今日のコラムは本来なら先週投稿する予定だった。だが、4月初めに書いたものが投稿を伸び伸びにしていたため急遽、先週に差し込んだ。すると、6月12日の繊研PLUS「めてみみ」に「スニーカーのリペア」(https://b161.hm-f.jp/cc.php?t=M23445&c=42499&d=fc08)という記事が掲載された。偶然とはいえ、筆者を含め業界関係者がそれだけ注目していることだ。では、本題に入ろう。
スニーカーをできる限り長く履くための工夫、それがビジネスになることについてだ。日々の移動では電車や地下鉄、徒歩が多いので、お気に入りのスニーカーを履き続けると、消耗が激しくなるというのは前にも書いた。アッパーやタンの劣化が激しくなると、そろそろ買い替えのシグナルで新しいものを探さないといけない。ただ、スポーツブランドからセレクトショップ、専門店までで、気に入った1足を見つけるのは容易ではない。そこで、お気に入りはできるだけ長く履けるようにケアも考えるようになった。
ゴールデンウィークが明けて急に暑くなり好天が続いたので、ホワイトのキャンバススニーカーを履き始めた。毎度のことだが、白地はすぐに汚れが目立ってくる。洗い替えに1、2足用意してシーズンをローテーションで履き替えるのが理想なのだが、1足しかないとこまめに洗って履き続けるしかない。一応、専用洗剤やブラシを使って洗ってはいるが、よくすすいだつもりでも、洗剤がアッパー部分に残ると、乾いた時に廻しテープとの境目が黄色に変色することがある。同じ経験をした方も多いのではないだろうか。
原因を調べると、スニーカー用の洗剤は「弱アルカリ性」が多いので、成分が少しでも繊維に付着すると変色するのだそうだ。防ぐには「よくすすぐこと」、そしてアルカリ成分を中和する「酢」に漬けるのが良いとあった。なるほどである。念には念を入れると、洗う段階から「中性洗剤」を使い、すすいだ後に酢を入れた水に漬ければいいだろう。そうすれば黄ばむのを抑えられ、元のような白さが蘇るかもしれない。早速、やってみた。すると、弱アルカリ性の洗剤で洗うよりも、黄ばみが抑えられた。今後はこの方法を使っていくことにする。
ところで、海外のスニーカーマニアはセコハンのブランドスニーカーを購入し、綺麗に洗浄して補修を施す=レストア(原状を復元する)動画を公開している。おそらく、丁寧に原状を復元した後は、再販しているのではないか。外国人が公開する早送り映像だから、レストア作業はイージーなのかと思いきや、実際はスニーカーの各部分を洗浄するのに、使用する道具や手法を変えるなど、隅々まで時間をかけている。再販を目的とするなら当然だが。工程を分けてみると、ざっと以下のようになる。
1.紐を外し、専用のブラシを使用し表面の汚れを軽く落とす。
2.アウトソールの溝に入りんだ土などの汚れはピックでかき出す
3.容器に入れた液体洗剤を念入りに撹拌
4.汚れ落とし用のブラシでミッドソールの側面から汚れを落とす
5.アウトソールは汚れをとした後、スチームクリーナーで洗浄
6.内側もブラシで汚れを落とし、毛羽立ちは毛玉取りで落とす
7.スチームリーナーを使い、洗浄と除菌を行う
8.中敷きは毛先を変えたブラシで両面を丁寧に洗浄する
9.アッパーやタンなどは回転ブラシで洗浄
10.臭いを取るためネットに入れ、芳香洗剤を使用し洗濯機で洗う
11.スエード面は色落ちを染料で着色
12.何回かブラシをかけ、さらにスエードスプレーを噴霧
13.黄ばんだ箇所に漂白剤を塗りラップしてUVライトに当てる
14.乾燥させた後、内側に芳香スプレーを噴霧
ある動画制作者は、高級ブランド「クリスチャン・ルブタン」のスエード、「ルイ・ヴィトン」のコラボでも怯むことなく、洗剤をつけたブラシで汚れを落としている。ただ、スエード部分は洗剤で洗うと乾燥後に色落ちが目立つからだろう。染料を上塗りし、できる限り元の色に近づけようとしている。表面の毛羽立ちもスエードスプレー(ミンクオイル配合)を噴霧し、丁寧にブラッシングする。最後は芳香スプレーで香りづけまで行って仕上がりだ。ここまで手をかければ、相当の価格をつけても再販は可能だと思う。
