深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

すべてがFにならない 1

2015-12-08 20:29:54 | 趣味人的レビュー

ノイタミナ枠で放送中のアニメ『すべてがFになる』(面倒なので、以下『F』)が終わりに近づいてきたので、この記事をアップすることにした。この記事は私の『F』に対する反証である。

この『F』は森博嗣の原作で、N大工学部助教授、犀川(さいかわ)創平と、その研究室に所属する学部生、西之園萌絵(もえ)のコンビが活躍するS&Mシリーズの1冊である。森は当初、S&Mシリーズを『冷たい密室と博士たち』に始まり、第5作の『F』で終えるように構想していたが、物語として地味な『冷たい~』より派手な『F』の方がデビュー作にふさわしい、という出版社の方針で『F』が森の第1作として世に出ることになった。そのため、内容を一部書き改めた上、更に5作を追加してS&Mシリーズは全10作となったという(ほかに関連する短編あり)。

私はもともと森作品は全く読んだことがなくて、先に同じフジテレビでドラマ化されたものを見て、どんな話なのかを知ったくらいだ。ドラマはそれなりに面白く見たが、『F』だけは謎解きで明かされたトリックのあまりのひどさにしばらく唖然としてしまった。

ただ、ドラマだけでは判断できないと思って、後日、原作も読んでみた。原作にはドラマでは省略されていた部分もあって、改めてわかったこともあったが、やはり謎解きには全く納得できない。というわけで、こうしてその反証を書こうと思った次第。


まずは『F』とはどんな物語なのかを述べなければならない。実際の『F』は時系列に沿って書かれてはいないが、ここではできるだけ内容をコンパクトにまとめたいので、時系列に沿った形で書いていく(なお、細かい部分で原作、ドラマ、アニメで食い違う点があるが、その場合は一応原作を優先することにした)。


真賀田四季は、工学博士である左千朗、言語学者の美千代夫妻の長女として生まれた。幼くしてコンピュータの分野で特異な才能を発揮し、10代でハーバード大学で博士号を取得。天才少女として将来を嘱望されていた。だが、14歳の時、両親を刺殺した嫌疑がかけられる。
事件を目撃した四季の叔母、新藤裕見子の証言によると、ナイフを体の前で構え、服を返り血で真っ赤に染めた四季が叔父の新藤清二(左千朗の弟で裕見子の夫。医師)に後ろから抱きかかえられるようにして立ち、その足下には左千朗と美千代が刺されて血まみれになっており、左千朗は「許さんぞ!」と叫んで息絶えた、という。
四季は駆けつけた警察によって逮捕されたが、取り調べではただ「お人形が殺した」という意味不明の言葉を繰り返すだけだった。結局、容疑者は未成年であり、犯行時は心神耗弱状態にあったと判断され、罪に問われることはなかったが、彼女は釈放後、愛知県沖の絶海の孤島、妃真加島(ひまかじま)に建てられた真賀田四季研究所で研究に専念するという名目で事実上、世間から隔離、幽閉されることとなった。

真賀田四季研究所は医師を辞めた叔父、新藤清二が所長を務め、研究所全体は四季が開発したオリジナルOS、レッドマジック上で動くデボラというシステムが管理している。研究所では四季をトップに数人の研究者が研究・開発を行っている。研究者にはそれぞれ住居兼研究室が与えられていて、会議は基本的にイントラネットのバーチャルな会議室で行われる。また所内の荷物の運搬は台車型ロボット、P1によって行われている。

妃真加島は研究所の職員以外は住んでおらず、携帯電話も圏外になってしまうところだが、キャンプ場があって本土からの利用者もそれなりにいる。また、物資の補給などのために本土からのフェリーの定期便が運行されているほか、研究所にはヘリコプターもあって、屋上をヘリポートとして使用している。

四季自身はこの15年間、研究所の自分の部屋から一歩も外に出たことはない(だから、体調を崩した時に診察に入ったことがある、研究所専属の医師である弓永富彦以外は、この15年、四季に直に会った者はいない)。そして、四季の部屋の前には警備担当が24時間常駐して部屋に搬入される荷物1つひとつまでチェックしているほか監視カメラも備えられ、その15年分の映像は全て保存されている。つまり四季の部屋は完全な密室状態にあるといえる。

