深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

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2013-06-26 00:14:16 | 趣味人的レビュー

今期は視ていたアニメを途中でバサバサ切って、結局残ったのは『進撃の巨人』、『悪の華』、『RDG』の3本だけだった。
で、今回はその中の『悪の華』の話。

だから今回のBGMも、そのED「花 -a last flower-」だ。ちなみに、この曲は原作者である押見修造の大推薦だそうな。


これまで、どれだけのアニメを視てきたのかもう覚えてないが、この『悪の華』の第1話を視たときの衝撃はちょっと忘れられない。いや、頭の方は忘れかけてるんだが、体が覚えている。あの皮膚感覚に残るような異様な感じや、体の奥がゾワゾワする気持ち悪さは、いつまでも消えることがない。

アニメにはそれこそ残酷描写やグロいシーンなどに溢れていたりするが、それらはどんなに絵としてリアルに描かれていても所詮は絵空事だし、それが体感レベルにまで現れてくることは、少なくとも私に関してはほとんど皆無だったのに…。

『悪の華』に感じる気持ち悪さの最大の要因は、このアニメがロトスコープという方法によって作られていることによる。

ロトスコープとは、最初に実際の役者が演技したものを撮影し、それをトレースしてアニメ化する手法で、過去にもこの方法で作られた作品はあるが、コストがかかりすぎるためほとんど行われていない。

それを『悪の華』は使ったのである。その結果現れたものは、実写でもなく普通のアニメでもない、何とも形容しがたい、得体の知れない異様な「何か」だった。

とは言え、それも第3話くらいからは全く気にならなくなってしまったんだけどね。いや~慣れってオソロシイ。


『悪の華』は群馬県桐生市を舞台に、思春期の「痛み」を描く。

ボードレールの詩集『悪の華』(しかも堀口大學訳だぜ!)を愛読し、この詩集を理解できる人間が周囲には誰もいない、と思っている春日高男が放課後の教室で、クラスのマドンナ的存在で彼自身も片思いしている佐伯奈々子の体操服がロッカーから出ているのを目にして、衝動的に持ち帰ってしまう。

罪の意識に苛まれ、発覚する前にそれを教室に戻そうとする春日だったが、佐伯さんの体操着を持ち出す一部始終を見ていた者がいた。同じクラスの仲村佐和である。仲村さんは春日にそのことを話し、後でその体操服を持って図書室に来るように言う。

そして、言われたとおりに図書館に現れた春日を仲村さんは押し倒して服をはぎ取り、持ってこさせた佐伯さんの体操服を無理矢理着せて言い放つのだ。「ズブズブのド変態でしょう、春日君は!」と。そして、その時から春日と仲村さんの奇妙な契約関係が始まる。

仲村さんは自ら語っているように、彼女自身、その中にどうしようもなくモヤモヤしたものを抱えた変態で、そうした思いが共有できない同年代の人間たちからは孤立した存在(あるいは、孤高の存在)だった。そんな仲村さんにとって春日は、自分と同じ匂いを持ち、一緒に「向こう側」に行ってくれるかもしれない存在だったのだ。

ところが、体操服盗難事件がキッカケとなって、春日が佐伯さんから告白されてしまい、春日、仲村さん、佐伯さんの関係は更に複雑にこじれていく。


思春期の「痛み」を描いたアニメには、名作『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(あの花)』があるが、どこかファンタジックな『あの花』に対して、この『悪の華』で描かれるのは、血を流すような生々しい「痛み」だ(だからこそ、ロトスコープがハマるんだろう)。

もちろん、それを視ている者も高みの見物など許されない。同じように心のどこかから血を流すことになるのだ。その時は「花 -a last flower-」がやさしく心を癒してくれるだろう(か?)。


ちなみに、春日が佐伯さんと桐生でデートするシーンがあるが、街が閑散として人の姿が全く見えないのには、ちょっと笑ってしまう。私の元カミさんは桐生の隣の大間々が実家で、だから結婚していた時は桐生にもよく遊びに行ったが、桐生の街はあそこまでさびれてないぞ(笑)。


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