単なる中古販売から手間暇かけたリセールに
このところ、中古販売の人気が鰻登りだ。販売チャネルも路面のリサイクルショップからフリマアプリのメルカリ、さらに新興の買取事業者までと増えている。ただ、これらの業態で売られている商品は、ブランドであるかないか。また、状態の程度の違いこそあれ、使い古して不要になったものが大半。中でもメルカリのような仲介サービスが支持されるのは、誰でも簡単に出品でき、買い手がつく可能性があるからだ。ただ、そうした商品でもマニアが好むレアなものを除き、ほとんどが量産品のため、それほど高値で取引されることはない。
商品単価を上げることが難しい中、中古品の売買事業者はスムーズに取引を進められる方向に軸足を移している。主にブランド品が対象になるが、買取希望者が店舗に直接持ち込んだり、自分で店舗まで送付する手間を省くため、買取業者の間では宅配買取の「梱包キット」を用意するのが当たり前になった。各社が中古品の売買に参入している状況では、他社よりも買取の利便性を向上させることが差別化につながると考えたわけだ。
メルカリは2024年5月22日から出品者の「値段決め」や「価格交渉」の煩わしさを解消するために、「価格なしの出品」機能の提供を始めた。これにより、購入希望者側が「購入したい価格」を提案し、出品者がその提案をOKすれば、取引に移るというものだ。このサービスもできる限り簡単に出品してもらうことで、売買機会を増やす=メルカリ側の手数料収入増を図る狙いと見て取れる。さらにヤクルトの宅配員に家庭に眠る不用品の回収を委託する実験も始めた。不用品はメルカリで販売するというが、営業所で不用品が管理できるのか、発送業務の手間が生じるなど課題も少なくない。
ただ、出品者は商品ができる限り高く売れて欲しいし、購入者はできる限り安く買いたい。そうした心理は程度の差こそあれ、一様に同じと見られる。つまり、中古品売買のハードルが下がると、売買機会を増やすために売れる環境を整える様々なサービスが登場する。一方で、出品者側は売りたい商品について何らかの差別化、競争力を持たせる必要に迫られる。もちろん、それが面倒な人間の方が大半だと思うが、市場がここまで大きくなると、少しでも高く売るには中古品の質を上げるなど何らかの工夫が必要になるということだ。
海外のセコハンスニーカーでは、人気アイテムを手間暇をかけてレストアし、新品と見まごうレベルに仕上げるようになっている。こちらも最初は価格が安い中古のブランドスニーカーを見つけて自分で履くために洗浄、補修していたのだと思う。それをネット動画で公開すると、あまりに反響が高かったために「これはビジネスになる」と踏んだのではないか。数をこなしながら試行錯誤を繰り返すことで、洗浄や補修の技術を高められたこともあるだろう。あえてSDGsに結びつけるまでもなく、セコハン先進国の欧米だからこそ、生まれたビジネスではないか。日本に浸透していくのも時間の問題だと思う。
中古品はニーズが増え、マス市場を形成するまでになった。中古品の買取業者の中には、「何でも買い取ります」を謳い文句に、「破れ(衣類)」「壊れ(携帯電話・家電)」「傷物(楽器・工具類)」「カビ(カメラレンズ)」などがあっても引き取ってくれるところがある。ただ、これら「瑕疵のある商品」を綺麗に洗浄、補修して、実際に再販しているかはわからない。洗浄、補修するにはスタッフが必要になり、コストがかかる。仮に0円で引き取っても、割に合わない。おそらく廃家電やパソコンからは金属を取り出し、それ以外のものは様々な素材やパーツ用として海外に輸出しているのではないか。
