クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の翻訳書4冊目となる『ザ・ハート・オブ・リスニング』(ヒュー・ミルン原著)が出版される。ここ5年くらいは、何かに憑かれたように翻訳をやってきたが、さすがに疲れた。本もあまり売れてないようだし、翻訳稼業は一旦ここで手仕舞いにすることにした。で、私はと言うと、今は以前訳したリドリーの『スティルネス』を読み返している。
『スティルネス』に限らないが、自分が訳した本は前書きから著者紹介まで、それこそ“なめるように”繰り返し読んでいる(そうしないと本として出せないからだが)わけで、『スティルネス』についても「この本を日本で一番読んだ人間」を自負しているが、とにかくわからない本だ。体裁は一応、施術のHowTo本なのだが、この本を読んでもクラニオができるようにはならない。それは例えば、患者のどこにどう立って/座って、手をどう置けばいいか、などという具体的なことが一切書かれていないからである。多分、この本を買った人の多くは、一読して「使えない」と放り出し、本棚で埃をかぶっていることだろう。
だが今回、私のメンターのような人(“のような”というのも妙だが)の勧めでセミナーを始めることになり、急に『スティルネス』をまた読んでみたくなって読み返してから、自分のやっているクラニオが大きく変わったのだ。もちろん、『スティルネス』を読んでいたら自然に変わっていたのではなく、それを読んでいてふと思うことがあり、それを自分に試してみたことによって、なのだが。
それを具体的に述べると…
フランクリン・シルズらの提唱するクラニオセイクラル・バイオダイナミクスでは、人間の体に生じる周期的な律動(これをタイド=潮流と呼ぶ)には、CRI(クラニアル・リズミック・インパルス)、ミッド・タイド、ロング・タイドという階層があり、施術者は自分自身の意識の範囲を切り替えることで、それぞれの階層にアクセスする。しかし、それに対してリドリーは、「私にはギアのように知覚場をシフトできたためしも、望む時にいつでもロング・タイドを感じ取れたためしもない。命の息吹が全てを決めるのだ」と批判している。それを読んで私も、これまで自分が決めていた意識の範囲を患者に一任することにしたのである。
私は著者のリドリーには直接教えを受けるどころか一面識もないので、どこまで彼の考え方を正しく理解しているのか、正直言ってよくわからないが、上記のように変えたことで、クラニオの中で自分が感じ取れるものが以前とは全く変わった。
どうも『スティルネス』は、クラニオ初心者には全く意味を成さない本だが、ある程度クラニオをやってきて、何となくクラニオがわかった(いい意味でも悪い意味でも)と思っている人が、次の段階に進むための契機になる本かもしれない。
──などと思っていたら、何と訳者序文に「他の解説書やセミナーなどで、基本的な概念や施術の型を学んだ上で本書を読むと、そこにはきっと他の類書では得られない多くの気づきがあるはずであり、また、そこにこそ本書を日本語化した意義がある」なんて書いてたんじゃないか。当時(と言っても1年半前だが)はあまり考えもせず書いていたが、「あぁ、あれはこういうことだったのか」などと、今になってその意味が少しわかるようになった。
しかし、『スティルネス』にはまだまだ掘り出すべき多くのものが埋まっている気がしていて、だから私はまだ、こうしてしつこく読み返している。次の宝がいつ見つかるのかはわからないけれど。
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英語がさっぱりの私は、ただ、ただ、尊敬いたします。
分からないながら、東洋思想的な部分を読みながら(クラニオバイオ 1)、東洋思想的なことが西洋の解釈で翻訳されているのを、また、東洋思想の色濃い言語に翻訳って・・・アッタマ痛ぇだろうなって勝手に想像してます。
だって、翻訳されたの読んでもキツイです
著者を知らない人が、勝手に(失礼)翻訳したものが、出版マデされるという例は、ないでしょうしね。
本当、スゴイですぅ
「ハリポタ」を翻訳した松岡佑子さんを思い出しました。
誤訳が多いと言われていたりしますが、すごい読み込んでらっしゃるみたいですもんね。
こういう方面の治療をもう少し追及したい気持ちがありながら、普段の私の治療は力技なので、きっと先生の予想通り本棚で永い眠りにつくでしょう
でも、急に読み込みたくなったり、突然理解出来たりってありますもんね。
私の書棚から、そうやって5年位して急に起きて来た本も何冊かありますから。
翻訳の下手な本は、簡単でも読み難いのもありますが、今思うと、なんでこんなの分からなかったんだろうって思う本も。
それまでのお楽しみです。
コメントなのに長くてすみません
どの本も、本当に最後まで訳せるのかわからない状態で始めてましたので、先のことを考えると、もうドッキドキでした。曲がりなりにも4冊も訳出することができて、一応目標は果たしたかな、と思っています。
>でも、急に読み込みたくなったり、突然理解出来たりってありますもんね。
私の書棚から、そうやって5年位して急に起きて来た本も何冊かありますから。
そうそう。この「寝かしとく」期間って実は凄く大事なんじゃないでしょうか。ちょうど何かが熟成していくような…。
私の本もtenleechanさんにとって、そんな1冊であってほしい、と切に思います。
この手の本は表現がデリケートなので作者の「雰囲気」を上手く伝えるのは難しそうですね
次は『スティルネス』を読んでみたいです
訳した方が「わからない本」という評価をなさっているのですからきっとそうなんでしょう
読む前に心構えができました
何度も繰り返し読むことにします
『スティルネス』は読む人にさまざまな「謎かけ」をしてくる本だ、と私は思っています。ぜひチャレンジしてみてください。
凄いキーワードたっぷりですから。
鍼灸でも、入江FTの入江 正先生や小田気診の小田 一先生の本は、数回読んで、少し解って来る偉大な本ですが、通常は、1度も読破する事無く、批判する方が多過ぎます。
非常に丁寧に書いてあるのですが、観えない事ばかりですから、感覚が育たないと理解出来ません。
特に、入江先生は、「謎かけ」をしてくるので、初心者には厄介ですが。
しかし、蒼穹堂先生・入江先生・小田先生は、治療家に夢を与えて下さいます。
治療が楽しくてしかたなくなります。(不純ですね。)
ブログ更新が楽しみなんですよ。
>治療が楽しくてしかたなくなります。(不純ですね。)
いや、それこそ治療家の「性(さが)」ってヤツでしょう。詰まるところ、治療家というのは「それだけ」の存在ですから。
これが第一印象です
たぶんストレートに訳したらなんのことかわからなくなるんじゃないでしょうか?
