Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

ナポリ仕立て

2010-10-09 | Others
 ブラウン運動三日目は、茶に紺糸のジャカード・タイと色遣いの似たポケット・スクェアの取り合わせ。後者はクリーム色で抜いてあり、一応変化がついています。



このスーツはナポリの仕立て屋さんの手によるものです。
ホテルに常備の、街のブランド・ショップを中心とする店舗を紹介した一冊の中に偶然見つけて訪ねました。'90年代に行った初回は安心してもらう意味もあり、コンシェルジュに電話してもらったと思います。
挨拶や服に関しての遣り取りではそれほど破綻もなかったと思いますが、まだほとんど喋れなかったので、それ以外では魔法の解けた人みたいに無力化してしまいました。

採寸に入る前に私が着ていたミラノの仕立て屋のエチケットを見つけると、瞳に灯がともったように、全く傾向が違うがいいのかと尋ねてきます。
ホテルの冊子で見た印象をたよりに、相手の意図しているであろうスタイルを少ない語彙で表現するとそのとおりとのことで、後はスムーズに運びました。
着ていたようなリヴァース・プリーツを指定すると私もそうだと自分のを見せてくれたり、既製服では解消しづらい気になる部分の解決策を相談すると、出来上がりにきちんと反映されていました。
唯一、プリーツの裏に左右ともポケットを作るがいいかとの問いに、必要ないと伝えると便利だからと食い下がられ、OKしたのが一番食い違った所だったというのも可笑しかったです。

しかし服の話もさることながら、最も面白かったのは旧世界の優雅さに憧憬をいだく職人が家内に接する態度でした。日本ではついぞ目にする事がない女性に対する丁重な接し方が、ナポリ仕立てにまつわる一番の思い出かも知れません。

ミラノやパリのような洗練された都会が生み出すインターナショナルなスタイルとは比べるべくもありませんが、ドーナツ・ショップのCMみたいに憶えてなければ新商品と同じというのと似た観点から、新鮮に見る向きがあっても不思議ありません。

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