Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「昨日のように遠い日」柴田元幸編(文藝春秋)

2009-08-25 | 柴田元幸
「昨日のように遠い日」柴田元幸編(文藝春秋)を読みました。
レベッカ・ブラウン、ユアグローなど柴田さんの訳でおなじみの作家のほか、
20年代ソ連のアヴァンギャルド作家の愉快で恐ろしい世界、
サラエボ出身の新鋭に、本邦初登場のアイルランドの女性作家など、
少女少年小説を15編集めたアンソロジー。
特別付録にアメリカン・コミックの「眠りの国のリトル・ニモ」、「ガソリン・アレー」のカラー・リーフレットが付いています。
「少年少女」のための小説と区別するため?か、「少女」が先の「少女」少年小説集です。実際に私の印象に残った作品も少女小説が多かったかも。

収録作品は以下の通り。

●大洋      バリー・ユアグロー
●ホルボーン亭   アルトゥーロ・ヴィヴァンテ(西田英恵訳)
●灯台      アルトゥーロ・ヴィヴァンテ(西田英恵訳)
●トルボチュキン教授 
      ダニイル・ハルムス(増本浩子/ヴァレリー・グレチュコ訳)
●アマデイ・ファラドン  著者・訳者同上
●うそつき        著者・訳者同上
●おとぎ話        著者・訳者同上
●ある男の子に尋ねました 著者・訳者同上
●猫と鼠 スティーヴン・ミルハウザー
●修道者   マリリン・マクラフリン(小澤英実訳)
●パン    レベッカ・ブラウン
●島     アレクサンダル・ヘモン
●謎   ウォルター・デ・ラ・メア

訳者の表示がないのはすべて柴田さんの訳によるもの。
雑誌&HPのモンキービジネスに掲載されていたものもいくつかあります。

私がいいと思った作品。

『修道者』

女の子がいやおうなく大人になっていく。
子供に戻りたいわけではない。でも「女」にはなりたくない。

「あたしは人から見られたりしない。ただ自分のやりたいことをやって、人からあれこれ見定められたりはしない。」

これから花開く若い女の子である、という周囲からの求めと、
かまわないでほしい、自分らしくいたいのだからと感じる自分との差異。
女の子の体が大きく変わる時期。
吹き荒れる心の中の嵐が、おばあちゃんの海辺の家で過ごすうちにだんだんと変化していきます。

『パン』
あなたがいつもとるホイートロール。
柔らかいパンの描写から、あなたのはく靴、あなたのしぐさ、あなたの・・・
片思いの「私」の熱い目線をそのままたどるように、丹念に語られる女子寮での日常。美しくカリスマ性のある「あなた」。
パンをめぐる苦い結末は恋の終わりなのか、
それとも悪魔的な「あなた」への恋を強めることになるのか。

あとがきで柴田さんは「いまさら子供の無垢だの純真さだのを謳いあげた作品を並べたって仕方ない。」と語っていますが、単純に「少女か少年を主人公にした作品」だけではない、バラエティにとんだ作品が選ばれています。