Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「くらのかみ」小野不由美著(講談社)

2006-03-03 | 児童書・ヤングアダルト
「くらのかみ」小野不由美著(講談社)を読みました。
「十二国記」でも有名な小野不由美さんが描く、少年少女を主人公にし、田舎の古民家を舞台にしたミステリーです。
始まりは家の蔵で行った「四人ゲーム」。
まっくらな部屋の四隅に四人の人間が立ち、肩を順番に叩きながら部屋をぐるぐる回ります。とうぜん四人では成立しないはずのゲームを始めたところ、忽然と五人目が出現します。でもみんな最初からいたとしか思えない顔ぶればかり。
この家は行者に祟られ座敷童子に守られているという言い伝えを持つ屋敷。
後継者選びのために親族一同が呼び集められたのですが、後継ぎの資格をもつ者の食事にのみ毒が入れられる事件や、真夜中にきしむ井戸、沼から聞こえる読経の声、人魂・・・さまざまな怪異が続出します。
子供たちは謎を解くべく奮闘します。
遺産相続をめぐるどろどろとした確執と犯人探しの面白さ、座敷わらしという異形のものが現れるファンタジーの面と、さまざまな要素がよりあわされた作品。
犯人がふたりいた・・・というからくりが面白かったです。
三郎おにいさんのキャラクタがよい。

「甘美なる来世へ」T・R・ピアソン(柴田元幸訳)みすず書房

2006-03-03 | 柴田元幸
「甘美なる来世へ」T・R・ピアソン(柴田元幸訳)みすず書房を読んだのだが、
これはアメリカ南部の架空の田舎町、ニーリーで巻き起こる、脱線につぐ脱線の物語なのであり、ピアソンの文体を生かした翻訳がとても面白く、凌駕(りょうが)や折檻(せっかん)など普段使わないような難しい文語を多用しながら、日々のこまこまとした出来事をつづるのが面白く、楽しみにしていた新聞をぬらしてしまった話、マッカーサーに似ている女性に惚れる男性、つりざおの太くもなく細くもないちょうど中央の相手をこらしめるのにうってつけの部分をつかった話、くすくすと笑いながら読み進めるうちに、いつのまにか青年ベントン・リンチの話がどんどんねじまがった方向に進んでいき、ぼーっとして馬面の、なんのとりえもないようなリンチが銃を手に入れ強盗を働き、人を殺し、いつのまにかぞっとする話になっているのであるが、彼が警官に撃ち殺され、ベントンをそそのかしていた妻は被害者を装い、最後にはなんだかせつないものが残るのであるが、それにしてもこのずらずらずらという文体はなんだか読んでいるうちにクセになってしまい、心地よいようなくどいような麻薬のような効果があるのだった。
あー読むのは面白いのに、書くのは疲れた。。。
そんな冗長な文章を面白く読ませるピアソン(&翻訳家の柴田さん)はすごい!