Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

海外通信

2022-04-13 |  その他
今回の上の画像はご存じのように「イースター・パレード」からで、踊り子だったジュディ・ガーランドをスカウトして初めてアステアがレッスンをつけるシーンです。

イースターには例年それくらいしか縁がありませんでしたが、今年はウィーンの仕立屋さんがメールをくれた最後を"Happy Easter"と結んでいたので、映画のオープニング曲を聴くときの感慨も違うものがありました。



サッカー日本代表チームがオーストラリアに勝利して帰国した時、3ピーススーツのヴェストの裾からベルトのバックルが思い切りのぞいているのが気になりましたが、洋服屋じゃないし、何と言っても7大会連続出場という偉業を成し遂げたのですからそれ以上何を望むんだという気分でした。

と思っていた矢先、ロンドンの仕立屋さんが憤ってました。
いわゆるセレブという人たちの画像を例に、やはり3ピーススーツのウエスト部分からベルトやバックルがのぞいていたり、ヴェストが身体からブカブカ浮いていたりするのを列挙して、「何で誰も言ってあげないんだ」とちょっと語気荒い感じで訴えてます。

憤ると言っても仕立屋さんのこと。
誇大妄想と被害妄想に取り憑かれた人間のような理不尽はありませんから、ごく真っ当なご意見です。

続けて、「ヴェスト付けた時のスーツにベルトという選択肢はないんですよ、股上をそれ用に案配して吊って履けば、きれいなラインがでることが昔から知られてるのに」

腰が引けて最近では言うのを躊躇うようなことも諦めずに筋を通すところは、さすがロンドンの仕立屋さん。

もちろん伝統に則して理に適った提案で、こんなウルサガタのオジ様にも叱られないよう気をつけてます。


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コヤジ

2022-02-21 |  その他
立春を過ぎて陽射しに力強さが加わりつつありますが、風は冷たい日が続いて今年は寒いです。
冬季オリンピックも終わりましたが、フィギュアスケートでショートの演技を終えたワリエワ選手が顔を覆った時、30年以上前にきいた「胸が痛い」という歌を突然思い出しました。
その後のフリーも胸が痛いのを通り越して「角兵衛獅子」とかを連想してやりきれない思いです。


(駅のポスター、横目で見ながら寒いなーと思ってます)

「スキークロス」を見ていると、海外選手の多くはウエスト88~96cmくらいのちよっと太めのオヤジ...に見えて実際は30代半ばで、最近は死語かというコヤジ的な体型になごみました。
そのおじさんが結構なスピードで滑り抜け、ゴールでは写真判定に備えて片手を必死に伸ばして通過するのも微笑ましいです。

その晩は女子カーリングのスイス戦の快勝を観ながら、選手も大変だけど最後まで観るのもなかなか体力いるなと痛感しました。
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ヒント

2022-01-21 |  その他
イギリスのブレグジットやトランプ大統領の就任など大方の人がまさかと思っていたことが現実になったり、コロナのパンデミックなど、当たり前と思っていた日常が簡単に覆るのをここ数年目の当たりにしてきた、と始まるカズオ・イシグロさんのインタビューが少し前にありました。



この当たり前のようにマスクもなく晴れやかな笑顔で公演に旅立つデューク・エリントン楽団の画像を見ていたら、歴史の教科書で見てきたような感染症の流行や大震災が自分達の生きている時代に起こっている現実と、そのインタビューを思い出しました。

🎩          👞          👔          🧤

「その人がどんな服を持っていてどう着るのか、会った時のカッコを見るとどのくらい仲良くなれるか想像してしまう」
と言ったイタリア人がいました。
これなんかは、ヘンなもの買った時点で失敗が始まるのをヒシヒシと感じます。

また、
「一着の服や一つのアクセサリー、それ自体はエレガンスを物語りはしない。
 エレガンスはそのコンビネーションにあるのだから」

既出だと思いますが昔そう語った服飾評論家もいたそうです。
それより昔から、きっと何人もの人が同じようなことを語ってきたでしょう。

「コーディネイト」なんて当たり前で誰でも思いつきそうな着こなしのヒントを端的に言い表していて含蓄ある言葉ですが、その割にあまり顧みられていない気がします。
これもまた、当たり前が当たり前でなくなるという現象の一つ...と言われたらちょっと寂しいですね。
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今年の感じ

