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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

アルメ時代(1)

2019-04-02 20:18:01 | アルメ時代
鴎外橋


カナダ人が
川岸のぬれた水苔を見てタイドと言った
――近くに海があるの、
――私はバンクーバーで育った。
それから古里の話をしてくれた
――妻とは別れシングルだ。
息子の写真を持っていた
――スマートね、
――うん、ハンサムだ。
私の英語をなおしてくれたわ

女の話を聞いていると
この河口にも源があるとわかる
潮に身をまかせる水は遠くからやってくる
女のことばもカナダ人のことばも
遠くからやってきた
私は振り返ってアルミニウムの欄干に伸びる影を見た
その先の川の上を綿の風は
見えないので耳を澄ました
だが何も聞こえない。
世の中を歩いていないので
私のことばは動いていかない
女のことばを
美しい形にして返せない
「雲がすっかり秋ね」
女の視線をおいかけながら
川面に影をうつす柳のように
女のことばに揺られてみる
「夏の雲と違って大きくなることはない
ただターナーの色にそまっている」


(アルメ229、1984年11月10日)

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アルメ時代(1)鴎外橋 (大井川賢治)
2024-02-29 13:52:37
/女のことばに揺られてみる/
魅力的な表現です。
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