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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

連詩「千人のオフィーリア」(1-20)

2013-10-25 09:56:55 | 連詩「千人のオフィーリア」
千人のオフィーリア(連詩の試み)
https://www.facebook.com/groups/170080153191549/

                           谷内修三
千人のオフィーリアが流れてくる川がある。
ひとりは水道の蛇口から身を投げて、
高層マンションの長い排水管を潜り抜けてきた人形。

                           金子 忠政
彼女は残りの999人をみつめようと
まばたきしないひとみを声にしている
ひとりの臓腑に声が突き刺さって
最上階の窓から応答のピアノ

                           山下 晴代
ぽろん、ぽろん。
2000年前のアルゴリズム。

                           坂多 瑩子
それは月曜日の朝 
あたしは生ゴミのなかで拾われた 
片腕のない人形をだきしめたまま

                           岡野 絵里子
呑み込まれていった
「時」が始まる夢の淵へ
川は見る者の目を流れ
信号の多い街を浸し続けた

                           谷内修三
水に映る街と過去はシンメトリー
ビルを映す水の奥には過去が流れていく、そして
水面のビルの色は流れないけれど私の
オフィーリアは流れてさまよう

                           金子 忠政
まどろみゆれる水草のような
ビルの直線にからまれ
仰向けに青空をみつめ
あるはずのない血を脈打たせて
水面をただよっていく

                           田島安江
水面にゆれる影が
ビルの隙間をするりとぬけて
もう一つの影を追う
ああ、ここは明るすぎる。

                           坂多 瑩子
水に映る街と水底の街がクロスするとき 
時間はとまる 
さあお行き 
熱いスープが冷めぬまに

                           矢ヶ崎 正
時間はいつもさみしがって
空間にしがみつく
サラダもワインも遅れてきたけれど
それを 怒りも笑いもするなと
光源の奥から言うものがある

                           谷内修三
千人のオフィーリアが流れてくる、
冬の中世のヨーロッパからドライフラワーを抱えて、
アマゾンから極彩色の蝶に口づけされたまま、
大気汚染の中国からは金瓶梅の纏足をマッサージしながら、
ああやかましい。

                           金子 忠政
君らはひしめいて流れてくる
いっせいに流れていく
大陸から大陸へ
いまだ難民に似ていて
恐怖に渇いた口をあけたまま
置き去りにされた地の首筋から足首まで
濡れた星座をしるしづけ
何度も行って帰ってくる
石を食って頭かかえた空にも

                           坂多 瑩子
おまえが飲みこんだオフィーリア
腹のなかで増殖していくオフィーリアの
そのひとりひとりをおまえは知っているというのか
古ぼけた靴をはかされて
インクの染みのついたスカートをひるがえして
たったひとりのオフィーリアさえ
おまえはその手に抱きしめたことがあるのか

                           田島 安江
おお、かわいそうなオフィーリア
お前を抱きしめてくれるものなどいない
お前はどこまでもひとりぼっち
ああ、愛しのオフィーリア
さあ、どこまでも
地の果てまでも流れていくがいい

                           坂多 瑩子
あたしはヴァンパイアーが好き
何万年も生きるその哀しさが好き
小さなわなをしかけて
人間たちを眺めながら
地の果ての
暗くて深い森で
その身の上話を聞くのが好き

                           山下 晴代
"You! hypocrite lecteur!___mon semblable,___mon frere!

                           市堀 玉宗
血塗られしこの世に月を仰ぐかな

                           谷内 修三
血のなかで騒ぐことばよ、
ことばのなかで騒ぐ血よ、
おまえの名は女、
女の名はおまえ、

                           田島 安江
月満ちて刃沈める水かがみ

                           永田 満徳
訳ありて深山に籠る紅葉かな

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (小田千代子)
2013-10-26 09:59:20
晩秋はつるべ落としにこぼれ萩 決して太らぬ月を観ている 24
返信する
投稿はFBで (谷内)
2013-10-27 12:17:59
この「コメント」欄ではなく、FBでお願いします。
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