2021-12-22 |  その他
このブログを始めた頃は昔仕事でご一緒した方々や知り合いなど同業の人がたくさんいましたから、飲んで喋っていたことの延長のような内容でしたが、いつ頃からかどんな方にご覧いただいてるかは分からないまま同じようなことを書いてます。

たまに同じような仕事の方からコンタクトを頂いてお話を伺うと、多少お役に立っているのかと思えるようなことが今年もありました。
それでどんな方がご覧になっているか初めて知るのですが、ちょっと新鮮な気持ちがします。

そんな中、振り返ってみると今年を集約してくれるのはやはりスポーツでしょう。
後半のオリンピックや好試合の連続だった日本シリーズもあって昔のことのように思えますが、松山選手のマスターズ制覇もありました。

しかし何と言っても、大谷選手の活躍ほどワクワクさせてくれたものはありません。
良いプレーはチームメイトや評論家からも印象的な言葉を引き出し、
「彼のプレーは、子供の頃打って投げて楽しかった野球を思い出させてくれた」、
「野球を見に行く楽しさを思い出させてくれた」と言うファンもいました。



翻って仕事関連ではどうだろうと思うと、海外との行き来が制限されているのもありますが、すでに何年も前から本物の匂いのするものを見つけるのが非常に難しくなってきました。
SNSなどでイメージがとても簡単に拡散され、海外の仕立屋さんでこの人はセンス良さそうかなと思っていた人が、10年保たなそうな少しはやりの型を作って着ているのを見てアラアラなんてこともあります。

今まで見てきたよりそれらしい匂いのするものや脳裡に焼きつけたものを自分なりに反映させようとしていますが、それを判断してくださるのは、やはり何かしらそういう匂いを求めていたり海外でたくさんそういう品を見た経験があったりして、作ったものを着てくださった方です。
よく使う三船敏郎さんの「うーん、寝てみたい!」と言うCMがありましたが、見果てぬイメージを求めて散財されてこられた方々から「うーん、匂わない」と言われないよう、放っておけばおそらく薄れるイメージを補いつつ何か加えて維持しなければなりません。

毎年発表される「今年の漢字」もオリンピックを反映して「金」でした。
正面から受け止めるとコロナ関連になってしまうところを回避していてホッとする選択です。


《オマケ:オリンピックでメダル獲得したカエル好きという選手がいました。
以前も使ったことがある旅先で見たカエル》




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simplicity & balance

2021-12-06 |  その他
ふとした瞬間鏡に映って、普段見ない角度から着ているものが見えることが稀にあります。
その日珍しくそんなことがあって、単に補正がうまくいった上にプラスαで微妙な形が出たかななんて思いましたが、ひいき目の思い込みかも知れませんし、他人に伝わりにくいこういう話は聴かされた方もリアクションに困りますから話題にならないですが...


その日の午後、久しぶりに白井さんとお話していたら、
「そこのところ綺麗だね、その服どこの?」
「自分のとこのですよ」
「いい色だね」

この齢になっても未だに褒めて頂けるとは、なんて嬉しいことでしょう。
おそらく今後も誰も気づかない部分をご覧になっていることに、あらためて「好き」に終わりはないなと思いました。
毎週のようにそんな話をしていた頃のことを思い出します。
また、そういう眼に耐えうるレベルを実現したくて始めたことを思い出しました。



たぶん白井さんの影響でしょう、小さな定例会などしていると褒め言葉がスムーズに出てくるような気がします。
若い頃服に多少興味があっても、年齢とともに右肩上がりで服の趣味や着こなしが洗練されてくることがないのは残念ながら現実で、放っておいてそうなったとすればかなりの激レアさんです。

そういう観点から、皆さん興味を維持され着こなしが理に適ってますからケチをつける隙などなくて自然に出てくるのですが、なぜかその時だけM気をおびたように何か他に言うことがあるだろうと詰め寄られ、もうSだかMだか。
たしかに正月の蒲鉾も三ヶ日くらいしか食べないので、褒め言葉が板につくにはまだ年季が必要かもしれません。
そうこうする内に、年末が近づいてました。
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再読

