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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

「自分たちでまいたタネ」

2018-02-21 12:09:23 | 自民党憲法改正草案を読む
「自分たちでまいたタネ」
             自民党憲法改正草案を読む/番外180(情報の読み方)

 「週刊現代」(2018年03月03日号)が秋篠宮家の真子と小室圭の「結婚延期」の裏側(?)を特集している。ふたりの結婚がどうなるか、私は関心がないが、特集の三本目の記事が気になった。

宿敵 安倍官邸vs宮内庁 「身体検査ミス」を巡る暗闘

 という見出し。
 小室圭がどういう人間なのか、身辺調査をしなかった(?)、家庭環境などに問題がないかを徹底しなかったために、問題が生じてきた。小室の母親の借金(母親は否定)が、結婚の妨げになっている。
 官邸と宮内庁のどっちに責任がある?ということで対立しているということらしいが。
 うーん。
 憲法では、

第24条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

 となっている。
 皇室典範の規定では、

第十二条 皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる。

 これを読むかぎり、ふたりが結婚するかどうかはふたりの問題。母親の借金なんか、関係ないなあ。母親に借金があれば、結婚できない、という法律が別個にあるのかな?

 で。
 このことに関して、

 安倍は、「自分たちでまいたタネでしょう」とつぶやいたという。(47ページ)

 「伝聞」の形だが、そう書いてある。
 それに先立って、こういう文章がある。

 ある官邸幹部は、こう証言する。
「小室圭さんの一家のことは、官邸や警察庁も情報収集をしていたんですよ。父親の自殺や、一族に新興宗教の信者がいたことなど、いろいろ問題がありそうだ、というニュアンスは、早い段階で宮内庁に伝えていました」

 これを読むと、宮内庁は「情報」を知っていたが適切に対処しなかった。宮内庁に問題があると官邸幹部が指摘している(批判している)ように読めるが。
 「早い段階で宮内庁に伝えていました」って、「宮内庁の関係者」ではない「官邸幹部」が、どうして知っている? 官邸には「宮内庁に伝えていた」ということが報告されている。つまり官邸も知っていた、ということになる。
 官邸も知っていたが、何もしなかった。
 なぜか。
 「真子、小室圭の結婚について何かあれば、それを利用できる。皇室を支配するのに利用できる」
 そう考えて、成り行きを「監視」していたのではないのか。
 「天皇の悲鳴」で、安倍が、天皇の「発言」そのものを政治に利用していることは書いた。利用するために、発言の時期を操作していることも書いた。
 同じように、今回のことも安倍が、皇室を操作するためにねらったことなのだろう。
 それが、

「自分たちでまいたタネでしょう」

 という発言になったのだと思う。
 「皮肉」というか、つめたく突き放したこの発言から、そういうことがうかがえる。
 「つぶやいた」のだから、公式発言ではないのだが、こういうときって、ふつうは「どうなるのかねえ、心配だね」くらいのことしか言わない。
 首相のような立場にあれば、「結婚は両人が決めることですのでおふたりにまかせるしかありません。お見守りしています」というのかなあ。
 「自分たちでまいたタネ」には「いいきみ」というような響きがあるよなあ。「私はわかっていたんだ」という感じも。
 知っているのに、何の助言もしない、というのは「ずるい」ねえ。

 


#安倍を許さない #憲法改正 #天皇退位 
 


*

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憲法9条改正、これでいいのか 詩人が解明ー言葉の奥の危ない思想ー
クリエーター情報なし
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谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(9)

2018-02-21 11:17:26 | 谷川俊太郎『聴くと聞こえる』
谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(9)(創元社、2018年02月10日発行)

 「きいている」は一連目がつぎつぎに変奏されていく。「音楽」を聞いているみたいに、自然にそのリズムの中にとけこんでゆく。

あさ ことりがうたうとき
きいている もりが

ひる かわがうたうとき
きいている おひさまが

よる うみがうたうとき
きいている ほしが

 「あさ」「ひる」「よる」と時間も予想通りに進む。「うたうとき」「きいている」という動詞の向き合い方も、きちんと引き継がれている。
 「あさ」「ひる」「よる」のあとは、どうなる?
 ここから「転調」する。

