森岡 周のブログ

脳の講座や講演スケジュールなど・・・

ロマンティック・リハビリテーション

2008年06月05日 23時44分16秒 | 過去ログ
大西成明写真集
ロマンティック・リハビリテーション

ISBN 978-4-270-00363-3
A4変形判 184頁 6月下旬刊行予定
予価 2,940円(税込)


フォトドキュメント『病院の時代』(99年週間現代ドキュメント写真大賞,講談社出版文化賞受賞)を撮った写真家が,リハビリテーションの20の現場を凝視する
「夢みる力」のフォトドキュメント!
今という時代の希望の姿を鮮やかに描き出す20の物語


〔収録内容〕
音楽が生かしてくれた命(館野泉さん)
壊れた脳とともに生きる(山田規畝子さん)
わが心,慰めかねつ(多田富雄さん)
この子たちの知性が私の腕の中に降りてくる(人見眞理さんと子どもたち)
わたしのからだをさがして(小川奈々さんと中里瑠美子さん)
詩が「もっと生きろ」とつぶやいた(須藤洋平さん)
遊びをせんとや生まれけむ(金沢大学附属病院精神科作業療法室)
身体は世界とのきずな(孟仁会・摂南総合病院)
医療への愛(大道会・森之宮病院)
明日はきっと本当の路上に(神奈川リハビリテーション病院の運転シミュレータ)
氷上の格闘技に燃える(東京アイスバーンズ)
道具に命を吹き込む(中村ブレイス)
変えられるものは,変えていく勇気を(沖繩ダルク・リハビリテーションセンター)
語りあう,伝えあう(平澤哲哉さん)
タッチしてごらん,ハグしてごらん(藤井輝明さん)
ロマンティック・サイエンスからの出発(森岡 周さん)
「病院」に五感の世界を取り戻したい(内藤久幹さん)
移りゆく命を舞いながら(田中利男さん,佐藤忠吉さん,石橋典子さん,桑原博子さん)
馬を命の使者として(NPO法人インフォメーション・センター)
再生への巡礼(玉川温泉の岩盤浴)




知的好奇心

2008年06月05日 22時50分03秒 | 過去ログ
昨日は「発達脳科学」の授業にて、
ホムンクルス、そして錯覚問題を取り上げた。
教育学部とデザイン学科の学生のため、
難解さは否めなかったが、
それについて興味を持ってもらった学生もいたようだ。

今後取り上げたい科学としては、
みなさんから9つぐらい課題をいただいた。
調べたいものだ、「一目ぼれの脳」も。

岐阜から河村、吉田の両氏がゼミでの発表のために大学に来た。
19時40分より大学院の授業(ゼミ)。
まずは、河村君が、運動機能回復を取り上げ、
可塑性の視点、そして、半球間抑制の視点から述べた。

生理研ではある問題が取りあげられてた。

本研究室でも半球間抑制が、機能回復に影響を与えるという根拠を
臨床データでリサーチを始めたので、ぜひともここ数年で、
何でもかんでも運動負荷し脳を活性化させるのに苦言を呈したいものだ。
同側の領域の活性化は本当にいいのかの議論を、
脳の活動だけでなく、身体運動からも捉えていきたいものだ。
非麻痺側強化一辺倒の時代は最近の神経科学研究を読めば終わったのかな。
ブレークスルー的示唆に富む研究に期待する。

「刺激」の強度は、「情報」の難易にも影響する。
「情報化」できなければ、それは「身体知覚」できなく、
反射的に運動あるいは周期的に運動を出現させる身体システムに切り替わる可能性がある。
それでは、多様性は生まれない。

ついで、吉田君はUSNの研究の経緯を壮大なプレゼンで示した。
Brainの記述から始まり、
USNの解釈がapraxiaに比べ、右へ左へといっている現状が良く分かった。
とにかく、まずは、レビューを仕上げ、
何がわかっていて、何がわかっていないかを浮き彫りにしないといけない。
USNは検査バッテリー至上主義的であり、
それでは、セラピストの意識は
周辺的症状ばかりに目が向けられてしまう。



その後、熊谷さんによって、mental rotationの2007年の論文が取り上げられた。
色んな研究が出ているが、
やはり、rapid なレポートは方法論に幾多の問題が残る。
Mental rotationを何の感覚様相に基づいて制御しているかで、
働く場所は大きく変わるであろう。
また、今はその判断をキータッチなどで行っているが、
その判断を下したのがmental rotationである保障はなく、
空間的な情報処理でなく、形態的なゲシュタルト的判断で正否を判断するのであれば、
Rotationさせずとも回答可能である。

22時までに終わり、
少し猶予をいただいて、帰宅した。

今日は、会議以外は、研究時間なので、
一気に書き進めた。

間に2年生の発達系の科目の質問が10名ほどあって研究室に来たが、
みんな「用語」に体当たりしてよい、

今は「自己組織化」そして「生態学的視点」を久しぶりに読み漁っているが、
脳科学を勉強する前は、もっぱら生態学的視点の大きく影響を受けていたので、
行為・知覚と環境のダイナミクスの知識はあったと思ったが、
解釈がだいぶぶれていたことが判明した。
脳科学を経由すると、色んな考えが沸き立つ。
Kelsoらのシナジェティクスによる周期運動の考え方も、
知覚できないと周期運動になってしまう視点がよくわかり、
それは「情報化」に由来するのではないかと考えた。
速度が上がれば、「情報化」できない。
ただし、それをやめることは「自由意志」からできる。
中枢神経系がまったく運動に関与しないわけでない。
しかし、「知覚できない」という現象は大変面白い。

久しぶりにKelsoの原著やBernsteinの原著、Thelenの原著を出してきた。

書き始める前は「情動系」が喚起され、
勉強というものは本当に億劫なのだが、
それをあるラインから超えると、
「知的好奇心」がべき関数的に増幅する。

発達・学習が非線形システムであることが、
自らにおいてもよくわかる。

自らが自らの手で「最近接領域」に向かわせる、
まさに「自己組織化」の醍醐味はここにある。

芸術家・舞踏家・ダンサー(たとえば吉田都や坂東玉三郎)の身体とは何か?
それを知りたい。
バレエとはスポーツでなく芸術である。
それは精神と肉体の両者の一致が求められ、
過酷な身体表現でもある。
スポーツとは大いに違うことを、
言語表出から感じることが多い。
近所の先生も「意識」「身体」「イメージ」を大事にする。

脳から離れるわけでないが、
それが一人歩きし始めたので、

もう一度、勉強を開始した原点、
脳-身体‐環境のダイナミクスに向かおうと思う。

それを乗り越えることが、
脳賦活一辺倒の視点を変えられるかもしれない。
これが、何でもかんでも生態学的視点(環境視点)を重視する者とも違うような感じがしてきた。

明日は岡山で講義、明後日福岡入りする。

しかし、いくつかのブログ(1) 、 (2)で工作されているようだ(すみません、リンクしてしまって、消さないでね・・・)。

うれしい限りです。
本当にありがとうございます。
もちろん、作っていただいたすべての人に。


うちの学生はあまりしていないようだが・・・

そのプロセスに脳と身体の秘密が隠されているとは知らずに・・・