さて、かねてから四季を「真に天才と呼べるのは彼女だけ」と語っていた犀川は、萌絵からの提案を受けて妃真加島のキャンプ場でゼミ合宿を行うことにする。実はその少し前、萌絵はあるつてを通じて妃真加島に行き、ネットで四季と会話を交わしていた。そこで「またお会いできますか?」と尋ねた萌絵に、四季は「すべてがFになったら」という不思議な答えを返していた。

他のゼミ生をキャンプ場に残して萌絵とともに研究所を表敬訪問した犀川は、そこで事件に遭遇する。副所長で研究所のシステム運用担当の山根幸宏、警備員の望月俊樹、そして弓永医師らが居合わせる中、突然、電灯が非常灯に切り替わり、デボラからの警告音と共に四季の部屋の扉が開き、そこから異様な臭気を発するウェディングドレス姿の女がP1に載せられて現れたのである。その女の顔は、萌絵がウェブカメラを通して会話した四季のものだった。そして、近づいてウェディングドレスをまくり上げた弓永医師は「これは何日も前に死んだ人間の死体で、両手足が切断されている」と告げた。
また、四季らしき死体が現れると同時にデボラに異常が発生し、研究所は外部との通信が全くできない状態に陥ってしまう。

その時、研究所員が新藤所長のことを思い出した。所長はヘリで、アメリカから来日した四季の妹、未来(みき)を迎えに行って戻ってくることになっていたのだ。屋上に向かった面々はまだプロペラを回転させているヘリを見つけ、所長に事の顛末を説明してヘリの無線機を使って警察に通報するように頼み、まだ所内に殺人者がいるかもしれないからと未来を保護しながら下に降りた。
だが、いくら待っても所長が現れないため犀川たちは再び屋上のヘリポートへと向かうが、そこでヘリコプターの中から所長の刺殺体と破壊された無線機を発見する。けれども屋上へはエレベータでしか行くことはできないが、未来を伴って犀川たちが下に降りた後、所長の死体を発見するまで、エレベータは一度も動いていなかった。では犯人はどうやって屋上に出て所長を殺害したというのか? 皆の間に疑念が広がっていく。

外部との連絡手段を失った犀川たちは、監視カメラの映像からウェディングドレス姿の女以外、四季の部屋から出た者はいないことを確認し、まだ殺人者が隠れている可能性が最も高いと考えられる四季の部屋へと踏み込む。
部屋には誰もおらず、中はかなり整然と片付けられていたが、レゴ・ブロックが残されていた。本棚には百科事典などが並んでいたが、なぜかどれも15巻までしか揃っていなかった。
また、部屋には四季が自ら作ったと思しき「ミチル」と名乗るロボットがいたが、ミチルにできることはせいぜいドアのロックを外すくらいで、人間の体から両手足を切断できるような能力はなかった。
切断された手足は見つからなかったが、部屋にあるダストシュートから焼却炉に投じられたのだろうと考えられた。そして、殺されて手足が切断されたのが何日も前なら、灰の中から痕跡を探すのは困難だ、という結論に達した。

翌日、現状を打開するため、山根はOSをレッドマジックからUNIXに切り替えることを決断。その作業は当初、山根が言っていた時刻を大幅に遅れたが、午前11時頃、無事に切り替えが終わると外部への連絡も復活。通報を受けて、萌絵の叔父で愛知県警本部長の西之園捷輔をはじめとした捜査員が研究所にやって来る。そして警察の捜査が始まる中、犀川と萌絵は独自に事件の調査を続け、ついにエレベータの奇妙な動きと監視カメラ映像のトリックを見破るのだが、その矢先に山根がバスルームで胸を刺されて死んでいるのが発見される。


──とまぁ、かなりザックリとだが、ここまで『F』という物語のアウトラインを述べてきた。もっと詳しく知りたい方は原作を読むなり、ドラマを見るなり、アニメを見るなりしてほしい。

長くなるので「1」はここで終了。続く「2」では犀川と萌絵が導き出した推理とそれに対する反論、そして「3」では私自身の謎解きを述べる予定。

最後に、作品のイメージが伝わるようにアニメ版の予告編をつけておこう。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 内なる声 | トップ | すべてがFにならない 2 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

趣味人的レビュー」カテゴリの最新記事