HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

10億円投資して、や~めた!

2010-06-17 21:18:11 | Weblog
 一時は若手デザイナーの有望株と言われ、小泉元総理大臣の前でショーを行なった岩谷俊和氏。
彼がける「DRESS33」がブランドを休止することになった。名古屋に本拠を置き、もとは紡績会
社だった興和が全額出資したブランド運営会社「ディーエスファクトリー」が事業から撤退する
ことが引き金のようだ。要はスポンサー企業が「儲からないから、もう金は出さない」と最後通
牒を突きつけたのである。
 DRESS33は、岩谷氏がDRESS CAMPのデザイナーとアトワンズ社退社後、自分の年齢を冠に
つけて設立した。09年春夏のパリコレでデビューし、09年春夏、10年春夏と出演。09年10月に
は東京コレクション・ウィークの一環として東京ミッドタウンでもショーを開催している。
 ただ、どのコレクションも作品は見せる要素が強く、どちらかというと「ゲイ」に好かれるアン
グラなデザイン。華があってミューズ受けするラインとは一線を画していた。それが仇になったか
もしれない。
 パリコレに1回参加するだけで、少なくとも1~2億円はかかる。作品の輸送費、旅費や滞在費、
会場費。何よりモデルやヘアメイクなど現地スタッフの人件費が大きく嵩む。これまで3回のコレ
クションを開催しているから、少なくとの興和は「10億円程度」は出資した計算になる。おそらく、
もう1シーズン引っ張っていたら、さらに数億円の赤字が出たに違いない。
 しかし、それだけの投資に対して、どれだけのリターン(効果)があったかといえば、正直10%
にも満たないのではないだろう。そこで、ファッション業界が抱える永遠のテーマが、「クリエー
ション」と「ビジネス」をどうすり寄せるかである。デザイナーはいつの時代でも自分の思い通り
の作品を作りたいと願っている。そして、その作品が世に受け入れられ、名声を博すことを夢見て
いる。
 しかし、企業側からすれば、夢や名声だけを追ってしまうと、今回のように「やけど」する。そ
れが小さいうちはいいが、拡大すると企業自体の生命を揺るがしかねない。だから、どんなブラン
ド事業もマーケットの狙いとビジネスモデルを見れば、将来性のある投資か、ドブに金を捨てるこ
とになるか。資金を出す側は判断しなければならないのである。
 このほど、ドルガバのカジュアルライン『D&G」も日本市場から撤退すると発表された。日本国
内売上100億円の内、D&Gは30億円程度に過ぎず、主力はファーストラインの「ドルチェ&ガッバ
ーナ」だから、この措置は納得はいく。ファッションを「事業」として口にするなら、民間の経営
者はもちろんだが、行政だってトレンドの勢いや空想に惑わされてはならない。今この瞬間にも行
政が資金を出す愚にもつかぬファッション事業は行なわれている。一部の既得権者による稚拙なプ
ランニングは、永年業界で仕事してきたクールな頭からすれば、愚の骨頂と言わざるを得ない。
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