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何清漣:中国における統治の暴力化(1)

2007-01-15 19:16:14 | 中国異論派選訳
国家の役割の変質:政府行為の非正当化傾向分析
何清漣

原載:当代中国研究 2006年第3期 通巻94期
http://www.chinayj.net/
StubArticle.asp?issue=060302&total=94

一、90年代末期以降の中国の人権侵害の核心:土地と住宅の権利
二、市街地再開発:立退き住民の悪夢
三、土地を失った農民の絶望的抵抗
四、地方政府はなぜヤクザを使いたがるのか?
五、強制土地収用・立退きプロセスから見た全体主義政治の下での「法治」の実質

【編者の説明】この論文は作者が「中国人権」のために書いた研究報告『中国政府行為のヤクザ化』の第五章と結語である。本旨は「中国人権」の許可を得て掲載した。文章の表題と組み立てについて編集部で若干調整した。

 この研究報告の版権は「中国人権」に帰属し、その目次は「中国人権」のホームページ
(www.hrichina.orgとwww.zhongguorenquan.org)
に掲載されている。研究報告の全文は「中国人権」が公表する予定である。

 
 1990年代中期以降、中国政治に無視することのできない変質が起きている。ひとつはヤクザ勢力が大きくなり、かつ政治領域に浸透し始めたことである。もうひとつは、基層政治権力が日増しに自己利益追求集団に堕落していることである。この二つの大きな変質は農村政治権力のゴロツキ化、ヤクザ化をもたらし、それにともなって中国の政府行為のヤクザ化をもたらしている。政府行為のヤクザ化というプロセスと中国の公権力の縁故化・政治暴力の公開化と普遍化は同一歩調で進展し、互いに支えあっている。このプロセスは「統治手段の非正当化」と概括することができる。統治手段の非正当化は主に政府の日常行政がますます不当な暴力に依頼するようになっていることに現れている。この政治的特徴は農村の土地強制収用と都市の再開発のための立退きのプロセスに非常に顕著に現れている。

 中国は1978年の「改革開放」以降、2回の大規模な「土地囲い込み運動」を経験している。2回目の「土地囲い込み運動」は1999年から始まった。2回目の囲い込み運動は、都市においては大規模な強制立退きとして、農村においては大量の耕地の強制収用として現れている。政府の深刻な腐敗のために、立退きと収用は政府職員が権力を利用してタカリをする主な領域となっている。

 農村の土地収用と都市の立退きはいずれも民衆の生存権を剥奪する。中国人は不公平と抑圧に耐えることに慣れているとはいえ、生存資源の侵奪は被侵奪者に譲歩の余地を残さない。したがって、権利擁護闘争はとりわけ激烈なものとなる。このような反抗事件は毎年増加しており、2003年は5万8千件[1]、2004年は7万4千件[2]、そして2005年は8万7千件にのぼった[3]。その大部分は土地と住宅の侵奪がもたらした反抗である。土地を失う農民と立退き住民の粘り強い抵抗に逢うと、地方政府はヤクザの力を借りたり、自らヤクザのやり方を用いて、抵抗者を黙らせようとする。

一、90年代末期以降の中国の人権侵害の核心:土地と住宅の権利

 2001年から2004年にかけて、中国の不動産業は中国の10大暴利業種のトップであり、2005年には第3位に落ちたものの、暴利業種からこぼれてはいない[4]。業界関係者の分析によると、全世界で不動産業の利潤率は一般には5%ぐらいであるが、中国の不動産業の平均利潤率は15%以上になるという。フォーブスの富豪番付上位500名中不動産業者はわずか30名ほどであるが、中国の大富豪の職業は不動産業界に集中している。中国フォーブスが2002年度に発表した100名の富豪のうち、なんと40名以上が不動産関係だった。そのご、不動産業に従事する富豪が何人も逮捕されたとはいえ、フォーブスの『2003年中国内地富豪番付』によると、不動産関係者は35名にのぼる。他の業種と比べると、不動産業の富豪の多さは、ずば抜けている。このことからも、中国不動産業が「暴利」をむさぼっているという説が根も葉もないうわさでないことを証明している。

