詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(80)

2024-02-14 21:54:32 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「岩の小舟溜まり」。

聞け。言葉は老いたる者の叡知。

 この一行は、不思議だ。突然「言葉」が登場する。「言葉は叡知」を「叡知は言葉」と読み直すこともできるだろう。そのとき「老いたる者の」という修飾語を必要とするかどうかは、わからない。いや、そうではなく、この一行では「老いたる者」が、間接的に、重要なのかもしれない。
 間接的に重要、というのは奇妙な言い方になるが。
 言いなおそう。
 もし「老いたる者」のかわりに「若者の」ということばがこの一行にあったとしたら、その前後の表現はどうなるのだろうか。
 「肉体は若者の叡知」とならないだろうか。「叡知は肉体」である。それは「肉体は叡知」にかわり、そして、その「叡知」は「無知(恐れを知らない)」かもしれない。そこには輝かしい「いのち」がある。「いのち」は「叡知」など必要としない。
 そのとき、「聞け。」はどうかわるか。
 「見ろ(見よ)」に変わるかもしれない。
 この詩のなかに繰り返される「きみ(の)」ということばから、私は、「きみの若い肉体」を見ている「老いたる詩人」を反射的に思い浮かべる。「私」がだれか、この詩では書かれていないが。「聞け。」と言った人は、「きみ」よりも「老いている」。もし、「きみ」と同じ年代ならば(若いにせよ、老いているにせよ)、「聞け。」と呼びかけたあと、「老いたる者の」ということばは書かれないだろう。
 「聞け。」という強い響きが、そういうことを想像させる。


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1 コメント

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老いたるものの叡智 (大井川賢治)
2024-02-15 13:07:33
庶民感覚で言えば、同じ一言でも、発する人の属性、たとえば年齢などによって、重みが違うということでしょうか。ということは、言葉は一見、辞書の中のように、独立しているように見えますが、使う人の子分のようにも思えます。桃太郎につき従う犬、猿、雉のように~
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