地方で知り合ったいいミュージシャンが「いざ、勝負
と東京にやってくる」。彼らの本当の実力を知っている私
としては、「サクセスするのでは」と期待するのだけれど、
多くの場合、東京での生活に疲弊して帰って行くことにな
る(確かに、九州の博多から「勝負たい」と東京にやって
きたルースターズや鮎川誠さん達のストーリーも素敵なの
だが)。
地方に比べれば、家賃も食費も高い東京圏で、生活を維
持し音楽活動をするのは、大変な事なのだ。多くの人が、
音楽ではなく、生活の面で挫折して帰って行く。
でも、現在、地方在住のミュージシャンの話を聞いてい
ると、むしろ地方都市で音楽活動をした方が楽しそうだ。
例えば、「東京のように有名ミュージシャンのライブが
ないから、一般の人々も自分達の音楽活動に関心を持って
くれる」「ライブハウスでノルマがない店が多い」「のみ
屋で知り合った音楽マニアが協力してくれたので、ただ
でよい音のレコーディングができる」「地元のラジオ局が
よく番組に呼んでくれる」なんて、何かいい感じではない
か。
東京圏に住む私のまわりは、地方都市から東京に出てきた
ミュージシャンがほとんど。ただ、唯一、1人、東京圏から
音楽活動を考えて地方に移ったミュージシャンがいる。
名前は、キク。現在は、四国の高知市内で活動をして
いる。これからは、彼女のようなアクションが増えてもよい
のではないか。私も、出版の仕事で生業を得る状況でなけれ
ば、地方都市で音楽活動がしたくてしようがない。
彼女の言葉が、心にグサッときた。
「東京の野菜は死んでいると思うよ」
路上音楽情報紙『ダダ』編集発行人・青柳文信