
清国の行く末を思って哀しさ、悔しさをこらえる文秀の姿は読んでいてとてもつらかった・・・。

それから息を飲んだのが、李鴻章がイギリス公使と香港租借について交渉する場面。李元将軍が登場場面からおされっぱなしのイギリス側。
「永久(久久と同じ音の九九)」とたてまえをつけながらしっかり期限を定めて租借契約を結んだプレジンデント・リー。さすが百戦錬磨の将軍。したたか・・・。

そして文秀と春児の偶然の邂逅の場面も印象的です。
「おいらが立派なんじゃねえ。おいらを守ってくれている昴の星が、そうしてくれてるんだ。おいら、何もしてねえもの。」
苦しげな息を吐き出してうつむく文秀から零れ落ちる涙。
そしてふりしぼられた言葉。
「おまえは、えらい。」

本当は昴の星なんて春児についてないのに~!
何も言えずに胸がいっぱいになる文秀の気持ちに共感してしまいました。
無私の姿をあがめて、宦官たちからも厚い支持を受け次の大総管とはやされる春児。

アメリカ人記者トムの語る「燕迷(ミンメイ)」という言葉。
「燕迷とはね、北京という町のとりこになることさ。この都にはふしぎな魅力がある。七百年も変わらぬ古都のたたずまい。移ろう四季、人々の暮らし、食い尽くせぬ味覚、そして世界一美しい言葉。誰でもここで一週間を過ごせば、すっかり酔ってしまう。ここがどこで、自分が誰かもわからなくなる。つまりそれが、燕迷というものだ」

この「燕迷」のようにこのシリーズにすっかりはまってしまった私。
いよいよ次は最終巻!

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