Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「にぎやかな湾に背負われた船」小野正嗣著(朝日新聞社)

2006-02-08 | 柴田元幸
「にぎやかな湾に背負われた船」小野正嗣著(朝日新聞社)を読みました。
舞台はとある海辺の集落「浦」。
語り手は浦に赴任してきた警察官の娘、美希。
美希と交際している教師、昔語りにふける四人組の「じん肺」老人たち、泥酔するミツグアザムイ、不思議な縁で結ばれているタケオとハツエ。義理の兄弟同士で仲たがいするはち兄とよし兄・・・たくさんの人々がおりなす土着の匂いを感じる物語です。三島由紀夫賞を受賞。文庫版では大学の恩師・柴田元幸さんが解説を書いているそうです。(未読。)
あとがきで著者が語っている「土地の力」を感じた一冊。
その土地と、その土地を守る人々、そして戦争をからめたそれらの人々の血に流れる長い時間。
一応ひとつのストーリーの時間軸はあるのですが、メインはいろいろな挿話が並列で並んでおり、暮らしている人々の生活や歴史がふくらみをもって感じられること。
語り手であり、新参者である駐在所の家族が浦になじみ、つつまれていると感じられるラストシーンがいいです。

「容疑者Xの献身」東野圭吾著(文藝春秋)

2006-02-08 | 児童書・ヤングアダルト
「容疑者Xの献身」東野圭吾著(文藝春秋)を読みました。
直木賞を受賞した作品。ガリレオ、湯川助教授のシリーズです。
天才数学者でありながら、さえない高校教師に甘んじる石神。
彼は愛した女を守るために完全犯罪を目論みます。
湯川助教授は果たして真実に迫れるか?という純愛をからめたミステリーです。
湯川助教授のシリーズは初めて読んだのですが、理系の知識があったらところどころの会話はもっとふくらみを感じて面白いのかも、と思いました。
結局どうやって犯罪を隠蔽したのかな・・・と思いながら読みすすめるうちに「おぉ!こういうことだったのか」という驚きがありました。
大きなクライマックスを一番最後にもってくる筋立ても見事。
さすが東野圭吾さんですね~。

「僕の恋、僕の傘」柴田元幸編訳(角川書店)

2006-02-08 | 柴田元幸
「僕の恋、僕の傘」柴田元幸編訳(角川書店)を読みました。
雑誌「月刊カドカワ」に掲載された短篇8本をまとめたものです。
「比較的まとも」な青春・恋愛の作品を選んだとありますが、そこは柴田さん。
ひとくせもふたくせもある風変わりな作品が並びます。
私が面白いと思ったのはプリチェットの「床屋の話」。
親友が自分の彼女を好きになるとか、自殺未遂するとか、かなりヘビーな話をさらりと語る床屋。そして最後のせつないようなほのあたたかいような締めくくりが印象的でした。