『蒲生邸事件』
宮部みゆき、2000、『蒲生邸事件』、文藝春秋(文春文庫)
本書は、1997年に日本SF大賞を受賞したタイムトラベラーものの作品である。
SFのタイムトラベラーものの多くは、タイムトラベルの矛盾「自己が改変した歴史がどのように自己に反映されるのか(あるいはされないのか)」というところに、商店が当てられがちなのだが、本書は、そうした部分について、もう少し、なんとかうまく説明してほしいとは思うものの、本書の焦点が、そうしてポイントにない事がわかるのでむしろそれは望ましい。
本書が主眼としているのは、歴史を生きる我々自身にある。私たち一人一人は、これまで学んできた「歴史」の中の有名な人物と同様に、あるいは、それ以上に、歴史を生きる存在であり、現在も刻々と歴史の中を生きているということを、本書で描こうとしているようだ。
過去に遡行し、歴史的な事件に遭遇したトラベラーは、歴史を変えようとしても、歴史が意識を持ったように類似の事件を引き起こしてしまって、トラベラーの意思にはそぐわないで歴史が残されてしまう。しかし、トラベラーも、過去に遡行するという歴史的経験の中で、少なくとも、その時点で生きたという証拠は残す事が出来る。それは、「歴史」を改変したという証拠にではなく、「歴史を生きたという意識」において。「ニ・二六事件」を題材にして、架空の蒲生大将邸に起きた事件を取り上げた本書は、歴史的事件における個人にこそ重要な意味がある事を喚起するという意味で、面白く読んだ。また、時に心痛んで読む事になった。
本書は、1997年に日本SF大賞を受賞したタイムトラベラーものの作品である。
SFのタイムトラベラーものの多くは、タイムトラベルの矛盾「自己が改変した歴史がどのように自己に反映されるのか(あるいはされないのか)」というところに、商店が当てられがちなのだが、本書は、そうした部分について、もう少し、なんとかうまく説明してほしいとは思うものの、本書の焦点が、そうしてポイントにない事がわかるのでむしろそれは望ましい。
本書が主眼としているのは、歴史を生きる我々自身にある。私たち一人一人は、これまで学んできた「歴史」の中の有名な人物と同様に、あるいは、それ以上に、歴史を生きる存在であり、現在も刻々と歴史の中を生きているということを、本書で描こうとしているようだ。
過去に遡行し、歴史的な事件に遭遇したトラベラーは、歴史を変えようとしても、歴史が意識を持ったように類似の事件を引き起こしてしまって、トラベラーの意思にはそぐわないで歴史が残されてしまう。しかし、トラベラーも、過去に遡行するという歴史的経験の中で、少なくとも、その時点で生きたという証拠は残す事が出来る。それは、「歴史」を改変したという証拠にではなく、「歴史を生きたという意識」において。「ニ・二六事件」を題材にして、架空の蒲生大将邸に起きた事件を取り上げた本書は、歴史的事件における個人にこそ重要な意味がある事を喚起するという意味で、面白く読んだ。また、時に心痛んで読む事になった。
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