深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

時を駆ける治療家

2006-04-11 19:32:00 | 症例から考える
治療では、一部には「今は問題ないけれど、少し前に××のような症状が出て、心配になって来た」というケースもあるが、その対象となるのは、あくまで現在の症状である。しかし、それには遠い過去に起こった出来事が関わっていることがある。そしてそれは、大きな事故や手術、あるいは大地震などに遭遇したこととは限らない。そのため、治療ではその原因を求めて過去へと遡っていく必要が、しばしばある。

そのためのツールとして、ウチが用いているのが、時遡行(ときそこう)という手法である。時遡行とは、「過去に生じた問題が現在のその人に影響し、かつ現時点での治療では効果がない時、その問題が生じた過去の時点にまで遡り、そこで治療を行う」というテクニック。…と言うと、「ああ、退行催眠のことね」と思われるかもしれないが、それとは方法論が全く異なる。

時遡行でも退行催眠でも、恐らく、そこで用いるのは、脳に蓄えられた、いわゆる「記憶」ではなく、細胞記憶や骨記憶といった「身体記憶」なのだと思うが、退行催眠が相手の意識を眠らせた状態で、術者がある種、恣意的、強制的に「身体記憶」にアクセスしていくのに対して、時遡行では相手の体にお願いして、相手自身に「身体記憶」にアクセスしてもらうのである。

この間診た、ある患者は、旅行中に急に体調を崩して病院に駆け込んだ、という。便が出なくなり、病院に着いた時は血圧もかなり上昇し、発熱もあった。病院で浣腸を受け、薬を処方されて飲んだら、症状はかなり改善したが、旅行から戻った直後に全身の浮腫(=むくみ)や強い喉の渇きがあった、と。ウチに来た時点では、それらの名残がいくらか残っている程度だったが、過去に戻って治療しておく必要があると判断し、時遡行を行った。

約80時間前(多分、病院に駆け込んだ頃)の体の状態に遡って診たところ、血糖値が上がり、その影響が横隔膜にまず強く現れ、それが上へは心膜を介して心臓へ、下へは腹膜を介して腸へと及んでいたことがわかった。この人はもともと糖尿病の傾向があるのだが、旅行中に何らかの理由(さすがに、それが何なのかまではわからなかったが)で急激に血糖値が上昇し、それによって病院に駆け込むような状態に至ったようだ。

このような治療を「バカバカしい」と斬って捨てるという考え方も、もちろんアリだと思う。しかし、ウチのようなところには、いくつもの病院や治療院をまわって、それでもダメだった、という人が少なからずいる。少なくとも、ちょっと揉んで電気をかければ治ってしまうような人は、まず来ない。そういう人たちを治療にするには、こういう方法も手札として持っていなければならないのである。ま、実際、使えるしね。

で、今日も治療家は時を駆ける。

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