Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「小川洋子の偏愛短篇箱」小川洋子編著(河出書房新社)

2009-08-06 | 日本の作家
「小川洋子の偏愛短篇箱」小川洋子編著(河出書房新社)を読みました。
「この箱を開くことは、片手に顕微鏡、片手に望遠鏡を携え、短篇という王国を旅するのに等しい」
「奇」「幻」「凄」「彗」のこだわりで選んだ短篇作品集です。
各作品ごとに小川さんの短いエッセイが付いています。

収録作品は以下の通り。

件(くだん)   内田百間
押絵と旅する男  江戸川乱歩
こおろぎ嬢    尾崎翠
兎        金井美恵子
風媒結婚     牧野信一
過酸化マンガン水の夢 谷崎潤一郎
花ある写真    川端康成
春は馬車に乗って 横光利一
二人の天使    森茉莉
藪塚ヘビセンター 武田百合子
彼の父は私の父の父 島尾伸三
耳        向田邦子
みのむし     三浦哲郎
力道山の弟    宮本輝
雪の降るまで   田辺聖子
お供え      吉田知子

いかにも小川さんの好きそうな、小川さんの小説のエッセンスを感じる作品ばかり。「名作」というよりは、風変わりなもの、不気味でじわじわ~とくるものが多いです。
谷崎潤一郎の「過酸化マンガン水」って自分の赤い便が水につかった時の色がそんな感じって!・・・見立てがすごい。
牧野信一さんの作品は初めて読みました。「風媒結婚」の主人公はなんとなくミルハウザーが描く主人公を連想させます。
川端康成の現像すると浮かび上がってくる花の写真も不思議な話でした。
「春は馬車に乗って」。
病の妻を看病しながらの進まぬ執筆、貯まってくる体の疲労、日々を生きるための金の苦労。どんどんいきづまる生活の最後に現れるスイトピーの香り。
なんだか胸が苦しくなりました。 

文豪と呼ばれる人たちの小篇を読むのは、代表作を読むのとはまた違った味わいで面白いです。