2021-11-27 |  その他
たまに読み返すと面白かったり、新しい発見がある場合があります。
書いてあることはそのままですから、その間に読む方が変わったということですね。

ちょっと用があって、久しぶりにアラン・フラッサーの"Making the man"(邦題:男の服装学)を開きました。
後半は1980年代前半にも存在していた店の紹介で、その一部は引用させていただいたこともあります。
何度か名前を挙げたパリの"A. Cristiani"という仕立屋についての内容を新鮮な気分で読みました。

「おそらくパリで一番気くばりの行き届いた仕立屋だろう。当然ながら値は張る。
1940年に創設、現在のオーナーは二代目である。A.クリスチャーニは値段にふさわしくエレガントな店である。
帝王の部屋といってもいいほど豪奢な造りの店内は、壁はマホガニーとゴールド、家具も敷物も骨董的価値のあるものを使っている。
有名人の贔屓客の写真がさりげなく壁にかけてある。
ジーン・ケリー、ゲーリー・クーパー、サヴォイのヴィットリオ・エマヌエーレ、モーリス・シュバリエ、ルイ・ジュールダン、メル・ファーラー、マルチェロ・マストロヤンニなどなど......。



この店もすでに閉店していますが、これを読むと中を見てみたかったですね。
昔パリの仕立屋学校で学んだ方が、修了にあたってそこの校長からこの仕立屋を紹介され行ったことがあると聞いたのは、後継者がいないとのことで閉店したあとです。
辻静雄さんのエッセイにSulkaでシャツを仕立てる話が出てくることから、ことによるとタキシード等こちらを利用した可能性もありますが想像の域を出ません。
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11月

2021-11-23 |  その他
今年も2ヶ月を切ったせいでしょうか、今月立て続けに5年ぶりとか7年ぶりの友達からメールをもらいました。
高校で同じ学年だったり学生の時アルバイト先の新入社員だったりしたので、皆んな十代からの知り合いですからかなり長いです。

おそらく子育ても一段落したくらいだと思いますが、人伝に聞いたので遊びに行くと言います。
思い返すと昔から筆まめだったりみんな律儀だったり几帳面なところがあって、聞いたからには片付けずにはおかないと思ってくれたのかもしれません。
いずれにしても嬉しい話です。



数年振りといえば、久しぶりに定期検診に行きました。
解除前は連日TVで医療体制の逼迫が報じられていたので、そんな中ノンキな顔して行くのもどうかなと、なかなか難しいタイミングでしたがスムーズでした。

当日よほどヒマだったのか、各コーナーのおばちゃんがけっこう構ってくれて話が面白いんですね。
これならたまに来てもいいかなと思うくらいというのはウソですが、次々巡るアトラクションのような錯覚を覚えます。

胸部X線はおばちゃんじゃなかったですが、「じゃ、上着とセーターとシャツまで脱いで、肌着だけになって下さい」と言い終えるとすぐ出て行ってしまったので、「肌着は着てません」というタイミングを逸しました。
結局、上半身裸のおじさんがスタンバイして出て来たので、「そこまで脱げって言ってないでしょ、ちゃんと人の話を聞けよ」と思われた可能性もあります。
「ドレスシャツの下には何も着ない」とそこで必要ない主張などしたら、警備員を呼ばれたかもしれません。

会計まですべてシステマチックでスムーズに運び外に出ると、よく晴れた空を見上げて、当たり前ですがなるべくこういう所のお世話にならないように日頃から気をつけたいと思いました。
でも私と同じような考えで遠慮して検診が遅れた為に、問題を見逃すケースが増えているそうですからくれぐれもご注意ください。





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12年

2021-10-20 |  その他
It's so nice to see
All the folks you love together
Sittin' and talkin' 'bout
All the things that's been goin' down
It's been a long, long time
Since we had a chance to get together
Nobody knows the next time we see each other
Maybe years and years from now

と始まるオージェイズ"Family reunion"をこのところ仕事終わりに流していて、雲の絨毯の上を行くような心地よい音にエディ・リヴァートのエモーショナルな節回しが絡んで、この一年半人と会うことが少なかったせいか歌詞が身にしみます。

