2022年04月13日の読売新聞夕刊(4版・西部版)3面に、アメリカの物価高と、バイデンのセットで載っている。(番号は、私がつけた。)
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【ワシントン=山内竜介】米国のバイデン大統領は12日、同日発表の①3月の消費者物価指数上昇率が前年同月比8・5%と約40年ぶりの伸びとなったことについて、②「70%はプーチン(露大統領)が引き起こしたガソリン価格上昇によるものだ」と述べた。ロシアのウクライナ侵攻に伴う燃料価格の高騰にいらだちをあらわにした。
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記事の書き方からわかるように、これは①3月のアメリカの物価が8・5%上がった②その原因をバイデンが「プーチンのせいだ」ということだが、①の方は既にニュースとして報道されているので、見出しは「物価高、70%プーチンのせい、バイデン氏主張」ととっている。
戦争も、物価高も、みんなプーチンが悪い、と言いたいのである。戦争はたしかにプーチンが悪い。しかし、物価高は、一概にプーチンだけが悪いとは言えない。貿易が機能せず、いろいろなものが不足しているのはたしかだが、輸入に頼らない国家を作り上げれていれば、ロシアからいろいろなものが輸入できなくなったからといって物価が上がることはないだろう。
で、ここから思うのだが。
アメリカは石油も農業産品も輸出している。(輸入もあるだろうけれど。)国土も広ければ、資源も多い。人口だって、多い(労働力が不足するということはないはずだ)。そういうアメリカで物価が高くなるということは、どういうことなのだ。
というよりも。
資源大国と言えるアメリカで物価が高くなるなら、資源をもたない国の物価はもっと高くなるだろう。日本の場合、8・5%でとどまるかどうかわからない。
フランス大統領選は、物価高の影響でマクロンが苦戦している。新聞では報道されていないが、スペインでも物価はどんどん上がっている。(数人の友人に聞いただけだから、厳密な情報ではないが、私と同世代の男性が実感しているくらいだから、あらゆる商品が値上がりしているのだろう。)
だから。
今回のパイデンの「物価高はプーチンのせい」というのは、単にアメリカ国内向けの発言ではなく、外国向けのメッセージでもある。もっと極端に言えば、バイデンが率先して「物価高はプーチンのせい」とアピールするから、各国とも物価をどんどん上げてしまえ、そうすることで反プーチン感情をあおれ、と言っているのである。物価高に対して(価格転嫁に対して)、バイデンが「お墨付き」を与えたのだ。
日本では、きっと、これからもっともっと値上がりがつづく。企業は悪くない。プーチンが悪いのだ。
それにしても、と思うのだ。
アメリカはNATOにアメリカの軍備を売りつけることで金を儲けるだけでは満足せず、その他の原料も高値で売りつけ、金を稼ごうとしている。アメリカ国内でもものが不足している。それを輸出にまわしているのだから、アメリカからの輸出品が高くなるのはあたり前、ということだ。「高くても、輸出してもらえるだけありがたいと思え」というわけだ。
ニュース(ジャーナリズム)は、プーチンの引き起こすかもしれない核戦争に人々の注意を引きつけるのに躍起だが、核戦争が起きなくても、多くの国で多くの市民が物価高/生活苦にあえぎ、死んでいくことになるかもしれない。この物価高による貧困死は、戦争のように目立たない。じわじわと侵攻していく。
そのとき、その一方で、金儲けができたと喜ぶひとがいる。
そのことに、目を向けなければならない。
私は何度も「経済戦争」ということばをつかってきたが、ロシアに「侵攻をやめろ」と叫び続けると同時に、アメリカに「経済戦争をやめろ」ということも必要だと思う。それぞれの政府に対して「経済戦争をやめろ」と叫ばないと、私たちは、ほんとうに貧困(物価高)のために死んでいくことになる。
悠長に聞こえるかもしれないが、戦争をするなら「言論戦争/外交」をしろ、と言いたい。プーチンを言論で説得するための努力を、アメリカをはじめ多くの国はすべきなのだ。アメリカは米ロ対談がうまくいかなかったらアメリカの責任が問われると思っているのだろう。こんな事態になっても、まだプーチンに対話しようと呼びかけてはいない。(報道されないところで交渉があるのかもしれないが、表には出てきていない。)マクロンが何度もプーチンと対話しているのと比べてみるといい。武器を売りつけ、アメリカの商品を売りつけ、「おいしいところ(金儲け)」だけをしている。
そのあげくに、国民から物価高の批判を受けると「プーチンのせい」と言って逃げてしまう。