 中国の不動産業はあたかも錬金術のようである。わずか20年余りのうちに、常軌を逸した速度で多くの億万長者を生み出してきた。その長者の多くは貧しく学もない状態から始め、年齢も他の業種と比べて、非常に若い。いわゆる「問題富豪」の楊斌、周正毅など、いずれも不動産業で巨額の富を蓄積している[5]。このことは、次のような疑問を引き起こす。中国の不動産業はなぜこんなにも高い利潤率を確保できるのか? 中国の不動産業は本当に錬金術なのか? その回答は疑いもなく良識ある人をがっかりさせるだろう。中国の不動産業の暴利は主に地価の安さに依存しており、その地価の安さは完全に略奪に依存している。農村においては農民の土地に対する権利の略奪であり、都市においては立退き住民の住宅地の略奪である。そして、土地収用、立退きに関係するこの略奪プロセスの主役はなんと各地の地方政府である。

1、何が地方政府を農村土地収用と都市立退きの主役にさせるのか?

 地方政府が土地収用と立退きの主役になる主な原因は土地譲渡金が地方政府の財政収入の主要ルートだからである。他の国の不動産業と異なり、中国の不動産市場の主役は不動産開発業者と購入者のほかに、土地の原所有者(土地を失った農民と立退きにより住宅を失った都市住民)と原所有者から土地を略奪した地方政府が関係してくる。そして、地方政府の上級部門である中央政府はこれら利害関係人の最終的な、しかも非常に不公正な仲裁者の役割を演じる。

 上述のいくつかの役割のうち、地方政府の役割がもっとも奇妙である。一方でで、それは土地の購入者であり、農民の手中に分散した土地を地方政府が各種の手段を通じて「買い上げる」。もう一方で、それは土地の売主であり、開発業者が土地使用権を取得したければ、政府から買わなければならない。地方政府が間に立って買ったり売ったりしなければ、その土地は「商品化」されえないのである。

 地方政府はなぜかくも熱心に土地売買にかかわるのか? カギはこの売買の間に巨大な差額が生じることだ。

 公的には、これは地方政府の主な財政収入源である。統計によると、2001年から2003年までの期間、地方政府の土地譲渡収入は9,100億元に達している。「積極財政政策」をとった1998年から2003年までの5年間に、中国が発行した国債総額は9,300億元にすぎない。土地はすでに地方政府の名実ともに「第二財政」となっているのだ。一部の市・県・区の土地譲渡収入は財政収入の半分を占め、ときには予算外収入としての土地譲渡収入が同時期の財政収入を超えている[6]。私的には、役人たちが土地譲渡の過程で私腹を肥やしているのは、中国社会では公然の秘密である。土地開発業者が儲けようとすれば、最初の重要な段階は政府の役人との協力であり、そこから土地開発は必然的に汚職多発分野となる。汚職役人たちは不動産取引からどれぐらい儲けているのか? 二つのデータがその証拠となる。一つは、不動産業内部で見積もった賄賂コストである。不動産業関係者の話によると、1件の賄賂(取引)のコストが土地価格の30%を占めるという。もう一つは、汚職案件と土地の関連性である。国家会計検査署の対外的な説明によると、中国の「問題役人」の80%以上が土地関連である[7]。国家会計検査署が会計検査結果を毎年公布するようになってから、土地会計検査は会計検査署にとって汚職のブラックホールとなっている[8]。

 政府は購入と販売のプロセスでどの程度の利益を得るのだろう? 上述の3年間に9,100億元という数字はまだ十分具体的ではない。ここで、北と南の事例を一つづつ上げよう。北京市六圏村が収用された土地は北京市南第4環状線に近接していた。政府が土地収用するとき、村人には平米わずか117元が支払われたのみであった。しかし、政府が入札で販売した時の落札額は6,750元であった。ほとんど「ただで土地を収用した」ようなものである。もしも、政府の手中に権力がなければ、こんな強盗のような売買ができるだろうか[9]? 広東省従化市政府が暴力を使って小海区の商店を立ち退かせたのも、同様に利潤が動機である。従化市の当該区域の建物の価格は、平米13,000元で売り出すことができるが、政府が商店主に補償した価格はわずか平米2,500元であった[10]。

 一体どれだけの立退き再開発利潤が汚職役人と開発業者の懐に入っているのか?