そうこうするうち、このブログを始めて今月で12年...だそうです。
長いような、長くないような。
12年と言えば、生まれた子供が小6に、小学校に入った子が高3という年月ですから子供にしたらすごく長いかも知れませんが、オジサンにはどうでしょう...
そう思い返すと、始めた頃は思いもしなかったことですが、懇意にしていた方が二人も亡くなってしまいました。
共にこの仕事では先輩で、それぞれ服がとても好きな方でした。



70代で亡くなったAさんは、60年代からの日本の男性の服に影響を与えた会社で実質的に製品を作ってきた人で、その後アメリカの仕立服からスタートしたブランドを日本に根付かせトラディショナルなスタイルを普及させた立役者のお一人でした。
毎年のようにアメリカへ出張していた頃、現地で仕立て職人の長をしていた人(有名なブルックリンのマーティン・グリーンフィールドの本のタイトルと同じように、ホロコーストから生還したという人でした)が、既製服を買っても身体に合わせる為ならバラすのも厭わない職人気質をよく語ってくれたものです。

90年代に入って仕立て服に近い作りのイタリアの既製服を知ると、その着心地とクラシックなフォルムが、アメリカンとかブリティッシュとか日本的にジャンル分けしなくても高いレベルの服がよく似ていることを知り、より質の高い製品作りにイメージを得て試作を繰り返し、大きな会社のメリットで予想よりずっと早く製品化させ、その直後に引退されました。

その先の方向性については現役中も引退されてからもお話したことはありませんが、気がつくと私が今やっていることは、その方が最終的にやりたかった形あるいは延長上にあるんじゃないかと最近感じます。

もう一人のBさんはまだ50代で一頃毎日のように顔を合わせていたので、今も最期の晩のことが思い出されます。
本当に良い人でしたが最後の一年はさらに仏さんのようで、それ以前のように戯れ言を言い合ったりしたのか思い出せません。

お二人が元気な頃は独立なんて話はしたことはなかったと思います。
先日、40年近く服への興味を持続され色々着てこられたという方が、出来上がった服の着心地や生地の選択に驚いたり喜んでくださたるのに接し、まだそういう余地があることにこちらの方が喜ばせて頂きました。

おそらく服が好きだったお二人も見たことがなかったものを試してもらえていたら、どんなコメントが返って来たかな(イタコさんなら何て言うだろう、やはり「ワシじゃ」から入るのかな)なんて思いながら服を作っているのが、この12年で一番変わったことでしょうか。
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デップ

2021-10-08 |  その他
気がつけば40℃以上の風呂や真綿の布団が心地良い季節になって、今年も3/4が過ぎてしまいました。
いつもと違う意味で、あっと言う間という気がします。
4月以降続いていた宣言等が解除され、ようやくと言うかやれやれというか

と9月に書いておいたら10月に入って妙な暑さ、先月一度散った金木犀がまた咲いています。
人も花も天候に翻弄されっぱなしです。

今年最初くらいに映画「ミナマタ」が少し取り上げられていましたがすぐ聞かなくなったので、「不都合な真実」に触れない流れか、あるいはJ. デップのおかげでヴィンテージ・ハットの価格が高騰したのを恨むものの仕業かというのは思い過ごしで、公開が近づいてまた話題になっています。



小学6年の夏休みの課題は「公害問題」でした。
渋いタイトルで、「真夏の大冒険」どころじゃありません。
あまりに重い課題に真面目に取り組んだために、その後の暮らしに大きく影響を与えたくらいです。

少し前の新聞が連日コロナ一色だったように、その頃の一面は「月に魚◯匹」みたいな見出しがよくありました。
次から次に有害物質が検出され、魚を食べるにしても月に何匹くらいまでですよという意味で、当時は一番ホットな話題だったから出題にはたいした意図はなかったと思います。

ただ受けた小学生は、図書館はもちろん近所に出来た公害問題を扱う施設に申し込んで話を聴きに行ったり、子供なりに課題に対して完全燃焼した記憶があります。
裁判などの結果は進行形の話だったので数年後まで待たなくてはなりませんでした