国内の中古品市場に目を向けると、実店舗やネットなどでは様々な企業が参入し、競争が激しくなっている。これまでのように店やサイトに商品を並べたからといって、簡単に買い手がつくとは限らない。つまり、中古品売買は次のステージに移りつつあるということだ。その意味で売り手ができる限り高値で売りたいのなら、商品の状態を良くすることが不可欠になる。なおさらブランドスニーカーのような人気アイテムは、使用時からケアを欠かさないのはもちろん、きちんとクリーニング&補修を施す=手間暇とコストをかけて原状を復元したものなら、高値で売れるという理屈である。
一方で、国内の買取業者ではユーズドスニーカーを洗浄や補修し、付加価値を上げてまで再販するには至っていない。買取業者は中古品の状態のままで金額を査定するノウハウしか持っていないから、それは仕方ない。エルメスのバッグやロレックスの時計などの中古品は、多少の劣化があるものでも売りやすい。また、宝石・貴金属は分解して石と地金に分けることができるので、再加工のための原材料として流通できる。つまり、革製品や高級時計、宝石・金地金なら中古品でも高値が付くから、それほど手をかけなくてもいいわけだ。
だが、スニーカーは違う。履くほどに汚損や劣化が進み、足臭が付くわけで、「まだ十分に履けるから」の価値感だけでは、競争激化に飲み込まれて販売は難しくなる。売る側が中古品だから状態の低下は許容範囲のはずだとしても、買う側とすればより状態の良いものを欲するわけで、売買成立のギャップは無くならない。つまり、売るためには買う側の気持ちになることも重要なのだ。今後は日本でも中古のブランドスニーカーを売るには、欧米のように洗浄や補修を施すことが差別化、競争力になり、売れる条件になっていくだろう。あとはそこまでして売りたいか、そのままで売れるのを待つかだけの違いだ。
欧米では日本よりもはるか前からセコハン文化が根付いている。それはSDGsとは別の次元でビジネスとして浸透し成熟の領域に入ったことから、何らかの活性化策が必要になってきたわけだ。クリーニング&補修を施して原状を復元するのは、必然というべきかもしれない。メルカリが米国でうまくいっていない理由もその辺に隠れているのか。日本のリサイクル業者やプラットフォーマーにとっては、商品が売れるに越したことはない。ブランド品の買取業者は高く売るための条件を指南するが、今後はリサイクル業者やプラットフォーマーが原状復元のための手法について周知啓蒙したり、レクチャーすることが必要になるのかもしれない。
スニーカーをできる限り長く履くための工夫、それがビジネスになることについてだ。日々の移動では電車や地下鉄、徒歩が多いので、お気に入りのスニーカーを履き続けると、消耗が激しくなるというのは前にも書いた。アッパーやタンの劣化が激しくなると、そろそろ買い替えのシグナルで新しいものを探さないといけない。ただ、スポーツブランドからセレクトショップ、専門店までで、気に入った1足を見つけるのは容易ではない。そこで、お気に入りはできるだけ長く履けるようにケアも考えるようになった。
ゴールデンウィークが明けて急に暑くなり好天が続いたので、ホワイトのキャンバススニーカーを履き始めた。毎度のことだが、白地はすぐに汚れが目立ってくる。洗い替えに1、2足用意してシーズンをローテーションで履き替えるのが理想なのだが、1足しかないとこまめに洗って履き続けるしかない。一応、専用洗剤やブラシを使って洗ってはいるが、よくすすいだつもりでも、洗剤がアッパー部分に残ると、乾いた時に廻しテープとの境目が黄色に変色することがある。同じ経験をした方も多いのではないだろうか。
原因を調べると、スニーカー用の洗剤は「弱アルカリ性」が多いので、成分が少しでも繊維に付着すると変色するのだそうだ。防ぐには「よくすすぐこと」、そしてアルカリ成分を中和する「酢」に漬けるのが良いとあった。なるほどである。念には念を入れると、洗う段階から「中性洗剤」を使い、すすいだ後に酢を入れた水に漬ければいいだろう。そうすれば黄ばむのを抑えられ、元のような白さが蘇るかもしれない。早速、やってみた。すると、弱アルカリ性の洗剤で洗うよりも、黄ばみが抑えられた。今後はこの方法を使っていくことにする。