 北京を例に取ると、各種立退き再開発の中で、少なくとも3項目の巨額の金額が流失し、開発業者と汚職役人の懐に入っている。まず、中央政府に納めるべき「国有地譲渡金」は、「危険家屋対策」プロジェクト費用として無償で開発業者に分け与えられる。第二に、立ち退き対象者に支払われるべき都市立退き費は開発業者に横領される。例えば、開発業者が政府から土地を分け与えられてから、自分では金を払わず、投資を募り投資業者から一戸当り約40万元の都市立退き費を獲得する。立ち退き対象者を郊外の住宅に「合理的に配置」するだけでよい。それらの住宅は大部分が農村の(郷・村の)公有地に開発された不法建築であるか事業所の共同建築ビルであり、当初立ち退き対象者の代わりに3年分の家賃約2万元を支払えば、その後は全くかかわらない。しかし、この費用は分譲住宅のコストに含めてしまい、暴利をむさぼり、帳簿をごまかして税金も逃れる。第三に、私人土地使用権補償である。この費用は法律に明確な規定があり必ず支払わなければならない。しかし開発業者は『北京市「都市住宅立退き管理条例」実施細則』の執行に名を借りて、立退き対象者にこのような補償費用があることを認めない。いっぽう、分譲住宅販売のときには、この費用は住宅価格の主要部分を占める。すなわち、販売広告の中でおおっぴらに「絶好の立地」の「無限に上昇する」土地使用権の価値を宣伝する。たとえば、西城区・東城区などでは、平米建築面積の価格はややもすれば1万元以上、ときには数万元になり、それに容積率もふくめれば、建築コストはごく一部にすぎず、最も価値のあるのは物件の立地ということになる[11]。

 これらの金額はまとめるといくらになるのか? 中国ではそれは永遠に明らかになることはないだろうが、北京市の関連データが参考になる。専門家の試算によると、1994年から2003年までの10年間に、北京市で立退き・土地収用でブラックホールに流れ込んだ国と住民の財産は約1380億元になるという。これについて、北京市の各区政府は否定も肯定もしていない[12]。

2、中央政府はなぜ地方政府の熱狂的土地収用を制限しないのか?

 土地収用と立退きはすでに中国社会の不安定化の主な原因となっており、地方政府はこうした深刻な人権侵害行為を止める気配がない。しかし、中央政府はこれに対し見て見ぬふりを続けている。なぜなのか? 原因は簡単である。1994年に「分税制」を実施してから、中央政府はすべての「うまみ」のある税種はすべて自分のものにし、「上がり」の少ない税種を地方政府に振り分けた。結果、地方政府は土地譲渡金収入に頼って生存と運営をせざるを得なくなったのだ。

 1994年の税制改革後、中央と地方の税務体系は分立し、税種を分けてそれぞれが別個に徴収するようになった。主要税種は中央に、土地譲渡金を含む細かな税源は地方に割り振られ、若干の「上がり」の多い税種について中央と地方が分け合うこととなった。地方政府は自ら地方税システムを作り、地方税の徴収を行う。「分税制」を始めたばかりのころは地方財政はまだ維持できたが、経済情勢の変化に伴い、地方財政の税源はどんどん厳しくなった。1990年代中期以降、地方国有企業が相次いで破産し、地方企業所得税と上納利潤が徐々に枯渇した。住宅の商品化・高等教育と医療の商業化などの「改革」にともない、民衆は日常消費支出を引き締めざるを得なくなり、そのため消費財市場が不景気となり、営業税収入が相対的に萎縮した。地方財政に割り振られた個人所得税の徴収範囲は極めて限られており、地方財政を支えることはできない。地方政府にとっては、財政収入を拡大できる空間は農民に対する税や税外徴収金である。そこで、中央政府が多年にわたりしばしば禁令を出しているにもかかわらず、各地の地方政府はいろいろな名目を立てて、正規の税金(農業税、特産税、耕地占用税、税など)のほかに、各種の徴収金を強制徴収している。多くの郷鎮政府にとって、これら費用の督促が主要な日常業務となっている。財政収入を得るために、これら督促はしばしば暴力を伴い、そのため、郷・鎮政治権力は日ごとに地方の有力者の手に握られ、ごろつき化・盗賊化・ヤクザ化の傾向は非常に顕著である。

