日本の来し方行く末についての話で、ずっと方向性を誤ってきて戦前は軍事に、戦後は経済大国をめざして今日にいたり閉塞感に陥っている。今求められるべきは、文化や環境立国を目指して舵をきることではなかろうか。
と語っていた方がいました。
然るべき方々も、大局的なことは語りません。4月16日の話に引用させていただいた「便利さを放棄しても、安全と人間性を優先」という松下幸之助さんの言葉と、今の財界を代表する方々の意見ではタイキョクです。
山中教授の受賞で機運が盛り上がっている時期だからということを割り引いても、冒頭のようであったらと思います。
誰も、孫くらいの世代が祖父母の蓄えた金をかすめ取るような世の中が、良いとは思いますまい。
2000年、あるいは少し前だったかもしれません。谷さんのところへ行くと、
「さっきまで○○毛織の営業さんが来ていてさぁ、最近どこも安い生地を使ってるじゃない。
だから君のところも大きい取引先から、『質を落としてもいいから、もう少し安いものをやってくれない』って言われたらどうするって、ちょっと意地悪いこと聞いてみたんだよ。
そうしたら、『我慢してお断りしましす』って言うんだよね。エラいよね。営業さんがそう言うんだから」
そこの会社は比較的トラディショナルな色柄に定評のある会社で、最近一般的になりつつある尾州といわれる地域にありました。
この辺りは、物作り日本の一翼を担う地域として新しい活力を感じますが、数十年の間にはかなり景気の波をかぶった業種です。
ここ数十年、オーストラリアやニュージーランド産の極細繊維の生産競争で、カシミヤを凌ぐほどの細さ(今年度のコンテスト優勝は10.5ミクロン)にまでなった繊維の手触り・贅沢感は、行きつくところまで行った感があります。
それはそれとして輸入生地の他に、谷さんは英国の研究機関が自国産にこだわって改良をかさねた、質感のある羊毛も積極的に使いました。薄い生地にしても、それは適度な持ち重りと滑らかさを合わせ持つ風合を具えていました。
もちろんそれは尾州等のメーカーの力を借りて、オリジナルの生地になったものです。
一方、英国の毛織物産地といえば、
エディンバラ、ヴィルトシャー、ペターヘッド、ハダーズフィールド、ブラッドフォード、ランホルン、リーズ、ガラシール、ハウィック、ビングレー、エリス、デューズバリー、ピーブルス、ケイリー、レスター、セルカーク、グロスター、ストーノウェイ、ミラーデン、バートレイ
等がありました。
現在でも真っ先に名前の上がるハダーズフィールドを例にとって見てみますと、1960年代前半の資料では、
Arther E. Evans,Baumont, B.H.Moxon & Sons, Bower Roebuck
B.Vickerman & Son, C.&J. Hirst & Sons, Crowther & Vickerman, D.& R. England
G.H. Rycroft, George Mallinson & Sons, Gledhill Brothers, Graham & Pott
Jarsey Craft, J. Haywood & Sons, John Brooke, John Crowther & Son
John Taylor, John Edward Crowther, Jonas Kenyon & Sons, Joseph Sykes
Josiah Ellis & Sons, Josiah France, Kaye & Stewart, Learoyd Brothers
Liddel & Brierly, Long Wood, Middlemost Brothers, Moorhouse & Brook
Moorside Worsted, O. F. Maud, Ralf Wood, Richard James
Rowland Mitchell, Schofield & Smith, Shaw Brothers, Taylor & Lodge
Walter Sykes, Taylor & Littlewood, Sykes & Hebbelethwaite, Thornto Jones Worsted
William Oddey, William Tomson
というようなメーカーがあったそうです。
今も聞く名前もありますが、統合や閉鎖等、いつ姿を消してしまったのか聞いたことがないメーカーもあります。
マーティン・サンズも上がってないくらいで、これで全てではないと言いますから国中にいったい何社あったのか、またマーチャントを加えると産業としての規模は現在と比ぶべくもありません。
それでもやはり現存する各社のバンチをシーズン毎に眺めるだけで、色柄・発色・素材感など伝統の厚みを感じないわけにいきません。
