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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(42)

2023-09-21 21:33:22 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「ダレイオス大王」。詩人フェルナセスが、ダイオレスがペルシャの王位を奪う詩を書いている。ダイレオスは、そのとき何を思うか。そして、詩が完成する寸前に戦争が起こる。ダイオレスは逃げ出す。
 そのさなかに、詩のハイライトで悩んでいたことばが、確かなものになる。

驕りと陶酔--これだ、一番確かなのは。

 この一行にある、絶対的な皮肉。
 もちろん戦争に勝ったとき「驕りと陶酔」がダレイオスを包む。しかし、敗北したときもまた「驕りと陶酔」が炸裂する。
 それは、思い出として。
 この一行を読んだ瞬間、私は、またも「船上にて」を思い出すのだ。
 恋をしていたあのときの、「驕りと陶酔」。それは恋人を失ったことでさらに絶対的なものになる。それしか残されていないのだ。「驕りと陶酔」、それだけが確かなのだ。
 この詩には「恋」の「この字」も書かれていないが、私は、恋を感じてしまう。

 


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(41)

2023-09-20 21:25:13 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「亡霊たちを招く」。ロウソクを一本だけつけて、淡い光のなかで愛の亡霊を招くのだが、この「招く」を、こう言い直している。

この深い夢うつつの中で私はまぼろしを作る、

 「作る」。これは「招く」よりも強い。招いても来ないかもしれない。しかし、作れば、そこに存在する。「船上にて」のスケッチ(素描)と同じである。思いのままに、そこに存在させることができる。
 「亡霊」など存在しない。「まぼろし」も存在しないからこそ「まぼろし」というのかもしれないが、それは作ってしまえば存在するのだ。
 そのとき「愛の亡霊」はかつての恋人ではなく、詩人の「恋心」、「恋した瞬間の思い」にほかならない。

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(40)

2023-09-18 21:45:09 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「船上にて」。一枚の素描を見ている。だれが描いたのか、中井の訳では分からない。「甲板で一気に描いた」という行がある。他の男が描いたのかもしれない。カヴァフィスが描いたのかもしれない。日本語は「主語」を省略できるので、そういう書き方ができる。そのあとに、こういう一行がある。

似ている。でも奴はもっと美男だった。

 私ならもっと美男に描く、と読むことができる。しかし、そうではないだろう。私のスケッチはへたくそだ。彼はもっと美男だった、もっと美男に描くべきだったという後悔いが込み上げてくるのだ。
 もし「主語」が明示されていたら、生々しくなりすぎる。思い出しているということが、切実になりすぎる。でも奴はもっと美男「である」になってしまうかもしれない。
 「似ている」という現在形、「美男だった」という過去形。その「時制」の変化(揺らぎ)をつなぎ止めているのが省略された主語(私=カヴァフィス)である。省略されているからこそ、その省略された部分(なぞの部分)で、読者はカヴァフィスとシンクロすることができる。
 中井の訳は、そういう魔術的文体を動いていく。


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(39)

2023-09-17 21:04:41 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「午後の日射し」。珍しく「女ことば」で訳されている。なんとなく、べたっとした響きに聞こえる。

ああいう古い物って、まだ身のまわりに漂っているのね、きっと。

 この「漂う」という動詞が、それこそ「身のまわりに」からみついてくるようで、重たい。それに追い打ちをかけるように、「きっと」がつづく。
 もし「男ことば」として訳するなら、「きっと」は行末ではないだろうなあ、と思う。この「きっと」には、追いかけてくるような「未練」がある。そして、実際、この詩は未練の詩である。
 そう思うと、この詩を「女ことば」として訳したのは、深い配慮があるのだ。


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(38)

2023-09-13 23:18:51 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「九時から」は、ちょっと複雑な詩である。

十二時半。九時からの時間の早さ。

 九時から何かをし始め、十二時半になった。時がたつのは速い。
 主人公(カヴァフィス)は何をしたのか。何もしない。ただ思い出していた。そして、思い出すのは、若かったときだ。
 だから、ここに書かれているのは、実は九時から十二時半までの三時間半ではない。彼の長い年月のことを書いているのだが、では、なぜ九時からなのだろうか。十二時半までなのだろうか。
 たぶん。
 九時から十二時半まで、彼は楽しんだのだ。あるいは、十二時かもしれないが。毎日。それは、日課だったのだ。
 中井は「早さ」という表現を一行目でつかっているが、最後の方では「疾き」という表現をしている。わざと、「速さ」を「早さ」と、書いているだと思う。
 「十二時半、帰らなくては」「まだ早いじゃないか」。そんな会話が、書かれていないことばが、遠くから聞こえてくる。