いつか きみがうたうとき
きいている きみをすきになるひとが

きょう ちきゅうがささやくとき
きいている うちゅうが

あす みんながだまりこむとき
きいている かみさまが

 「うたうとき」が「ささやくとき」にかわり、さらに「だまりこむ」にかわる。
 「起承転結」でいうと「うたう」からはじまり、「ささやく」とひきつぎ、「だまる」でおおきく転換する。「声」がだんだん小さくなるから、自然に聞いてしまうけれどね。
 「ちきゅう」と「うちゅう」が出てくるところが、谷川らしいなあと思う。
 で、「結」は?

ねこのひげの さきっちょで
きみのおへその おくで

 「音」が消えてしまう。「だまりこむ」で消えているとも言えるけれど、「だまる」には、「だまる」前の「声」がある。
 でも、この二行には「声」がない。
 同時に、それまでの「……するとき/……している」ということばの運動の「対」構造も消えている。
 「……するとき/……している」という構造は「意味」とも言い換えることができる。「意味」が消えて「無意味(ナンセンス)」になっている。音だけが響く。これが「音楽」かもしれない。
 なんとなく、笑いたくなる。
 「さきっちょ」とか「おへそ」ということばもくすぐったい。

 これ以上、「意味」を探したくない。やたらと「意味」を求めて、ことばをついやしても、どこにも辿りつけないだろう。
 ただ、あっと驚き、くすっと笑えばいいのだろう。

 わかっているのだが、私は少し書きたい。
 いま書いたことからは脱線するのだが。

あす みんながだまりこむとき
きいている かみさまが

 この二行。「意味」はわかる。でも、私はこの二行が嫌いだ。
 「かみさま」と谷川は書いているが、谷川は「かみさま」を信じているのか。そして、もし「信じる」というのなら、それは「存在」を信じているのか、「力」を信じているのか(特別な神を信仰しているのか)、そのことが私にはよくわからない。
 ここでの「かみさま」は「存在」でも「力」でもなく、「概念」のような感じがする。ただ、そういうものをあらわす「ことば」がある、という感じ。
 もし「かみさま」が「概念」なら、それまで書かれている「ことり」も「もり」も、「かわ」も「おひさま」も「概念」になってしまう。
 最終連の二行で「意味」を否定し、ナンセンスになっているが、その瞬間、それまでのことばはナンセンスを支えるための「意味」になってしまう。「ことり」も「もり」も「実在(現実)」ではなく「概念」になる。
 「ねこのひげ」「きみのおへそ」が「実在(現実)」だから、それでいいのかもしれないが、どうもはぐらかされた気になる。
 私が「神」とか「魂」とかいうものの存在をまったく感じない人間だからかもしれないが。





*


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目次

瀬尾育生「ベテルにて」2  閻連科『硬きこと水のごとし』8
田原「小説家 閻連科に」12  谷川俊太郎「詩の鳥」17
江代充「想起」21  井坂洋子「キューピー」27
堤美代「尾っぽ」32  伊藤浩子「帰心」37
伊武トーマ「反時代的ラブソング」42  喜多昭夫『いとしい一日』47
アタオル・ベフラモール「ある朝、馴染みの街に入る時」51
吉田修「養石」、大西美千代「途中下車」55  壱岐梢『一粒の』59
金堀則夫『ひの土』62  福田知子『あけやらぬ みずのゆめ』67
岡野絵里子「Winterning」74  池田瑛子「坂」、田島安江「ミミへの旅」 78
田代田「ヒト」84  植村初子『SONG BOOK』90
小川三郎「帰路」94  岩佐なを「色鉛筆」98
柄谷行人『意味という病』105  藤井晴美『電波、異臭、工学の枝』111
瀬尾育生「マージナル」116  宗近真一郎「「去勢」不全における消音、あるいは、揺動の行方」122
森口みや「余暇」129
オンデマンド形式です。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。



以下の本もオンデマンドで発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料250円)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512

(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料450円)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

(3)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料250円)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977



問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com



聴くと聞こえる: on Listening 1950-2017
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