ところで、海外のスニーカーマニアはセコハンのブランドスニーカーを購入し、綺麗に洗浄して補修を施す=レストア(原状を復元する)動画を公開している。おそらく、丁寧に原状を復元した後は、再販しているのではないか。外国人が公開する早送り映像だから、レストア作業はイージーなのかと思いきや、実際はスニーカーの各部分を洗浄するのに、使用する道具や手法を変えるなど、隅々まで時間をかけている。再販を目的とするなら当然だが。工程を分けてみると、ざっと以下のようになる。
1.紐を外し、専用のブラシを使用し表面の汚れを軽く落とす。
2.アウトソールの溝に入りんだ土などの汚れはピックでかき出す
3.容器に入れた液体洗剤を念入りに撹拌
4.汚れ落とし用のブラシでミッドソールの側面から汚れを落とす
5.アウトソールは汚れをとした後、スチームクリーナーで洗浄
6.内側もブラシで汚れを落とし、毛羽立ちは毛玉取りで落とす
7.スチームリーナーを使い、洗浄と除菌を行う
8.中敷きは毛先を変えたブラシで両面を丁寧に洗浄する
9.アッパーやタンなどは回転ブラシで洗浄
10.臭いを取るためネットに入れ、芳香洗剤を使用し洗濯機で洗う
11.スエード面は色落ちを染料で着色
12.何回かブラシをかけ、さらにスエードスプレーを噴霧
13.黄ばんだ箇所に漂白剤を塗りラップしてUVライトに当てる
14.乾燥させた後、内側に芳香スプレーを噴霧
ある動画制作者は、高級ブランド「クリスチャン・ルブタン」のスエード、「ルイ・ヴィトン」のコラボでも怯むことなく、洗剤をつけたブラシで汚れを落としている。ただ、スエード部分は洗剤で洗うと乾燥後に色落ちが目立つからだろう。染料を上塗りし、できる限り元の色に近づけようとしている。表面の毛羽立ちもスエードスプレー(ミンクオイル配合)を噴霧し、丁寧にブラッシングする。最後は芳香スプレーで香りづけまで行って仕上がりだ。ここまで手をかければ、相当の価格をつけても再販は可能だと思う。
単なる中古販売から手間暇かけたリセールに
このところ、中古販売の人気が鰻登りだ。販売チャネルも路面のリサイクルショップからフリマアプリのメルカリ、さらに新興の買取事業者までと増えている。ただ、これらの業態で売られている商品は、ブランドであるかないか。また、状態の程度の違いこそあれ、使い古して不要になったものが大半。中でもメルカリのような仲介サービスが支持されるのは、誰でも簡単に出品でき、買い手がつく可能性があるからだ。ただ、そうした商品でもマニアが好むレアなものを除き、ほとんどが量産品のため、それほど高値で取引されることはない。
商品単価を上げることが難しい中、中古品の売買事業者はスムーズに取引を進められる方向に軸足を移している。主にブランド品が対象になるが、買取希望者が店舗に直接持ち込んだり、自分で店舗まで送付する手間を省くため、買取業者の間では宅配買取の「梱包キット」を用意するのが当たり前になった。各社が中古品の売買に参入している状況では、他社よりも買取の利便性を向上させることが差別化につながると考えたわけだ。
メルカリは2024年5月22日から出品者の「値段決め」や「価格交渉」の煩わしさを解消するために、「価格なしの出品」機能の提供を始めた。これにより、購入希望者側が「購入したい価格」を提案し、出品者がその提案をOKすれば、取引に移るというものだ。このサービスもできる限り簡単に出品してもらうことで、売買機会を増やす=メルカリ側の手数料収入増を図る狙いと見て取れる。さらにヤクルトの宅配員に家庭に眠る不用品の回収を委託する実験も始めた。不用品はメルカリで販売するというが、営業所で不用品が管理できるのか、発送業務の手間が生じるなど課題も少なくない。
ただ、出品者は商品ができる限り高く売れて欲しいし、購入者はできる限り安く買いたい。そうした心理は程度の差こそあれ、一様に同じと見られる。つまり、中古品売買のハードルが下がると、売買機会を増やすために売れる環境を整える様々なサービスが登場する。一方で、出品者側は売りたい商品について何らかの差別化、競争力を持たせる必要に迫られる。もちろん、それが面倒な人間の方が大半だと思うが、市場がここまで大きくなると、少しでも高く売るには中古品の質を上げるなど何らかの工夫が必要になるということだ。