通底しているのは「前例がないから自分達が悪いとは限らないという」という論旨で、時間をかければかけるほど環境汚染は進んでいたでしょう。
時代劇では問題の組織が糾弾する人々を排除しようとしてケガを負わせたりする訳ですが、本当に組織の為を思うなら殴るべきは糾弾してくる人々ではなくて、糾弾されるような問題をさっさと調査し白か黒か明るみに出すよう進言するべきですが、もちろんそうはなりません。
「兄弟仁義」のような任侠映画でさえ時代を反映して、1968年公開の第七作は公害問題が経糸で、やはり絵に描いたような図式の話でした(いつも悪役の遠藤辰雄さんが珍しく良い研究者役)。

私どもが仕事に就く頃はまだ「コンプライアンス」という言葉こそ使われていませんでしが、例えば不良品に対して「前例がないから、この製品に問題はない」という感覚の人はほとんどいませんでした。
もの作りの人も現場の人も常に耐摩耗など物性の検査よりは現実におきる事象を重く捉えていたので、きちんと鍛えられた人々は目先の損よりもっと本質的に大事なことがあることを認識していたのは幸いです。

公害問題は未だ全面解決に至ってないそうですが、今怖いのはもっと巧妙に生活に入り込んでいるもの、例えば作られてからまだ十分に時間が経っていない人工的なものなんかがそうですが、それを使った食品をあまり頻繁に食べるのはどうかという話をよく聞きます。

また以前にも書いたように、数十年前乳ガンを患った親戚に天然繊維で作った肌着が提供されたことから、直接肌にふれる衣類から化繊を排除したという方もいらっしゃいました。
保険会社のセールストークやCMで「二人に一人はガンになる時代」というのがいつの間にか当たり前のようになりましたが、食生活の多様化一括りで片付くかどうか。

ささやかですが、仕事場ではなるべくゴミを抑えるようにしています。
先日もコラボのようなことを打診してくれたところがありましたが、よく聴くと再生できないゴミが現在の何倍も出ることが分かり丁重にお断りしたのも、もしかすると小学6年の夏の後遺症かも知れません。
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"NOWELL"さん

2021-09-18 |  その他
関根勤さんが昔からやっていた千葉真一さんのモノマネは、よく分からなかったんですがずっと何かデフォルメしてるのかと思っていました。
追悼で配信されていた昔の東映主演作品を観たら本当にそのままで、誇張とかではなかったんですね。

そんな発見に感心してるような日常ですが、ある日、革小物のブランドを立ち上げたばかりという方からご連絡をいただき、数日後千葉から遊びに来てくださいました。

お話を伺うと、有名メーカーに勤務した後、銀座の老舗の製品を請け負う職人さんのもとで腕を磨き、イタリアを経由してパリへ渡り、大手メゾンの製品をM.O.F.を持つ職人さん達と一緒に作っていたとのこと...

と書くと数行ですが、ツテのない現地で働く先を探し続ける日々など、聴いてるこちらが折れそうになります。
来月以降は雑誌でも紹介されるそうですから詳しいお話はそちらに譲るとして、ご興味ある方は是非チェックしてみて下さい
いつも思うことですがよその方の話はいずれも面白く、まして人一倍熱意を持ってあちこち行脚された方の話は、たまに見る「情熱大陸」をしのぎます。

日頃ホーズやハンカチーフまで気を抜かないでなんて言ってますが、ベルトはテクスチャーや色をだいたい靴に合わせたり対比させたり多少気をつかっても、革小物は確かにあまり顧みません。
せいぜいブランド名が外に出てたりすぐ分かるようなのは持たないよう気をつける程度です。

ましてM.O.Fと聞けばポール・ボキューズやアラン・シャペル、ジョエル・ロブションがすぐ思い浮かびますから、いくら請われても、そういう環境で研鑽を積んだ方の作品にコメントなんて出来るものではありません。


"私物 / 茶の二点が使用中"

いろいろ細かい話はよほど好きな方でないとなかなか通じない場合も多いですが、勉強・研究熱心な方で日頃から手を動かしていらっしゃるからでしょう、年齢は違ってもそんな心配はありません。

私どもの扱う服の場合、ポケットやボタンの位置・バランスが収まるべき所へ収まっていないと福笑いのように見えてしまいますが、正面から見た時のラペルやカラーの角の小さな丸みでも表情が変わることがあります。
素材や厚さでそれぞれに合った丸みがありますから、なおざりに出来ません。