一産業というにとどまらず、文化だからでしょう。
Bower Roebuckの小冊子から。 のどかな環境を伺わせます。
と語っていた方がいました。
然るべき方々も、大局的なことは語りません。4月16日の話に引用させていただいた「便利さを放棄しても、安全と人間性を優先」という松下幸之助さんの言葉と、今の財界を代表する方々の意見ではタイキョクです。
山中教授の受賞で機運が盛り上がっている時期だからということを割り引いても、冒頭のようであったらと思います。
誰も、孫くらいの世代が祖父母の蓄えた金をかすめ取るような世の中が、良いとは思いますまい。
2000年、あるいは少し前だったかもしれません。谷さんのところへ行くと、
「さっきまで○○毛織の営業さんが来ていてさぁ、最近どこも安い生地を使ってるじゃない。
だから君のところも大きい取引先から、『質を落としてもいいから、もう少し安いものをやってくれない』って言われたらどうするって、ちょっと意地悪いこと聞いてみたんだよ。
そうしたら、『我慢してお断りしましす』って言うんだよね。エラいよね。営業さんがそう言うんだから」
そこの会社は比較的トラディショナルな色柄に定評のある会社で、最近一般的になりつつある尾州といわれる地域にありました。
この辺りは、物作り日本の一翼を担う地域として新しい活力を感じますが、数十年の間にはかなり景気の波をかぶった業種です。
ここ数十年、オーストラリアやニュージーランド産の極細繊維の生産競争で、カシミヤを凌ぐほどの細さ(今年度のコンテスト優勝は10.5ミクロン)にまでなった繊維の手触り・贅沢感は、行きつくところまで行った感があります。
それはそれとして輸入生地の他に、谷さんは英国の研究機関が自国産にこだわって改良をかさねた、質感のある羊毛も積極的に使いました。薄い生地にしても、それは適度な持ち重りと滑らかさを合わせ持つ風合を具えていました。
もちろんそれは尾州等のメーカーの力を借りて、オリジナルの生地になったものです。
一方、英国の毛織物産地といえば、
エディンバラ、ヴィルトシャー、ペターヘッド、ハダーズフィールド、ブラッドフォード、ランホルン、リーズ、ガラシール、ハウィック、ビングレー、エリス、デューズバリー、ピーブルス、ケイリー、レスター、セルカーク、グロスター、ストーノウェイ、ミラーデン、バートレイ
等がありました。
現在でも真っ先に名前の上がるハダーズフィールドを例にとって見てみますと、1960年代前半の資料では、
Arther E. Evans,Baumont, B.H.Moxon & Sons, Bower Roebuck
B.Vickerman & Son, C.&J. Hirst & Sons, Crowther & Vickerman, D.& R. England
G.H. Rycroft, George Mallinson & Sons, Gledhill Brothers, Graham & Pott
Jarsey Craft, J. Haywood & Sons, John Brooke, John Crowther & Son
John Taylor, John Edward Crowther, Jonas Kenyon & Sons, Joseph Sykes
Josiah Ellis & Sons, Josiah France, Kaye & Stewart, Learoyd Brothers
Liddel & Brierly, Long Wood, Middlemost Brothers, Moorhouse & Brook
Moorside Worsted, O. F. Maud, Ralf Wood, Richard James
Rowland Mitchell, Schofield & Smith, Shaw Brothers, Taylor & Lodge
Walter Sykes, Taylor & Littlewood, Sykes & Hebbelethwaite, Thornto Jones Worsted
William Oddey, William Tomson
というようなメーカーがあったそうです。
今も聞く名前もありますが、統合や閉鎖等、いつ姿を消してしまったのか聞いたことがないメーカーもあります。
マーティン・サンズも上がってないくらいで、これで全てではないと言いますから国中にいったい何社あったのか、またマーチャントを加えると産業としての規模は現在と比ぶべくもありません。
それでもやはり現存する各社のバンチをシーズン毎に眺めるだけで、色柄・発色・素材感など伝統の厚みを感じないわけにいきません。
一産業というにとどまらず、文化だからでしょう。
Bower Roebuckの小冊子から。 のどかな環境を伺わせます。