HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

環境配慮の陰で蠢くもの。

2021-10-06 06:41:26 | Weblog
 10月に入った。明け方は多少ひんやりしてきたが、日中から夕方はまだまだ残暑が残る。日本の習慣では衣替えの時期だが、とても長袖を着る気にはなれない。というか、重ね着するにしても、アウター、インナーともに薄手のコットンで十分。ウールニットをパッキンから出すのは12月下旬でもいいのかも。それでも、暖冬なら着ないまま歳を越せそうだ。

 この際、冬物を断捨離しようかと思う。ほとんどが10数年着ている丈夫なものだが、日本では知名度がないユーロブランドが主体なので、買取店は引き取ってくれない。別に換金しようとは思ってないが、SDGsには多少なりとも貢献したい。SCのゆめタウンがだいぶ前に回収キャンペーンを行っていたが、衣替えの時期を外れ出すのを逸してしまった。今度は端境期の年明けだろうか。それを待つしかないようだ。

 スーパーのイトーヨーカ堂も初めての衣料品回収キャンペーンを実施するという。環境省の「3R(リデュース、リユース、リサイクル)推進月間」を機に10月1日から24日まで、全国の108店で行われる。こちらは衣料品の3Rを求める消費者ニーズに応えるとともに、「環境に配慮した商品」の充実をアピールするのが狙いのようだ。

 イトーヨーカ堂に限らず、スーパーの衣料品はジリ貧状態が続く。それがGMS(総合スーパー)の苦戦にもつながっている。経営者は判で押したように改革を公言するが、どこも結果が伴っていない。むしろ、GMSは来店客が1着でも衣料品を買ってくれれば儲けもんと、ハンギング主体で陳腐化した売場を無くす様子はない。それが改革の遅れを生んでいるのではないかとさえ思えてくる。



 逆にゆめタウンのように「不要になった衣料品(洗濯済み)を1点でも持ち込む」と「500円の衣料品クーポン券を3枚プレゼント」してくれるところもある。衣料品の苦戦はゆめタウンを運営するイズミでも例外ではないだろう。だから、少しでも販促につなげたいのはわかるが、自主売場の商品改革無しで衣料品が売れるとは思えない。

 消費者の意識はどうか。クーポンを入手したお客が衣料品を購入するのか。売場の様子からして、それは少数派だと思う。むしろ、お客はタンス在庫の処分のしようがないから、無料で回収してくれるのなら、食品や日用品の買い物ついでにという感覚。特に郊外SCなら駐車場が無料だから、車を使えば嵩張る重衣料も気軽に持っていける。

 イトーヨーカ堂の場合はどうだろう。対象商品は婦人、紳士、子供の衣料で肌着、靴下、パジャマ、エプロン、レザー、ダウンは除外。お客一人当たり5点までの持ち込みが可能で、1点につき10%オフのクーポンを1枚もらえる。ただ、クーポンは肌着や靴下、パジャマ、エプロン、リースショップ、催事、イージーオーダー、フォーマルショップ、安心サポートには利用できないなど制約が多い。結局、同社が販売するファッション衣料のみということになる。

 ただ、こちらもお客が衣料品を購入するかは未知数。だから、少しでも売りに繋げるために環境配慮型商品を投入したのではないか。着なくなった衣料品をわざわざ持ち込んでくれるお客は、多少なりとSDGsの意識はあるだろう。ならば、環境にに配慮した商品を開発すれば、販売にもつながるのとの発想だろう。

 イトーヨーカ堂は伊藤忠商事と協業して再生ポリエステル「レニュー」を企画し、今回のキャンペーンでも回収したポリエステル100%の衣料はレニューに再生する。これを使用したフリースはすでに投入されており、毛玉になりにくく、ふんわり素材で保温性に優れる。他にもカットソー製品、スカートなどがある。

 また、自社で回収したペットボトルから再生した素材を機能インナー「ボディヒーター」や学童向けの体操着、毛布にも環境配慮型商品を拡大。表地に再生ポリエステル、再生ナイロンを使ったダウンジャケットなども充実している。さらに製造過程で使用する水の量を抑えたジーンズも企画しており、環境配慮型商品は売場の3割程度に広がっている。キャンペーンで回収したポリエステル以外の商品も廃棄せずに資源として再利用するというから、次の段階では再生コットンや再生ウールのアイテムが登場することに期待したい。

