5年程前だろうか。あるビジネス雑誌の取材で、
大阪の飲食店、くいだおれに行った。その時、テ
レビにも登場する女性経営者との話のネタにと、
私の頭の中にある大阪のゆるぎないシンボル、
上田正樹と有山淳司の『ぼちぼちいこか』のCDを
持参した(写真、右上)。
知っている方も多いと思うが、この音源のジャケ
ットは、この店のくいだおれ太郎を挟む上田さんと
有山さんの写真。
このCDの「効き目」もあり取材は暖かい雰囲
気で進んだ。そして、取材も後半、一人の女性店員
が、「あたし、そのCD、聴いてみたい」と。で、
「どうぞ」と差し出して、聴いて帰ってきた彼女の
感想は「ようわからんかった」。
でも、そんなはずはないのである。曲のタイトル
を並べただけも、『あこがれの北新地』『梅田から
ナンバまで』『なつかしの道頓堀』と大阪臭がプン
プン。
それで、戻ってきたCDを開けて中を見ると、
そのパッケージの中には、日本のロックバンド、グ
ルーバーズのライブ盤、『VERY BEST OF THE GR
OOVERS』の付録(写真、左下)。その音源のMC
では、「カモン!博多」なんていうシャウトも入っ
ている。どうりで、ようわからないわけだ。
こんな思い出のあるあの店も半世紀を越える歴史
に幕を降ろした。長い間、お疲れ様でした。そして、
「くいだおれ太郎よ、永遠なれ」。
路上音楽情報紙『ダダ』編集発行人・青柳文信