詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

こころは存在するか(25)

2024-03-17 12:37:10 | こころは存在するか

 カントの「実践理性批判」について、和辻がいろいろ書いている。それを読んでいる途中に、私はノートにこんなことを書いている。

人を殺す。それが善いことか悪いことかは、実際にそれが行われたあとで判断される。

 もちろん「人を殺すことは悪いことである」。しかし、こういう道徳というか、定義というか、よくわからないが、それが真実かどうか、私は自分の肉体をとおして語ることができない。私は殺されたくない。だから、それを悪いことと感じている。つまり、利己心から、自己中心的な感覚から言っていることになる。
 しかし、実際に「人を殺す」、あるいは「人を殺すことにかかわる」場合は違うだろう。
 私が「頭のなか」で考える善悪を超えて、実際に人を殺したひとの肉体に何かが押し寄せてくるだろうと思う。
 もし、その「殺人」がボタンひとつで可能ならば、これは「肉体」で「肉体」を「殺す」こと以上に大きな問題となって押し寄せてくるに違いない。私はまだ見ていないが、近く公開される映画「オッペンハイマー」は、この問題に向き合っていると想像している。
 動詞、「肉体の動き」が引き寄せる「世界」、和辻は「世間(世の中)」ということばを好むが、それは「私という肉体」と、「私の肉体」が存在するとき、その近くに引き寄せてしまう「ひと」との関係であり(和辻は「間柄」と読んでいる)、その「広がり(空間)」と、自分のなかにある「時間」、つまり「間柄」は、常に変化し続けるものである。そして、その変化は「言語化」することがむずかしい。「ことば」はいつでもおくれてやってくる。つまり「直観」は「ことば」よりも先に動き、「肉体」を支配する。

 「動詞」と書いて、こんなメモを残しているのにも気がついた。和辻は「ことば」を「日本語」のつかい方から切り開いていく。
 「幸せ」を「仕合わせ」と言い換えて(読み替えて)、それが一種の「共通項」になりうると書いている(ように、私は「誤読」する。)
 ひとは誰でも、何か「足りないもの」に囲まれて生きている。そして、その「欠けている」ものを補いながら生きているのだが、その「補う」という仕事をするとき、単にあるものを自分のものにするだけではなく(もちろん単独のものを自分に「組み合わせる」という方法もあるのだが)、何かと何かを組み合わせて補うことがある。Cが欠けているときAとBを組み合わせてCをつくり、それを自分のものにする。この「合わせる」という動詞、他動詞の動きに注目するならば、そこから「主体」という問題が浮かび上がってくる。他動詞には「主体=私(の肉体)」が必要である。「自発性」をもった「肉体」が必要である。まず「肉体」が必要であり、確実に存在するのは、その「肉体」だけである。「ことば=こころ(精神)」は、あとから付け足した何かである。あるいは「創造」した何かである。もちろん「創造したもの(創造されたもの)」が「ない」とは言わないが、それには「創造するもの」が必要である。だから、私は、そのことを意識するために、あえて「肉体」は存在するが、こころ(精神)は存在しないという。「ことば」は例外である。それは、声となり、文字となり、「肉体」で「いつ」「どこ」にあると確認できるのだから。

 

 

**********************************************************************

★「詩はどこにあるか」オンライン講座★

メール、googlemeetを使っての「現代詩オンライン講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントをメール、ネット会議でお伝えします。

★メール講座★
随時受け付け。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
1週間以内に、講評を返信します。
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円。

★ネット会議講座(googlemeetかskype使用)★
随時受け付け。ただし、予約制。
1回30分、1000円。(長い詩の場合は60分まで延長、2000円)
メール送信の際、対話希望日、希望時間をお書きください。折り返し、対話可能日をお知らせします。

費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。

お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com


また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571

オンデマンドで以下の本を発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512

(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804


(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455

(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

 

 

問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com

コメント (1)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする