Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「停電の夜に」ジュンパ・ラヒリ著(小川高義訳)新潮社

2006-02-23 | 外国の作家
「停電の夜に」ジュンパ・ラヒリ著(小川高義訳)新潮クレスト・ブックスを読みました。
デビュー作にしてピュリツァー賞の受賞をはじめ、さまざまな賞を受賞したインド系作家・ラヒリの短編集です。見開きを見ると、その姿も美しくてびっくり。まさに才色兼備。2005年の新潮文庫夏の百冊にも選ばれていました。
どの作品も文句なしのできばえで、気に入った作品をひとつ選ぶのが難しい・・・。
表題作の「停電の夜に」は、停電の時間を打ち明け話に費やす夫婦。夫婦の絆が深まったか、と思いきや最後にぐさっと大きな一刺しが待っている展開が巧み。
「ピルザダさんが食事に来たころ」は、だんだんと人の心の痛みを理解していくようになる少女の心の変化がよくわかりました。
「病気の通訳」では、主人公カパーシの家は夫婦仲があまりよくなく、観光案内で出会ったダス夫人に心魅かれます。しかしダス婦人にも人にはいえない秘密があり、彼はそれをうちあけられることになります。空想(妄想)がしぼんでいく様が感じられる作品。
短編集最後の作品「3度目で最後の大陸」も印象的な作品でした。
下宿先の100歳を超える老婆。顔もよくわからないまま結婚した妻。ぎくしゃくした関係が「すごいです!」の言葉でほかっとあったかくなる瞬間。
全体にほろ苦い結末が多い短編集の中、この最後の作品はしみじみと、とても読後感のよい作品でした。
ラヒリはこの後に長編小説も書いているそうです。そちらもぜひ読んでみたいです。