Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「ポートレイト・イン・ジャズ」絵・和田誠/文・村上春樹(新潮社)

2006-03-14 | 村上春樹
「ポートレイト・イン・ジャズ」絵・和田誠/文・村上春樹(新潮社)を読みました。
和田誠さんが描くジャズ・ミュージシャンの肖像に、村上春樹さんがエッセイを添えたもの。私はジャズはまったく聴かないのでよくわからないのですが、一般の認識からいうとマニアックな選択が多い?らしいです。文庫版では単行本二冊分+あらたにボーナス・トラック三篇(アート・ペッパー/フランク・シナトラ/ギル・エヴァンズ)が加えられています。
和田誠さんの絵には見飽きないよさがあります。
色も深みがあってきれいだし、表情豊かだし、本当に楽器の音色が聞こえてきそう。でもねぇ・・・ちょっとバケモノみたいな肖像画もあります。オスカー・ピーターソンってほんとうにこんな人なのかな・・・。「しっぽの先までエネルギーが満ち溢れている」人らしいですが、首、ないよ。(笑)
村上さんの文章は、まず音楽を聞く悦びをそっくり文章に移し変えられる多彩な言葉遣いに驚かされます。
音楽の素晴らしさをジャンルの違う「文章」というものであらわすことはとても難しいことだと思います。少なくとも私にはできません。
でも村上春樹さんにはそれがため息が出るくらい素晴らしい文章でできるんですよね。スゴイ・・・。
本と並行して、同名でオムニバスCDも2枚発売されていますので、そのCDを聴きながら一人ずつゆっくり読みすすむのがおすすめ。
ひとつひとつの文章にパワーがありますので、一気に読むと体に悪いかも?
村上さん自身のその曲・ミュージシャンにまつわる記憶や想いが一緒に語られており、物語のように音が浮かび上がります。
また黒人もいい、白人もいい。スウィングしてもしなくても、ビッグ・バンドもモダン・ジャズもいい、という感じで、能書きなしにジャズをとことんエンジョイしている感じも素敵です。
ジャズ・ファンでない私でもこれだけ楽しめる本ってすごい。