 しかし農民からの搾取には限界があり、財政収入を拡大するために、地方政府は矛先を農民の最後の生存資源である土地に向けた。1990年代後期からのこの「囲い込み運動」の目標は主に農民の生存の糧である耕地と都市の「旧市街地」である。地方政府は土地の譲渡により巨額の土地増値税・国有地有償譲渡収入を得ることができ、これらの収入は地方政府の日常運営を支える財政的支柱となる。土地開発を制限することは、すなわち地方政府の財源を制限することであり、これが中央政府が地方政府の土地略奪について長期にわたって知らぬふりをしている重要な原因である。なぜなら中央政府が地方政府の財源を切れば地方政府はいろいろなやり方で中央政府の命令に抵抗するだろうから、地方政府の収入源を切りたくないからである。このような状況は、農業税削減のときに発生したことがある。

 農民の耕地の囲い込みであれ都市住民の住宅の囲い込みであれ、第二次「囲い込み運動」の隆盛は、農民や立退き住民の利益をはなはだしく侵害しており、多くの人々の生存状態が著しく悪化している。土地収用のときに農民と立退き住民には必要な経済的補償はしていると主張されるが、一般には補償基準は大幅に引き下げられ、巨額の土地収用費用を地方政府が盗用する。ゆえに、農民はたいていの場合土地収用の結果貧困に陥る。また、多くの地方の農民は一文の補償も得られずにふるさとから追われる。浙江省は経済が比較的発達し、土地を失った農民に対する補償は全国平均より若干高い。では、浙江省の農民の土地収用に対する不満は他の省より低いだろうか? 浙江省統計局農村調査隊の調査によると、わずか6.8%の農家が土地収用に満足しており、22%の農家は補償基準が非常に低すぎる、53.2%の農家は補償が低すぎると回答している[13]。浙江省においてもこうなのだから、その他の地方では推して知るべしである。

3、2006年土地調査運動の中央政府の意図は暴利の分け前獲得

 土地収用が引き起こす社会矛盾が日増しに増えることにともない、中国政府は土地違法事件の数を毎年発表するようになったが、その調査と処罰は厳格ではない。国土資源部の不完全統計によると2003年に全国で処分された土地違法案件は数年に渡るものも含めて16.8万件にのぼり、738人が党紀・政府規則違反処分を受け、134人が刑事責任を追及された[14]。ここで公開された案件総数から推測すると、すべての土地違法事件にたとえ一人だけが関与していたとしても、16.8万人が責任を追及されたことになる。しかし実際には、このように多くの土地から利得を得るものの中で、1%未満の違反者だけが、処分を受けたり「刑事責任」を追求されたりしているだろう。そのことから、「違法コスト」は非常に低く、土地囲い込みによって得られる利益は非常に大きいことがわかる。処罰率がこのように低ければ、中央政府が数年に1回行う「大規模調査」は汚職には何の抑制作用も及ぼさないだろう。

 2006年6月上旬、国土資源部は全国土地法執行会議を開催し、土地汚職現象が非常に深刻であると宣告し、省級の国土資源行政主管部門に対し2006年6月中に3件以上の重大な土地違法案件を摘発し、年末までに8件を摘発するよう明確に要求した。国家会計検査署が毎年反汚職の一人芝居を演じるのとは違って、今回の国土資源部の行動は中共中央の後押しを受けていた。『人民日報』や新華社が命を受けて「土地法執行の嵐」を大々的に宣伝した。摘発件数ノルマが与えられ、また数年間毎日たくさんの収入のあった「土地の神」も暴利をむさぼったために役所の同僚に嫉妬されてもおり、加えて「土地の神」が囲い込んだことによって得た利益が人々の嫉妬を買ったため、一部の地方政府は摘発に手心を加えることはなかった。反汚職任務が下された当月には、北京市副市長の劉志華[15]、天津市検察院検察長の李金宝、天津市副市長の陳質楓および福州土地事件の役人グループ[16]などが土地問題で失脚した。