再生衣料にお客が求めるものとは



 百貨店も店頭で回収した衣料を再生して、販売する取り組みに参入し始めた。高島屋は、10月から三陽商会など15社が発売する秋冬物の再生衣料約40種類を取り扱い、店頭やオンラインサイトで販売している。また、回収した衣料は、使用された素材からポリエステルを選別して再生樹脂にし、紡績工場で再びポリエステル糸にする。

 アパレル側も百貨店の高価格帯なら、原材料の上昇分を吸収できて採算もとれると踏む。参加企業が増えればコストダウンが図られるため、最大で100社ほどに拡大する考えとか。高島屋としてもアパレルとタッグを組むことで、自ら販路を提供しながら量産効果で収益を確保し、再生衣料の普及につなげる狙いだ。

 スーパー、百貨店に共通するのは、国を挙げての3R推進と消費者の環境意識の高まりから、再生商品で販売不振の起死回生を狙おうということ。果たしてその戦略は奏功するのか。再生ポリエステルでは、ユニクロもポロシャツを商品化するなど、リサイクルに取り組んでいる。伊藤忠と協業するイトーヨーカ堂と同様に、ユニクロは三菱商事や丸紅などと連携しているので、再生繊維を活用したアイテムの生産には取り組み易い。



 つまり、量販衣料は海外生産のラインに再生衣料が加わることになる。それは生産背景で蠢く商社同志のせめぎ合いとも言える。問題は商品が消費者にどこまで認知され、売れるかだ。例えば、機能インナーはすでに定着しているので、それにペットボトルから再生した素材を使用したと冠をつけたところで、急に売り上げが伸びるとは思えない。スーパーの再生衣料に限ってみた場合、お客が何を求めるかである。

 まずファッション性。これは他に多くの専門店があるので、スーパーには必要とされない。次にデイリーユース。衣料品を日々の買い物に出かけるついでに購入するとすれば、日常に必要な肌着やパジャマ、ルームウエアくらいだろうか。毎日着るので消耗が激しく、買い替え頻度が高いアイテムになる。だから、着心地はもちろんだが、価格も必須条件となる。といっても、安けりゃいいではなく、品質とのバランス。それを再生衣料で実現可能かどうかだ。

 スーパーの場合、買い物客のほとんどが女性だから、ポリエステルなど合繊のアイテム、イトーヨーカ堂の場合では言えば、レニューを投入した意図はわからないでもない。ただ、デイリーユースを考えると、肌に優しく着心地が良くて洗濯も利くことが必須条件になる。だから、再生繊維のコットンやウールのアイテムをもっと投入してもいいのではないか。

 もちろん、オリジナル開発に注力して、スーパーのPB衣料という位置付けになれば、その店で圧倒的な販売量を誇る商品にならざるを得ない。デザインはベーシックでもいいが、品質はNBに比べ遜色なく、価格が値ごろということが絶対条件となる。スーパーが商社と協業する中で、それをどこまで実現できるのかである。

 丸井はPB衣料(商社製造)から撤退した。理由は経営手法を消化仕入れの百貨店型から定期借家契約のデベロッパーに転換したからだが、お客のニーズを吸い上げてPB衣料を企画して収益を上げるのは容易ではなかったことも窺える。イトーヨーカ堂が肝煎りで投入した環境配慮型商品も、期末の値引きセールで処分されるようでは、大量廃棄の元凶となり本末転倒だ。

 スーパー側の衣料品改革はもちろん、バックに控える商社が再生衣料の開発輸入を手がけるだけなら収益と効率を狙う構図は変わらない。だから、商品も売場も格段に進化するとは考えにくい。環境に配慮するためには、まず消費者が最後の最後まで着古してから廃棄できるような商品も必要かと。それらを再生して着心地の良い商品が生まれるのなら、SDGsへの貢献から購入してもいいと思うのだが。

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