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(36)

2023-09-10 21:41:27 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「忘れるな、身体よ……」は、自分自身の「身体」に呼びかける詩である。

忘れるな、ああ、きみを見つめていた眼の中の、あの憧れのきらめきよ。

 「ああ」が美しい。「あ」の「あ」こがれのということばのなかで、「ああ」が繰り返される。いや、「ああ」が「あ」の「あ」こがれのという音を先取りしているのだ。
 「ああ」がなくても「意味」はかわらない。
 しかし、詩は「意味」ではない。
 「あの」ということばは、話者と聞き手が「あの」について共通の認識をもっているときにつかわれる。自分自身の身体なのだから、詩人と共通の認識をもってるのは当然なのだが、その共通の「あの」の「あ」が和音となって重なり、和音となって散らばる。この重なりと分散が、ああ、美しい。


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(35)

2023-09-09 22:56:50 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「カイサリオン」。この詩のテーマは「事実とは何か」である。だからこそ、次の行が登場する。

きみの魅力は不確定性にある。

 「事実がわからない」。では、そのとき、ひとはどうするか。カヴァフィスは、どうしたのか。
 私の好きなことばで言えば「誤読する」。誤読には、誤読することでしかたどりつけない「真実」がある。「不確定性」は「誤読」を推奨する。
 その結果、どうなったか。
 詩を読んだ人だけがわかる。それでいい。詩を読まないひとに、結果を知らせる必要などない。

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(34)

2023-09-06 11:41:33 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「アチュルの月に」は若くして死んだレウキオスの墓碑銘を読む詩。古い墓碑銘なので、ところどころの文字が欠けている。自然に欠けたのか、だれかが消したのか、それはわからない。その文字を拾いながら、読む。

ふたたび「涙」「その友たる(われらの)愁い」。

 (われら)はカヴァフィスが補ったことばである。ほんとうは違う文字だったかもしれないが、カヴァフィスは詩の登場人物に、そう読ませている。
 そのとき、カヴァフィスは「われら」になる。想像力に加担することは、その想像力の人物になるということだ。
 もし、「われら」が「誤読」だとしたら、それは「加担」を通り越して、想像力を「引き受ける」ことである。引き受けなければならないカヴァフィスの「真実」、「間違わなければたどりつけない真実」がある。


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(33)

2023-09-05 18:36:35 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「宵闇」は終わってしまった恋の詩。その最終行。

せめて思いを散じたかった。

 和泉式部の「君恋ふる心は千々にくだくれど一つも失せぬものにぞありける」を思い出した。しかい、意味(論理)は逆になるかもしれない。カヴァフィスは、恋しい気持ちが強すぎるので、いろいろなものの上に思い散らすことで、安らぎを得ようとしている。もちろん、散らしたところで、散らばって消えていくものではなく、やはり「ひとつ」として失せず、無数なのに「ひとつ」に感じてしまうのが恋だろう。
 だが、そういった論理(意味)ではなく、私は、「散ずる/散じる」ということば、その音に、私は引きつけられる。意味はわかるが、私はぜったいにつかわない。そして、私のつかわないことばの存在が、詩に不思議な距離感をもたらす。主観的な共鳴を拒んでいるようにも感じられる。
 和泉式部の歌を読むと「そうだなあ」と思う。カヴァフィスの詩(中井久夫の訳語)を読むと「そうなのか」と思う。そういう悲しみがあるのか、と客観的に感じる。客観的に「理解する」と言い直すこともできる。
 そして、ふと、カヴァフィスの「孤独」を思ったりするのだ。カヴァフィスに、こころを共振させたひとはいたのか、と。


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(32)

2023-09-04 22:57:47 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

  「彼等の神々の一柱」。「彼等」は「私たち」ではない。そこには明確な区別がある。そして、「神」とは、「私たち」がけっしてなれぬ存在である。二重に「私たち」ではない。だから「彼等の神」ということばを発するとき、そこには拒絶がある、と言えるかもしれない。あるいは、蔑視が。

人々は首を傾げた。ありゃどの神さまだ。

 「ありゃ」には、「違った存在」に対する蔑視が露骨にあらわれている。
 それなのに、その蔑視をそのまま受け入れているのは、カヴァフィスには「わしら」のことは「きみら」にはけっしてわからないという矜持があるからだろう。中井は、この矜持を「ありゃ」という口語、他者の発したことばのなかに籠めている。
 複雑に交錯した愉悦が駆け抜けていく詩である。


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(31)

2023-09-03 09:31:09 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「詩人アンモネス、六一〇年没、享年二九歳に」。詩人ラファエルに、詩人アンモネスの墓碑銘を依頼する。依頼するのは親しかった仲間だ。