 しかし、もしも中国政府の今回の粛清の目的が反汚職であり、地方政府の農地略奪を阻止することであると考えるならば、それは完全に国土資源部の告示の意味を取り違えている。中央政府は今回の土地違法行為粛正にあたって2つの理由を述べた。一つめの理由は中国の耕地面積は生存の最低ラインに近づきつつあり、2005年10月31日時点で中国大陸の耕地面積は18.31億ムーであり、一人当り耕地面積は前年の1.41ムーから1.4ムーに減少し、世界平均水準の40%にも及ばないことである。この考え方から行くと、中央政府は土地開発の停止を命じるべきであろう。中国は未だに小規模自営農が総人口の70%近くを占める国であり、十分な耕地がなければ、多くの農民は生存がおぼつかなくなる。しかし、国土資源部はこれ以降土地開発を停止させるとは約束しておらず、土地処分の批准権を中央に移すと言っている。この発表は第二の理由に関係する。それは、重大な土地違法行為はほとんどすべて地方政府あるいはそのリーダーが関与している。本来監督責任のある地方政府が違法行為の主体となっている。そのため、今後土地処分批准権限は中央政府に帰属するという。言外の意味は、土地開発は引き続き行い、ただ今後は中央が決め、地方政府は外すというのだ。

 国土資源部は今回の「土地法執行の嵐」の真実の目的を隠してはいない。それはつまり、「中央も土地収益の分け前を得る」ということだ。土地の強制収用はたしかに多くの民衆の生存権を剥奪することになる。しかし、社会の下層民衆が搾取されることには、中国の各級政府は一貫して無頓着であり、いささかの同情も示したことはない。2006年の土地検査運動の背後には、中央が心をときめかせる巨額の土地譲渡収入があった。そこで、中央政府はまず大々的に汚職官僚を取り締まり、地方の諸侯を震え上がらせ、そのうえで「土地処分批准権の中央への帰属」を打ち出したのだ。もちろん、地方政府をおとなしく服従させるのは簡単ではない。90年代初頭、国務院は『国有地使用権有償譲渡収入管理に関する通知』を出し、「国有地使用権譲渡収入のうち40%を中央に上納し、60%を地方が取得すると規定した。しかし、後に地方政府の都市建設費用取得の便宜のために、中央財政の地方土地譲渡金の分配比率は低くなり続け、最後にはあいまいになってしまった。」[17]。今になって古い問題を持ち出した中央政府の狙い通りになるかどうかは、もう少し様子を見なければならない。

 たとえ、中央財政が土地譲渡金を得られなくても、土地審査の過程でたかる権力は地方役人から中央の役人の手に移る。それ自体が土地収益の再分配を意味する。誰が中央政府の役人に地方政府の役人より必ず廉潔であることを保証できようか? 前国土資源部部長の田鳳山の汚職事件が十分に問題を説明している。実際のところ、中央各部の権限が大きくなればなるほど、汚職の程度もはなはだしくなる。近年、中央は前後して「銀行業監督管理委員会」「証券監督管理委員会」「保険監督管理委員会」を成立させた。その本意は銀行、証券、保険業の「大鼠(汚職分子)」を監視することだったが、結果はこれら部門の監督権限が役人たちのたかりの機会と資本に化けてしまった。汚職の「食物連鎖」が猫と鼠を「みな親類」にしてしまったのだ。

 実際、中国の土地が汚職役人を養う温床となったその根源は、土地所有権が国家に帰属し、地方政府が土地売買に介入する制度的な隙間を作ったためである。土地を私有化すれば、政府が勝手に民衆の農地や住宅を奪う道を塞ぐことができる。この方法を除いて他に効果的に土地収用にからむ深刻な汚職を断ち切る道はない。現在、このような分け前狙いの「土地法執行の嵐」は中央政府が土地譲渡収入から正々堂々と横取りできるようになることだけで、汚職防止自体には何の効果も発揮しない。

[番号]に示された出典については原文参照。