海外のセコハンスニーカーでは、人気アイテムを手間暇をかけてレストアし、新品と見まごうレベルに仕上げるようになっている。こちらも最初は価格が安い中古のブランドスニーカーを見つけて自分で履くために洗浄、補修していたのだと思う。それをネット動画で公開すると、あまりに反響が高かったために「これはビジネスになる」と踏んだのではないか。数をこなしながら試行錯誤を繰り返すことで、洗浄や補修の技術を高められたこともあるだろう。あえてSDGsに結びつけるまでもなく、セコハン先進国の欧米だからこそ、生まれたビジネスではないか。日本に浸透していくのも時間の問題だと思う。
中古品はニーズが増え、マス市場を形成するまでになった。中古品の買取業者の中には、「何でも買い取ります」を謳い文句に、「破れ(衣類)」「壊れ(携帯電話・家電)」「傷物(楽器・工具類)」「カビ(カメラレンズ)」などがあっても引き取ってくれるところがある。ただ、これら「瑕疵のある商品」を綺麗に洗浄、補修して、実際に再販しているかはわからない。洗浄、補修するにはスタッフが必要になり、コストがかかる。仮に0円で引き取っても、割に合わない。おそらく廃家電やパソコンからは金属を取り出し、それ以外のものは様々な素材やパーツ用として海外に輸出しているのではないか。
国内の中古品市場に目を向けると、実店舗やネットなどでは様々な企業が参入し、競争が激しくなっている。これまでのように店やサイトに商品を並べたからといって、簡単に買い手がつくとは限らない。つまり、中古品売買は次のステージに移りつつあるということだ。その意味で売り手ができる限り高値で売りたいのなら、商品の状態を良くすることが不可欠になる。なおさらブランドスニーカーのような人気アイテムは、使用時からケアを欠かさないのはもちろん、きちんとクリーニング&補修を施す=手間暇とコストをかけて原状を復元したものなら、高値で売れるという理屈である。
一方で、国内の買取業者ではユーズドスニーカーを洗浄や補修し、付加価値を上げてまで再販するには至っていない。買取業者は中古品の状態のままで金額を査定するノウハウしか持っていないから、それは仕方ない。エルメスのバッグやロレックスの時計などの中古品は、多少の劣化があるものでも売りやすい。また、宝石・貴金属は分解して石と地金に分けることができるので、再加工のための原材料として流通できる。つまり、革製品や高級時計、宝石・金地金なら中古品でも高値が付くから、それほど手をかけなくてもいいわけだ。
だが、スニーカーは違う。履くほどに汚損や劣化が進み、足臭が付くわけで、「まだ十分に履けるから」の価値感だけでは、競争激化に飲み込まれて販売は難しくなる。売る側が中古品だから状態の低下は許容範囲のはずだとしても、買う側とすればより状態の良いものを欲するわけで、売買成立のギャップは無くならない。つまり、売るためには買う側の気持ちになることも重要なのだ。今後は日本でも中古のブランドスニーカーを売るには、欧米のように洗浄や補修を施すことが差別化、競争力になり、売れる条件になっていくだろう。あとはそこまでして売りたいか、そのままで売れるのを待つかだけの違いだ。
欧米では日本よりもはるか前からセコハン文化が根付いている。それはSDGsとは別の次元でビジネスとして浸透し成熟の領域に入ったことから、何らかの活性化策が必要になってきたわけだ。クリーニング&補修を施して原状を復元するのは、必然というべきかもしれない。メルカリが米国でうまくいっていない理由もその辺に隠れているのか。日本のリサイクル業者やプラットフォーマーにとっては、商品が売れるに越したことはない。ブランド品の買取業者は高く売るための条件を指南するが、今後はリサイクル業者やプラットフォーマーが原状復元のための手法について周知啓蒙したり、レクチャーすることが必要になるのかもしれない。