詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

高柳誠『フランチェスカのスカート』(7)

2021-06-13 10:43:12 | 高柳誠「フランチェスカのスカート」を読む

 

高柳誠『フランチェスカのスカート』(7)(書肆山田、2021年06月05日発行)

 「記憶の轍」は

  記憶にだけ通行可能の道がある。

 と魅力的なことばで始まる。つづいて、記憶が説明される。

                 記憶はそれ自体で、現実とは異な
  る独自の論理や体系をもっているので、町なかを勝手にうろつかれ
  て人々とやたらに接触するようなことだけは、なんとしても避けな
  ければならない。生硬なままの記憶の切っ先が、人々の日常に次々
  と外傷を生じさせて、生活を瀕死状態にしてしまうからだ。

 記憶と現実と日常。その共存(?)を可能にするために、町には記憶専用の回路がはりめぐらされている。その回路は、

    常に改訂され拡張され続けることを宿命づけられた、記憶その
  ものの秘すべき分類図、系統図だ。そこを伏流水のように純粋記憶
  が行き来する。

 いろいろなことばを通って、高柳は「純粋」ということばをひっぱりだしている。この「純粋」が高柳の求めているすべてである。
 「純粋」は「記憶」と同様、誰もがつかうことばである。だが、どう定義すればいいのか。高柳の定義は、こうである。

          長い年月をかけて個人の刻印を残らずふるい落と
  し、すでにだれのものでもない普遍的な記憶の実体そのものとなっ
  てこそ、この通路を往還できる。

 「純粋」は「普遍的」、つまり「個人の刻印(個別性)」を排除したもの。つまり、抽象である。あるいは、記号である。
 高柳のことばは、ことばの運動というよりも、どこか「記号の運動」という要素があるが、それは運動の「純粋さ」を明確にするための手段である。
 最初に「道」ということばがでてきた。しかし、それは「存在」ではなく、むしろ「運動」をうかびあがらせる装置としての「場」である。「道」が純粋なのではなく、「道」を行き来する記憶の「運動」が純粋なのである。
 この「記憶」を「ことば」と置き直せば、高橋の詩の夢が浮かびあがる。「純粋ことば」が行き来する(純粋に運動する)世界。ことばが自立して、ことば自体のエネルギーで動くとき、そこに出現するのが、詩の世界だ。

 


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