治療院関係のあるポータルサイトで、そのサイトを訪問した人から健康相談を受け付け、サイトに登録している治療家たちがそれに回答する、というのをやっていて、私もその回答者の1人になっている。
相談内容にはいくつかのパターンがあるが、その1つに質問者が症状とともにその原因についても述べているものがある。例えば
「仕事がデスクワーク中心で、もう何年もひどい腰痛に悩まされています」
「姿勢が悪いせいで、常に肩が重い状態です」
「ずっと長時間パソコン作業を続けているために、目の疲れが首や肩に来て、頭痛もあります」
といった具合に。
こういった相談に「それじゃあ…」と運動処方などを回答する先生も少なくないが、私はそういうことには懐疑的だ。だって、そうした症状があるなら既にストレッチや体操など何らかの対策を試してきたはず(悩んでるのにこれまで何もしていなかった、というのはちょっと考えづらい)で、それなのに何ヵ月も、時には何年も、変わらずそれが続いているというのだから。
それに「デスクワーク中心だから」、「肉体労働だから」というが、それなら似たような仕事をしている人はみんな同じような問題を抱えているか、といえばそんなこともない。例えば私は会社員時代は開発業務をしていて、それこそ一日12時間とかパソコン作業をしていたが、肩こりとは全く無縁だった(その代わり子供頃から頭痛、特に偏頭痛にはよく悩まされた)。結局、仕事の形態それ自体は症状発生の引き金にはなるかもしれないが、逆に言えば、引き金でしかないのだ。そして引き金と原因は違う。
だから思うのだ。本人がこれが原因であるかのように書いていることは、本当に原因なのだろうか?と。
以前、本田健さんのセミナーを受けに行っていたことがある。健さんのセミナーの呼び物は何と言っても「Q&A」だ。何しろ健さんは「Q&A」だけのセミナーまでやってるくらいだから。
そして健さんもしばしば言っていることだが、普通セミナーで「Q&A」の時間というのは、講師と質問者だけが盛り上がっていて他の受講者はシラ~っとしていたりするものだが、健さんの「Q&A」は質問者だけでなくその場にいる全員が学びになるように、「立体話法」という方法によって行われる(その辺りのことは過去記事「本田健のQ&Aセミナーに行く」を参照されたい)。
で、その「Q&A」でしばしばあるのが、健さんが質問された事柄に一通り答えた後、質問者が「ありがとうございました」と言って座ろうとした時に放つ、こんな逆質問だ。
「でも、あなたが本当に聞きたかったのはそんなことじゃないですよね。あなたが本当に聞きたいことは何ですか?」
健さん曰く、「本当に聞きたいこと」というのは多くの場合、質問者にとって痛みを伴う内容を含むものだから、人は無意識にダミーの質問を用意して「本当に聞きたいこと」を聞くのを避けてしまう。けれども、本当はそれがその人にとって「人生を変える質問」になるのだ、と。
そうしたことから私は、健康相談の中に書かれた原因(らしきもの)の多くは「本当の原因」をカムフラージュするために用意されたダミーである可能性が高い、と見ている。誰に対してカムフラージュするために? もちろん相談者が自分自身に対して。
腰痛でも肩こりでも頭痛でも、それ以外の症状でも、それを仕事のせい、姿勢が悪いせい、運動してないせい、子供を世話してるせい、椅子の高さが合っていないせい、…など身近なところに責任転嫁しておけば、本人は「体のことにこんなに気を遣ってる」と自己満足できて、その上「本当の原因」に目を向けるのを避けることができる。なぜなら、その「本当の原因」はしばしば自分の一番見たくないところ、一番知りたくないところにあるものだから。
だから私は回答で、相談者がそこに目を向けざるを得ないように挑発してみているのだが…。
さあ、あなたの症状の「本当の原因」は何ですか?
なお、もしかしたら過去記事「本当のところ、なぜ人は病気になるのか」が参考になるかもしれないので、リンクを張っておく。
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