見せて頂いた製品は、間仕切りなどちょっとした部分の意匠などに洒落た感覚があって、控え目ながら素材感ともども何気ない部分に違いのわかるような作りです。

また毎度のことですが現代に生きている強みは「後出しジャンケン」出来ることで、その気さえあれば世界のあちこちの優れた製品や仕事を見ることも出来ますし、時間を遡って過去の遺産にふれ、様々な選択肢から一番良さそうな答えを導くことも可能です。

例えば、何度か書きましたように男性のスタイルが最もエレガントだったと言われる'30年代のカッコは魅力ありますし趣味だったら何の問題もありませんが、洋服屋となるとその後80年の間に進化した着心地や素材に合わせた技術に無関心なのは不勉強と言われかねません。
"timeless elegance"と言われるように、「時代を超越した...」という部分を探り続けるのが肝心だと思っていますが、勉強を怠らない方にそんな心配は無用で、すべて吸収されているに違いありません。

すでにキャリアもあり細かい違いを見分ける眼をそなえ、男性の伝統的なスタイルについても勉強熱心ですから、使う人が主体であることを忘れない物作りも相まって、10年後20年後さらに楽しみな職人さんになられることと思います。


"高貴な紫の箱に収まって届いた品は、気をつかって後日贈っていただいたものです"

一緒に歩きながら、
「帰って来たらたいていさっぱりなんですけど、向こうにいた頃仲良くしてたイタリア人はコンスタントにメールくれるんですよね」

「日本人だと相手に言葉が通じないと分かってて喋り続けられる人ってほとんどいないと思うけど、イタリア人だと10人中2人くらい、まるで通じてないことを気にしてないみたいに話してくれる人っているじゃない?それに近いね。
相手に気づまりを感じさせまいと、本当はすごく気を遣ってくれてるんだろうけど。
日本だと地方のお年寄りにいるよね」

他愛ない思い出話などもして、気がつけば6時間くらい経っていました。



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続・Milano

2021-08-28 |  その他
ここ数年毎年どこかで起きる豪雨災害がニュースになるほんの少し前、フロリダ州マイアミのマンション崩落がニュースになっていました。
東南アジアで似たような崩落事故が以前からニュースになっていた時は、ズサンさによる事故かと思っていましたが、それだけではないかと思うような出来事でした。



偶然その一週間前の0時前後の番組で、コンクリートの建物を支えるような太い鉄筋を溶接して補強する圧接工という仕事を紹介していました。
細かい部分にも気を抜かず完遂する仕事を見ていたら、「このくらい神経を配って作ったら、さぞかし良い服が出来るだろうな」と思いました。

一頃イタリア等の手仕事を多用した服作りが話題になった頃、その行き着く先として着心地もそれ相応に話題になっていました。
もしかしたら数年置きに「着心地」が記事になっているかもしれませんが、イタリアの一定レベル以上のよく出来た既製服を普段から着ている方はそのレベルが身体に馴染んでいるでしょうから、話題になるならないに関わらず冷静に着心地を判定できることと思います。

ただ建築物などの検査と違って数値や仕上がりのキレイさだけでは判別できませんから、そこがちょっと難しくもあり面白いところでもあります。

そんな事を書いてしばらく経ち、前々回のお話のスーツが出来上がりました。
ご了解いただいたので、画像を使わせていただきます。



ご用向きは、
「ミラノの顧客に初めて会いに行くので、その時着る濃紺のダブルブレステッド・スーツ」
料理ではありませんがルセットとしては、G.アニエッリ少々、パンツにエレガントな揺れを少々、というイメージをいただきました。
幸いなことに、打ち込み具合といい原毛の良さからくる自然な艶といい最適な生地がタイミングよく
手に入り、新鮮な着心地をちょっとした驚きをもって喜んでいただけたようで、現地でお役に立てそうな予感がしてきました。
シャツ、ネクタイのバリエーションを楽しんで頂き、当初の目的以外にもハレの席など大いに活用いただけたらと思います。



 


アニエッリでなく今回はゲイリー・クーパーの画像を付録に。

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Milano

2021-08-04 |  その他
梅雨が明けましたが、連日湿度高め体感温度高めの日々が続いてます。
2年間湿度に悩まされ続けたトラウマか、移転して初めての梅雨がどうなるか非常に気になっていましたが、まったく問題なくやり過ごせたことに一安心です。

