Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「碁を打つ女」シャン・サ著(平岡敦訳)早川書房

2007-09-21 | 外国の作家
「碁を打つ女」シャン・サ著(平岡敦訳)早川書房を読みました。
フランスの高校生が選ぶゴンクール賞を受賞した作品。
時は1937年、満州。
寒さ厳しい広場で男たちが碁に興じる中に、一人だけ若い娘がいました。彼女が学校や両親、息のつまるような日常から逃れられるのは、碁を打っている時だけ。
ある日、抗日連軍の暴動に巻きこまれた娘は、青年二人に助けられ、次第に親密に関係を結んでいきます。
この乗にやってきたある日本人士官は、昼は抗日分子の追跡、夜は女遊びの毎日を送っています。彼は北京語ができることから、抗日分子が紛れこんでいると思われる広場へ、地元の人間になりすまして乗りこみ、その娘と碁を打つようになりました。
連日、互いの名前も素性も知らぬまま、二人は広場で対局を続けます。
日本軍と抗日軍の対立は激化し、運命は思わぬ方向へ・・・。

作者は在仏の中国人作家。学び始めて数年のフランス語を駆使して小説を書いたという事実に驚き。画家バルテュスのもとで働いたこともあり、この本の序文は故バルテュスの妻・節子夫人が寄せています。
小説はふたりのわたし(娘)と私(士官)の一人称の文章が短い章で呼応する形で描かれています。
時代背景は厳しいものですが、文章の表現の美しさにはうっとり。
蝉の羽化の場面、娘が眠る姿を見守る士官の場面。
碁を打つふたりの場面は理知的で、きな臭い世情を忘れさせるひたむきさが感じられます。
ふたりの立場が明かされるクライマックスは衝撃です。


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