監督 ジョン・スタージェス 出演 スティーヴ・マックイーン、ジェームズ・ガーナー、リチャード・アッテンボロー、ジェームズ・ドナルド、チャールズ・ブロンソン
東宝の「午前10時の映画祭」。福岡は「大脱走」で始まり、最後は「ブリット」。かなり観客が入っていた。映画ファンとしては、ともかくうれしい。
私は「大脱走」はスクリーンでは見ていない。スクリーンで見るのは初めてだが、あ、なつかしい、と感じてしまった。緑の平原、その道をナチスの車が列をなして走ってくる。あ、これって、初めて映画をとったナントカカントカ(私は歴史は苦手、カタカナの名前も苦手)の映像に似ている。工場からぞろぞろ出てくる労働者。駅からあふれる人。動き始めた列車――ようするに、背景は止まっていて人や物が動く。動いているものを見せるのが映画。止まっているものなら写真で十分だからねえ。うーん、いいなあ、この始まり、映画だ、映画が始まるぞ、という感じ。
追いかけるように、緑の補色、赤で出演者の名前。文字には補色だけでは弱い(?)と思ったのか、影まで付けている。あ、これが昔のスタイルなんだなあ。現実そのものではなく、現実を強調したもの、それが映画。
そう思うとこの映画はわかりやすい。実話。実話だけれど、それにあれこれアクセントをつけて、印象を強くした。観客に強い印象を残すように、再構成した――それが映画。
で、本篇。
やはり、静と動の組み合わせ。対比。並列することで、相手の色彩を強調する。対比と強調がアンサンブルの基本だね。スティーヴ・マックイーンの一匹狼、リチャード・アッテンボローの組織(集団意識)の対比とかね。
トンネル掘りの道具の調達、偽造書類のための調達――など、いろいろ困難な問題があるはずなんだけれど、困難さではなく、知恵を強調して、脱走する捕虜を理想化する。脱走させまいと監視する方の努力(?)には触れない。そのため、緊迫感に欠けるね。今の映画の視点から見ると。
ちょっとびっくりしたのは、脱走後見つかってしまったリチャード・アッテンボローたちをナチスが銃殺するシーン。捕虜を捕虜として扱うという国際的な条約を無視して殺害する。それがナチスだ、という告発がここにある。事実なんだろうけれど、その強調の仕方が、さらりとしている。(「カティンの森」と比べると、違いがわかる。)
レジスタンスの描き方とか、さらりとしていて効果的なシーンもあるけれど、そのシーンを撮るのに「さらり」の効果を監督が考えたかどうか、ちょっとわからない。(それが残念。)
昔読んだ本を読み返すと印象が違うように、昔見た映画を見直すと、やはり印象が違う。どんな違った印象が生まれるか――それを知る楽しみが、あと49本つづく。全部見るかどうかはわからないが。
東宝の「午前10時の映画祭」。福岡は「大脱走」で始まり、最後は「ブリット」。かなり観客が入っていた。映画ファンとしては、ともかくうれしい。
私は「大脱走」はスクリーンでは見ていない。スクリーンで見るのは初めてだが、あ、なつかしい、と感じてしまった。緑の平原、その道をナチスの車が列をなして走ってくる。あ、これって、初めて映画をとったナントカカントカ(私は歴史は苦手、カタカナの名前も苦手)の映像に似ている。工場からぞろぞろ出てくる労働者。駅からあふれる人。動き始めた列車――ようするに、背景は止まっていて人や物が動く。動いているものを見せるのが映画。止まっているものなら写真で十分だからねえ。うーん、いいなあ、この始まり、映画だ、映画が始まるぞ、という感じ。
追いかけるように、緑の補色、赤で出演者の名前。文字には補色だけでは弱い(?)と思ったのか、影まで付けている。あ、これが昔のスタイルなんだなあ。現実そのものではなく、現実を強調したもの、それが映画。
そう思うとこの映画はわかりやすい。実話。実話だけれど、それにあれこれアクセントをつけて、印象を強くした。観客に強い印象を残すように、再構成した――それが映画。
で、本篇。
やはり、静と動の組み合わせ。対比。並列することで、相手の色彩を強調する。対比と強調がアンサンブルの基本だね。スティーヴ・マックイーンの一匹狼、リチャード・アッテンボローの組織(集団意識)の対比とかね。
トンネル掘りの道具の調達、偽造書類のための調達――など、いろいろ困難な問題があるはずなんだけれど、困難さではなく、知恵を強調して、脱走する捕虜を理想化する。脱走させまいと監視する方の努力(?)には触れない。そのため、緊迫感に欠けるね。今の映画の視点から見ると。
ちょっとびっくりしたのは、脱走後見つかってしまったリチャード・アッテンボローたちをナチスが銃殺するシーン。捕虜を捕虜として扱うという国際的な条約を無視して殺害する。それがナチスだ、という告発がここにある。事実なんだろうけれど、その強調の仕方が、さらりとしている。(「カティンの森」と比べると、違いがわかる。)
レジスタンスの描き方とか、さらりとしていて効果的なシーンもあるけれど、そのシーンを撮るのに「さらり」の効果を監督が考えたかどうか、ちょっとわからない。(それが残念。)
昔読んだ本を読み返すと印象が違うように、昔見た映画を見直すと、やはり印象が違う。どんな違った印象が生まれるか――それを知る楽しみが、あと49本つづく。全部見るかどうかはわからないが。
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