そして今は連日オリンピックに一喜一憂で、終わったら抜け殻のようになるんじゃないかと心配です。
それまで絶対的な存在だった人が切り開いた道を、更に押し進める若い選手が現れるのを何度も観てきました。
人類が100メートルを5秒で走れるとは思いませんが、どんな競技も限界を少しづつ更新し続けています。
そういった瞬間にひきつけられ、知らず知らず見入ってしまうのかもしれません。

その前少し自由な頃、人数制限を守りながらお誘いいただく場合にはたいてい参加しました。
大人数で楽しくという訳にいかないのが残念ですが、やはり声をかけて頂くのはたいてい服好きの方ばかりで、競技ではありませんが話しているとそういう方々の足音がヒタヒタと迫って来るのを感じます。
それくらい皆さん散財したり失敗を繰り返したり、それぞれに工夫をこらしながら好きを維持というか興味を熱心に育てているので、互いに話してる内容は他人からは笑い話に聞こえるかもしれませんが、生業にしている平均的な人も凌ぐレベルです。



先日初めて伺った方は、状況が改善され次第ミラノに行くので「ミラノで恥ずかしくないスーツを」というリクエストでした。
以前にも書いた話ですが、イタリアで洒落た街やそれに見合ったお洒落な男性がいる都市はもちろん日本より多いですが、唸るような人がゴロゴロいる訳でもありません。
ただ平均的なレベルが日本よりずっと高く、その全体的な雰囲気を支えているのは一定年齢以上のクラシックな装いをした男性と、美意識が高く男性のそうした装いの価値も理解しているご婦人方です。

中でもミラノはそういう意識が他よりずっと高い街という印象があります。
不況以降行っていませんからどう変化したか分かりませんが、一昨年懇意の方がミラノへ寄って、馬具と靴の店だったスティヴァレリア・サヴォイア・バッリーニという店がトータルアイテムを扱う"Stivaleria Savoia"となり、とても活気のある店内だったという話を聞かせてもらいました。

「今迄行ったどこの店よりも、他の客の圧を感じた」という話を聞いて、ルチアーノ・バルベラが相対した人の服を上から下まで眺める儀式や、色々な店での視線や質問責めにあったことを思い出しました。



また紳士服店を出たあと家内が、
「さっきの店で背後にいたオジサンが、商品も見ないでずっと上から下まで見てたの気づいた?」
と教えてくれるのもミラノが一番多かったと思います。それくらい男性も着る物に心血を注いでいるように見えます。

そんな手強い街にも、バルベラみたいな人はそうはいません。
服はいいけど靴が何かおかしいとかその逆だったり、ホーズなどコーディネイトやバランスを含めてこれはというような人は3日くらいいても一人いるかいないか。

注文頂いた方は業界の方ではありませんが、そのスーツがミラノでの仕事や人間関係を円滑に進めるパスポートになってくれたら、これ以上の喜びはありません。

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Life is just a bowl of cherries.

2021-06-15 |  その他
帰りの電車はピークを過ぎた時間帯らしく空いていました。
誰とも隣り合わない席に座った瞬間、ぐっしょり濡れているのが伝わってきてすぐ立ちました。
人生で2度目かもしかすると3度目のことですが、こんなに盛大に濡れていたのは初めてです。
しちゃった人も苦しかっただろうなとか、いゃ停車駅間がずっと2~3分なのに下車しないのは泥酔か?、もしかしたら水かお茶の可能性もないことはない、なんて考えているうちに駅に着きました。

幸いその日はたいした衣裳でなく、綿のパンツで洗えばすむことなので、そんなに気持ち悪いとかありません。
仕事がら、杜撰な製品を見た時の方がずっと気持ち悪いです。
次に濡れる人がないよう、改札で座席の位置を伝えて帰って来ました。



帰ってスポーツニュースを見ると、連日の大谷翔平選手の活躍を伝えていました。
ホームラン数は途中で落ち着いてくるかと思っていましたが良い方に予想を覆していまだ首位を争い、打って投げてチーム1の盗塁まで決めて大活躍。
出来ることは何でもやってやろうという生きる喜びみたいなものが伝わってきて、観ていてこちらまで楽しくなってきますが、ここまで来るとケガが心配なので、休み返上で頑張りすぎたりせず好調を維持してもらいたいところです。