わしらの生活を行間に籠めてくれ。

 「わしら」とは「私とアンモネス」のことではない。「わしらとアンモネス」のことだ。このとき、アンモネスは「飾り」で、「わしら」そのものが主役なのだ。あるいは「生活」そのものが主役なのだ。
 個人(故人)ではなく、その「生活」。
 「街路にて」に「その子」が登場したが、「詩人アンモネス」は「その子」と呼ばれるひとりなのだ。ある人間を「その子」と呼ぶとき、「その」によって共有されるものがある。「その生活」がある。「わしらの生活」とは「その生活」なのだ。
 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(30) 

2023-09-02 21:00:38 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「イグナチオスの墓」。墓碑銘。そのなかに、

わが二八年、まさに消去さるべし。

 いつも、こころが震える。
 この詩は、「過去は消し去り、以後は聖職者として生きた」とつづくのだが、私はまったく違う意味で受けとめ、こころが震えるのだ。
 私は何年生きることになるのか。知らない。しかし「わが〇〇年、まさに消去さるべし。」というのは、私の理想の死だ。
 だれかが消し去ってくれるわけではない。自分自身で自分を消し去らなければならない。すべてを、ただ消し去りたい。
 墓碑銘はもちろん、墓もいらない。何もない、「完璧な無」を知りたいという欲望があって、なかなか死ねないという矛盾を私は生きている。
 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(29)

2023-08-31 23:08:25 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「街路にて」。短い詩だが、魅力的な行に満ちている。すべてが緊密な関係にあり、この一行を選ぶのがむずかしいのだが。

その子は漂って行く、街路を、あてどなく、

 全体のなかでは印象が薄い行かもしれない。
 「漂っていく」と「あてどなく」はつきすぎているというか、同じことを別のことばで言い直しているだけだ、と批判的なことばを書こうとして、私の意識はふと立ち止まる。「違う」と、私のなかのだれかが告げる。もう一度、読み直す。
 すると。

その子

 が、くっきりと見えてくる。この詩の主役。「彼」でも「青年」でもなく、「その子」。「あの子」でも、「この子」でもない。「その」という中途半端な位置にいる。しかし、「その」ということばを思わずつけてしまう、引きつける力がある。
 カヴァフィスは、「その子」を直接知らないかもしれない。しかし、その姿を見ればすべてがわかる。「その」のなかにカヴァフィスの知っている体験がある。「間接的な共感」を「その子」の「その」は持っている。そして「その子」の「子」という呼び方のなかには、さらに深い共振力がある。
 「その子」ということばを中心に、すべてがシンクロしている。


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(28)

2023-08-26 10:02:56 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「マヌエル・コムニノス」皇帝は、ある日、自分の死期が近いことを覚る。そして、

帝は宗教の古い教えを思い出されて

 目立たぬ衣裳を纏い、この世を去る。
 「古い」の一語がとてもいい「思い出す」という動詞とも関係しているが、それは彼が昔聞いた教えだ。彼が聞いたときは、すでに「古い」教えだっただろう。つまり、ひとからひとへと語り継がれてきたものがそのなかに生きている。
 彼は「天国」へ行くわけではない。この世を「去る」のでもない。ひとに共有されてきた思想のなかへ、思想を語り継いできた無名のひとのなかへ還るのだ。
 「ひとのなかへ還る」ときの安らぎがここにはある。これを「幸い」という。

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(27)

2023-08-25 11:04:51 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「オロフェルネス」の美しい肖像は、四ドラクマ銀貨に刻まれている。銀貨に刻まれるくらいなのだから、「偉い」人物なのだろう。そして、彼には複雑な「歴史」があるのだが、その「歴史」を中井久夫は一言で要約する。

ところが、ある日、思いもよらぬ考えが

 もちろんそれはオロフェルネスの考えのことだが、生きているのはオロフェルネスひとりではない。あらゆるひとが、ある日、「思いもよらぬ」考えを実行するのだ。そこからドラマが始まる。歴史が始まる。
 そのいちばんの「思いもよらぬ考え」のひとつが、オロフェルネスの肖像を銀貨に刻み込むことだろう。彼は彼の美貌が銀貨に刻まれることなど思いもしなかっただろう。
 そして、この「思いもよらぬ考え」を統一するのが、そうなのだ、オロフェルネスの美貌なのだ。カヴァフィスは、まさか銀貨に刻まれた肖像を見て、彼のために詩を書くことなど「思いもよらなかった」だろう。しかし、そうしてしまう。
 この詩のなかには「思いもよらぬ」ことが次々に書かれている。それは「ある日」起きるのだ。

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