正直、私の今の能力ではこの世界に踏み入ることすらかなわないのではないかと思います
それが一番の「気づき」でした
それでもなおよかったのは向こうに何があるかがおぼろげながらでも見えてきたことじゃないでしょうか?
せっかくですからもっと時間をかけて「スティルネス」を楽しんでみることにします
>よくこんなもんを訳したなぁ・・・(@@;
はい、訳した本人もそう思います。現在も時々読み返しては格闘してます。
はっきり言えば、『スティルネス』は普通の意味では、いわゆる「治療のHow-to」本としては失格ですが、読みようによっては、そんなHow-to本では到底到達し得ない「何か」を垣間見させてくれる本かと。
もう少し『スティルネス』が読めるようになったら、「『スティルネス』を読む」とかいうセミナーでもやってみようか、と密かに考えていますが、いつになることやら…。
何度も読み返し友人に、返そうとしたら、あげるよ、と、言われて。
それから、また何回か読み直し、僕はクラニオの、コースは入れなかったのですが、ホリスティックマッサージの、コースの、中にクラニオの、さわりが、あった。
それだけを、頼りにたくさんの人に、施術してきて、日本でウィズダムインザボディ、バイオダイナミクス、1.2 そして、スティルネスに、会った。あれから5.6年、僕のセッションは、スティルネス化しているのでは、ないかな?と、
もちろん、僕はクラニオを、まともに習ったこともなく、ただ、本を見ながら、22年ほどクラニオと、思われるマッサージ?セッション?出会い?をしながら生活し、子供を養ってきているのだが、高澤さんか、コマラギータの、ブログには、何回か書いたかな?
感謝しています。それだけが、言いたくて、
古い日記を、見ていたら、お客さんから、こんなのが来ていて、
リラクゼーションワンダー天楽(あまら)
2005-06-01 23:59
ちょっとブログお留守してました。
すっごい久しぶりに天楽(あまら)+バンブー茶館へ行って来た。今日は天楽(あまら)のことを書いてみよう。
天楽(あまら)のおんちゃんがチラシを手作りしちょった。アナログのチラシって気持ちがストレートに大切に伝わって良いなって思う。あまらさんは「やっとこの意味がわかってもらえる時が来た。」って言いよった。私はわかっちゅうかどうか怪しいけど・・・
チラシにはこう書いちょった。
----------------------
おいいしいものを味わうように、
好きな曲を聴くように
ゆっくりと散歩に出かけるように
心と身体のやすらぎのために・・・
身体にやさしいマッサージをどうぞ。
----------------------
あ~すっごい優しいな~と思うた。
あたり前のことやん!マッサージやもん!癒されて何ぼよってね。って思う人もおるかも知れんけど、そうじゃないがよね。
おいしいもの食べる事、好きな曲を聴くこと、ゆっくりと散歩に出かけることって普通の生活の様で、意外とそれができてない、マッサージなんかはなかなかねぇ・・・って思いよって。
実際行く時は張り詰めた緊急SOSの時にだけ行きよった(意外にも私でもそんな時がすっごいたまにあったりする)。
元気で健やかな時に美味しいものを食べたり、好きな曲聴いたり、散歩したりする事は生活の中でこの上ない幸せやなぁと今思う。ホクホク、ウホウホなる。
それとおんなじで元気な時にマッサージするとスペシャルに幸せになって、勝手に周りの人も巻き込んで幸せになれそうな気がする。いやなるねきっと。
そんな事をあまらのおっちゃんに教えてもろうた。
おっちゃんからはそんなパワーとかエネルギーとかを自然にもらう。
「頑張らんでもええねん!頑張るからいかん」って言うてもろうて そうかって その時は思う。
気負わず楽しくできることを心がけて、息を自然にしてみんなが健康にハッピーに過ごせたらいいよね。
何かタラタラワケわからんなってきたけど。そういうことです。
では巷で噂のマッサージ屋さん リラクゼーションワンダー天楽 <あまら>ホームページ見てね
これってたぶん、スティルネスを僕ふうに、捉えてやらさせてもらってるんやないかと、
ありがとうございます。 あまら
昔の記事にこうしてコメント下さり、ありがとうございます。
『スティルネス』は残念ながら諸般の事情により絶版になっていますが、こういうふうに使ってもらえているんだ、というのがわかって、うれしいです。
私もクラニオには特定の師匠がおらず、本を訳しながら、そこに書かれていることを自分なりに解釈して、試行錯誤して勉強してきたので、天楽さんとポジション的には同じです。
これからも野良クラニオの同士として、ゆる~く頑張っていきましょう。