ジャンルは違いますが、藤井聡太棋聖の活躍を連想しました。
ただAIと競うような一手を理解できないこちらのおつむの限界から、大谷選手のホームランや投球を観た時のような爽快感がないのが歯がゆいところ。
 

最近知り合ったコ、「撫でてもいいよ」と横に。
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よもやま話

2021-05-05 |  その他
これも聴かせていただいた話です。
車好きの方が好きな車を2台買って片方をお仲間に運転してもらい、一緒に走るもう1台からその姿を眺めるというお話。
面白いですね。
聴かせてくださった方はもちろんそれは知らないと思いますが、何時だったか、自分で気に入った生地の服を着ていても何か満足できないことに気づいたと書きました。
やはり鏡にうつったのを見るのと、他の方が着ているのをダイレクトに見るのではちょっと違います。
私のはだいぶ話のスケールが違いますが、思うことは一緒だなと思いました。

また別の方の話から。
元大臣の選挙違反に絡む汚職事件を解説した番組があったそうです。
過去の事例を遡った映像で、10年20年くらい前の事件の際の街頭インタビューが流れると、マイクを向けられた男性のカッコが現在に比べちゃんとしていた、というお話です。
偶然の可能性もありますが、長年にわたるカジュアル化の傾向から無理もないことかも知れません。
私どもの仕事をキチンとして行くしかありません。



ついでに、暫く前にYouTubeで「アニエッリ一族」みたいなタイトルの番組を見ました。
半世紀近く前のイタリアの状況は映画や活字でよくご存知の方も多いかと思いますが、そのドキュメンタリーの中盤では両手で足りないくらい凄惨な映像がありました。
政敵や利益を阻害する者を容赦なく排除していた時代は聞きしに勝るもので、映画以上です。
まったく別の場所だと思いますが、イタリアで「昔この通りで凄惨な事件があった」と聞かされたのを思い出しました。
日本でファッション誌の視点からだけでは分からないことがあるのは、ウィンザー公もそうですし、ヘンリー王子が反目するのもお母さんの事があったからかなと思います。

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よそのお仕事

2021-04-27 |  その他
ほとんど出かけないのもあって話のネタも切れ気味ですから、お越し頂いた時聞かせてもらうお話はみんな面白いです。
先日も息を切らして着くなり、ちょっと予定が狂って着替える時間がなかったと仰りながら、
「取引先の担当者が前は普通だったんだけど、新しく代わったら困りもので、それがまたそこの社長の息子なんです」
とのこと。
異業種の話ではありますが、「あら、何か最近映画で観たような話」なんて映画だか現実だか分からなくなってきます。



だいぶ前の話ですが、あるメーカーの方からそこの会社の製品について問題点はないかと訊かれた時のこと。
気になる部分を説明しましたがすぐには腑に落ちないようで、「いきなり口で言っても分からないかも知れないので、参考になる部分がありますから、服部さんという方が書いた『洋服の話』というのをとりあえず読んでみて下さい」
と基本的な理解を深めて頂ければとメモを渡しました。
しばらくしてまた見えると、「工場へ行ってあの本の話をしたら、すでに皆んなが読んでいた」そうです。
九州の西の端にある工場の方々が皆んなで回し読みする姿を想像してちょっと驚きもし、皆んな何とかして製品を進化させたいと思っているんだなと感じました。

辻静雄さんの本にも度々出てくる話ですが、「料理に興味を持って取り組んでいると、必ずその歴史や他の人の仕事(作り方)に関心を持たずにはいられない」と言われるし、実際そうなると言います。

歴史を遡らないまでも普通に取り組んでいれば、より良い製品より良い仕事とはいったいどういうものだろうと絶えず頭の片隅にあるので、数少ない信頼できそうな資料をあたることになります。
それを製品にいかして利用者により満足してもらうというシンプルな理屈なのですが、残念ながら実際には中間に関わる人すべてがそういう方向性とは限りませんから、冒頭の話のような事もおこるのでしょう。
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