HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

和素材はアートの方が似合う。 

2014-10-29 05:45:46 | Weblog
 仕事柄、日頃はファッション、デザイン業界以外の方々とはあまり交流はないが、年に一度、異業種の企業トップとお会いする機会がある。

 先日も食品メーカーの経営者とお話しした。ここは主に九州、西日本一円を販路にするパンメーカーで、発売から40年来続く人気のロングセラー商品をもつ。NY名物のドーナツにヒントを得たチョコレートコーティングのパンである。

 さっくりした食感で甘たらしくないところに、一時期はまったと言う人は少なくないと聞く。この10月にはアニバーサリー商品として、3ヵ月期間限定でプレミアバージョンを3種類発売している。

 かつてテレビの全国放送で取り上げられて一躍人気に火がつき、「幻の」という冠がついた時期もある。そのため、 プレミアの発売ではパッケージを不透明にするなど、あえて賞味期限を10日程度に延長した。

 これが奏功して発売から1ヵ月足らずで、オリジナルを合わせ100万個を販売。 福岡を訪れた人たちがまとめ買いするなど、お土産需要を呼び込んだようである。今も生産ラインはフル稼働というから、同社にとってはうれしい悲鳴だろう。

 今回の商品開発には、全社を挙げて取り組んだと言う。大ヒットはまさにスタッフの尽力の賜物だ。ロングセラー商品と期間限定企画の相乗効果をそのまま企業ブランド力の向上にもつなげることが、次なる経営のテーマだと思う。

 ただ、東京メディアが地方のスーベニアに注目すると、ファンが全国に拡大することから、他業種とのコラボ商品も生まれている。筆者は菓子パンを全く食べないが、こちらの商品には興味をそそられる。

 ペンやメモ用紙といったステーショナリーはありがちだけど、目を引いたのは東京の専門店「かまわぬ」が企画を持ちかけたキャラクターとダルマの手拭だ。伝統技法の「注染」を用いて、晒を青赤の2種類を染め上げている。

 地元福岡の雑貨ストア「インキューブ」で発売し、すでに完売。東京では丸井の吉祥寺店でも販売されているという。オリジナルのファンのみならず、九州で永く親しまれてきたキャラクターには、東京でも惹かれる人は少なくないと思う。

 ところで、手拭は日本の生活スタイルが生んだユーティリティのあるアイテムだ。手を拭き、汗を拭ぐう。気合を入れるはちまきにも、頭に被れば汗止め、埃除けにもなる。おまけに小物を包む布切れにもなるから、使い勝手は非常に良い。
 
 筆者は幼少期から博多山笠に参加してきたので、晒の手拭には人一倍、愛着がある。「手描き」「摺り込み」「染め抜き」と、流れごとに違う水法被や手拭の染め方を舁き手の男衆が語っていたので、子供の頃からいつの間にか聞き憶えてしまった。

 また中学時代、剣道の道場に通っていた時は、友人と級位以外で張り合えるのが手拭のデザインだった。面を被る前に水で濡らした端を噛んで伸ばし、摺りや抜き文字が描かれたものを頭に被る仕草はとても絵になった。

 また、乱取りを終え、面を外した時も、湯気が立つ手拭は和文字や柄が際立った。バンダナが日本に浸透していた時期に、手拭が醸すセンスは決して引けを取らなかった。

 大胆な筆文字や柄。カリグラフィーの掠れ具合。家紋や地紋。日本伝統のグラフィックスタイルには流行がないから好きだ。まさにジャパニーズアートだと思う。

 事務所には手拭ではないが、東京・浅草「べんがら」の暖簾をパーテーション代わりに使っている。こちらも手拭同様に薄地とはいえ、こしのある麻に藍の注染で、一筆の円を染め抜いている。シンプルだが、大胆な図柄が気に入っている。

 和グラフィックなデザインと独特な質感にすっかりはまってしまい、今では定期的に付け替えるようになった。

 一方、7~8年ほど前から六本木の「NUNO」にも注目している。こちらは単なる生地屋ではなく、テキスタイルデザイナーが企画構成したオリジナルの布を販売している。

 昔ながらの機械で織った味わいのある生地ばかりで、そのままグラフィックアートとしても通用する。もちろん、こんな生地を使えばファッションがもつ既成服のイメージを剥がせる感じもする。生地は独特の雰囲気を演出する。

 和素材は服にするにはコシに欠けるから、プロポーションを際立たせるようなパターンには向かない。それを無理矢理狙うと、芯地を使わざるを得ないため、かえって生地の質感が失われてしまう。

 だから、この手の生地は布のデザイン、グラフィックを楽しむ方が言いかもしれない。そのまま、端ミシンを当ててラグやテーブルクロスにしたり、フリンジを付けてランチョンマットにしたりと、ファッションよりインテリアのカテゴリーだ。

 グラフィカルな布地を木枠にガンタッカーで止めて額装するのが一時流行った。インテリアだと生地は経年で劣化するから、新しい布のデビューは、模様替えのきっかけにしてもいいと思う。

 日本の伝統技術のもとに生まれる布は、海外生産の廉価な生地に押されてじり貧状態だ。もはや服の素材と考える以上、その価値は原価の次元を超えない。テキスタイルが服のクリエイティビティを決するなんて言ったところで、それは気休めでしかないだろう。

 和紙や手漉き和紙の技術がユネスコの世界無形文化遺産に登録された。日本が生んだ絹織物などの和布にも、世界からもっとスポットが当たることを期待したい。

 和素材のテキスタイルをアート考えれば、もっとアイテムを増やせそうな気がする。特に海外では、Made by Japanese fabric、Japanese Textureは一つのブランド価値を生み出すように思う。
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