深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

2023年冬アニメの感想と評価 1

2023-03-11 10:57:44 | 趣味人的レビュー

不作と言われた2023年冬アニメだが、既に放送が終わったものについてネタバレなしで感想と評価を。
ちなみに私の場合、アニメは何より物語が面白いことが重要で、作品全体の評価の少なくとも半分はそれで決まる。逆に萌えやエロといった要素にはさほど興味はないし、作画崩壊も(目に余るほどヒドくなければ)問題にはしない。

以下、並びは50音順で評価はAからE。

『異世界おじさん』

2022年夏アニメとして放送されるはずだったが、スタッフが新型コロナに感染するなどして第7話までで中断。改めて今期、第1話から放送された。ところが公式サイトによると、中国での新型コロナ感染拡大の影響で中国に外注していた部分の制作が間に合わず、第13話の放送がまたまた延期になった(現時点で放送日は未定)。
17歳の時にトラックにはねられて以来、ずっと昏睡状態だったおじさんが目覚めた。そのおじさんが甥のたかふみに語ったのは、昏睡状態だった間、ずっと異世界を旅していたという話だった。異世界の魔法を身につけたまま現世に目覚めたおじさんが語る、異世界での旅の顛末とは?
おじさんは事故に遭う前、セガ・マニアのゲームおたくだった、という設定なので、ゲーム関係に詳しければもっと楽しめたとも思うが、私のようにゲームのことはからっきし、という視聴者でも十分楽しめる(その辺りは『ハイスコアガール』にも通じる)。極端な老け顔ゆえ、美男美女揃いの異世界ではオークと間違われてひどい扱いを受けたり、女心が全く分からず、好意を寄せてきたキャラに敵意を向けられたと勘違いして場をメチャクチャにしたり、と(ややワンパターンではあるが)語られるエピソードが面白いし、それを聞いているたかふみも、実は相当ヤバいヤツだったり…。ww
設定がちゃんと物語の中で生きていて、ギャグアニメとしても振り切るところは思いっきり振り切ってみせるところがいい。だから、その流れで第13話(最終話)まで続けて放送されていればよかったんだけど、第12話から3カ月以上経っての第13話は、作り自体は悪くなかったが、気持ち的に何だか気の抜けたサイダーを飲んでるみたいで、かなり残念だった。
評価はその分を差し引いてB-。

『陰の実力者になりたくて』1期第2クール

「陰の実力者」になることを目指す主人公の暴走は続く。とはいえ、主人公はヒーローではなく「陰の実力者」を目指しているので、みんなの前ではとにかくモブに徹しようとしていて、そのことで、この手のヒーローもののテンプレ展開を解体してみせてしまうところなどは、この作品の特筆すべき点だろう(その辺り、ちょっと『サムライ・フラメンコ』に似ている)。
裏では主人公が中二病丸出しで、やたらとイキってみせているが、そういう部分を隠して表に見えている部分だけを取り出すと、かなりちゃんとしたヒーローもの(というか陰の実力者だが)になっている、というところが見ていて楽しい。そういう意味でこの作品、一言で言えば「世の中を斜めに見まくる」アニメである。そして、そうした点が評価されたのか、アニメの放送と共に原作もバカ売れしているらしく、早々と2期の制作が発表された(私も続けて見るつもり)。
敢えてB級を狙っている作品なので、評価もB~B+。

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』全4話

「ガンダム」宇宙世紀編の続編で、シャア・アズナブルの反乱から12年後の世界を描く。
汚染が加速度的に進む地球では、地球連邦政府が「人狩り」と称する、民間人の宇宙への連行が行われ、それに対して反政府組織「マフティー」が過激な抵抗運動を続けている。そんな中、連邦政府高官たちの乗る地球行きの宇宙船を「マフティー」を名乗る一団がジャックするが、そこにたまたま乗り合わせていたのが連邦軍大佐、ケネス・スレッグ、謎の少女、ギギ・アンダルシア、そして一年戦争を戦った連邦軍大佐ブライト・ノアの息子、ハサウェイ・ノアだった…。
元々劇場版として制作されたものを、全4話のTVシリーズに再編集したもの。だがネット情報によれば、TVシリーズ版ではいくつかの重要なシーンがカットされているらしい(尺の関係?)。そのせいか、見ていてわかり辛い部分が散見された(私は劇場版は未見)。
個人的に面白かったのは、地上で連邦軍と「マフティー」とのモビルスーツ同士の戦闘に巻き込まれた人々のシーンだ。宇宙空間でのモビルスーツ同士のバトルは腐るほど描かれてきたが、ここでは飛び散る火花一つひとつが町と人々を焼き尽くしていく様子が描かれ、モビルスーツによる戦闘の凄まじさが分かるようになっている。
この『閃光のハサウェイ』はこれで完結ではなく、ここから始まる物語のプロローグのような位置づけに見えるので、(この先があるのなら)謎のままだった部分はそこで明らかになっていくのだろう。
物語として中途半端なプロローグだけで作品を評価するのは難しいし、意味があるかも疑問だが、一応この4話だけで評価するなら、絵のよさを買ってB。

『進撃の巨人』完結編(前編)

『進撃の巨人』は恐ろしいくらい、その時々の社会状況とリンクしている。例えば、1期での鉄壁とも言える3重の壁に囲まれた地域に突然、想定外の超巨大巨人や鎧の巨人が出現し、町が蹂躙されている描写には、東日本大震災の津波被害が重なって見えた。描写は、まるでロシアによるウクライナ侵攻を予見していたかのようだった。今回は、自由を目指して戦ってきたエレンが、実は「自由」という観念に呪縛され、誰よりも不自由な存在になっていたこと、そしてそれが第3,4期で戦争に到る経緯の伏線になっていたことが明らかになったが、これもさまざまに読み解くことができる(例えば、奇妙な歴史観に呪縛されてウクライナへの軍事侵攻を起こしたロシアのプーチン大統領を、エレンと重ね合わせることもできる)。原作者である諌山創(いさやま はじめ)の真意がどこにあったのかは分からない。だが作品は時に作者の手を離れて独自の命を持つものであり、『進撃の巨人』はそれ自体、極めてvisonary(予見的)なものになったことは間違いない。
さて、今回の「完結編(前編)」については、ここに来ても『進撃』らしい容赦のない残酷描写で見る者を圧倒してくるのは最高だ。それだけにハンジさんの下りはもったいなかったと思う。あそこはやはり、ミケやマルロやエルヴィン団長の時のようなものであるべきだった。「世界の残酷さ」について語る『進撃の巨人』に、甘い救済は夾雑物でしかない。原作は既に完結していて、その終わり方について賛否両論あることは聞いているが、私は原作を読んでいないので、この先の展開はまだ知らない。ただ願わくば、『進撃の巨人』が最後まで容赦なく「世界の残酷さ」について(そしてまた「世界の美しさ」についても)語る物語であらんことを。
評価は後編への期待も込めてB~B+。


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