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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(58)

2023-11-30 19:38:18 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「夏」。

ヒナゲシは夏の手首にはまった腕時計。

 この「はまった」は原語では何と書いてあるのだろうか。
 ふつうは、手首に「はめた」かもしれない。ボタンをはめる、は、ボタンをとめる。ある決まった位置に「はめる」。その位置でなければならない。
 真夏の強い光のなかで、すべてが「定位置」に存在する。
 この強烈な感じが、他の行に登場する「吊るされている」「宙吊りにする」という不思議なことばをいっそう印象づける。「吊るされている」「宙吊りにする」をゆるぎないものにするためには、「はまった」の一言が絶対に必要なのだ。他動詞「はめる」ではなく、自動詞「はまる」が。「びったり、はまる」。
 書かれていないが、「ぴったり」が、「吊るされている」「宙吊りにする」を「ぴったり」に変える。それでしかあり得ないものに変える。


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(57)

2023-11-29 21:09:17 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「顔」。たとえば鏡を見ていると仮定する。鏡のなかで「きみ」が涙を流す。きみは、それを見ているのか。それとも鏡のなかの「きみ」から見られているのか。涙は、二筋ほほを伝う。

そして、きみは知らない。どちらの水がきみの心をいちばん動かそうとしているのかを。

 「答え」を探し始めるとき、「いちばん」ということばが気にかかる。選択肢はいくつあるのか。「いちばん」ということばがなければ、たぶん、悩まない。「いちばん」ということばがなければ、たとえば私は、その「顔」が鏡のなかにあるとも思わなかったかもしれない。
 「いちばん」ということばのなかにあるのは「ひとつ」。しかし、その「ひとつ」ということばが、「複数」の選択肢を生み出してしまう。
 カヴァフィスのことば、世界には選択肢はひとつしかない。しかし、リッツォスの世界には、いつも選択肢が複数ある。世界はしずかに分裂していく。

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(56)

2023-11-28 22:40:53 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 ここからはヤニス・リッツォスの詩。カヴァフィスとは、声(音)の響きが違う。カヴァフィスの詩のように一行だけ抜き出して、そこからリッツォスの魅力を語るのは難しいかもしれない。しかし、一行だけ、をつづけてみる。
 最初の詩は「単純性の意味」。

(きみに語るためにこういう言い方になるのです)

 「文体」がストレートではない。カヴァフィスのことばはまっすぐだけで構成される。そして、そのスピードは、とても速い。リッツォスはスピードに抑制がある。そして、その抑制がストレートさえも微妙に揺らいでいるように見せかける。
 「きみに語るためにこういう言い方になる」でも「きみに語るためにこういう言い方になります」でもない。「なるのです」。追加された「のです」が、この詩の独特のスピードである。

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(55)

2023-11-27 22:11:53 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「半時間」。詩人は、バーでミューズに会う。半時間を過ごす。そして、それを詩に書いた。

分かってらしたのだと思います。

 分かっていることが、分かっている。そのことを念押しをするようにして書いているのだが、「分かっていたんだと思う(思います)」とは印象が違う。「事実関係」はかわりないのだが、その「事実」に対する「関わり方」が違う。
 この「……てらした」という言い回しは、女性的で、その情勢的な部分を「控え目」と言い直すと、「女性=控え目」という定義を押しつけることになり、いまの時代にはそぐわないかもしれないが、この「控え目」な関わり方に、何か絶対的な真実がある。絶対的な「生き方」、行動の仕方がある。そこには、カヴァフィスの絶望と、あきらめもある。そして、その絶望、あきらめが、カヴァフィスのことばを絶対的なものにしている。
 中井の訳は、その絶対的なものを、非常に的確につかみ取り、生々しく日本語にしている。

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(53) 

2023-11-21 23:17:42 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(53) 

 「ギリシャより帰郷する」。このタイトルは微妙だ。不思議な矛盾、愛憎が、ここに存在する。ギリシャが嫌いなのか、好きなのか。絡み合っている。

なぜ黙りこくっている。胸に尋ねてみな。

 嫌いというとき、胸は好きと叫んでいる。好きというとき胸は嫌いと叫んでいる。
 原文がどういうことばをつかっているのか私は知らないが、「こころ」ではなく「胸」と、中井は訳したのだと思う。
 「胸」の方が「こころ」よりも肉体に近い。「こころ」が思っていることを「胸」は隠すとも言える。

 この一行に、私が驚くのは、「胸」と書いた次の行には「心」ということばがあるからだ。つまり、中井は「胸」と「心」をつかいわけているのだが、カヴァフィスがそのつかいわけをしているとは、私には感じられない。
 中井はカヴァフィスの詩を日本語にすることで、いっそう完璧なものにしている。

 


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(52)

2023-11-18 22:53:55 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「人知れぬもの」。その人が「わかる」、その手がかりは何か。

私の一番ベールを被せた書き物、

 ただの「書き物(ことば)」ではない。「ベールを被せた」という修飾がある。秘密、暗示。しかも、「一番」ということばも重ねられている。
 この「一番」は、直前の行にも書かれている。同じことばが二度書かれている。しかも、目立つ形で。
 それがとてもおもしろい。
 「人知れぬもの」は、「一番」知ってもらいたいことなのだが、この「一番」という音の響きが、なんともいえず軽くていい。「最も」だともったいぶった感じになる。中井の訳の魅力が、ここにある。

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(51)

2023-11-17 21:56:58 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「アントニウスの最後」。女たちが泣き叫んでいる。「泣くな」と告げることばは、こうつづいている。

おちぶれはしても、おれはみじめにおちぶれはせぬ。

 強い誇りがある。「おちぶれる」というのは「みじめ」なものである。しかし、「みじめにおちぶれはせぬ」という。ことばにすれば、まるで、事実(現実)か違うものになるかのように。
 実際に、ことばにすれば、現実は違ってくる。ことばこそが現実である。いや、ことばは現実を超え、真実をつくる。だからこそ、「泣くな」とも告げたのである。「誉め歌」を歌えとも告げる。
 この、ことばへの強い意思は、カヴァフィスそのものの声でもあるだろう。カヴァフィスは、最後に言うだろう。「おちぶれはしても、おれはみじめにおちぶれはせぬ。」と。

 


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(50)

2023-11-03 23:02:39 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「一九〇三年十二月」は「一九〇三年九月」のつづき。だから「一九〇三年九月」ということばも出てくる。つまり、あれから三か月。 

よしんばきみの黒髪を、くちびるを、眼をうたえぬとしても、

 カヴァフィスは、ひとつの恋をあきらめたのだ。そして、そのとき「よしんば」ということばをつかっている。なぜ、「たとえ/かりに」ではなく「よしんば」なのか。「たとえ/かりに」では言いあらわせないことが、そこに含まれている。「強い」感情が含まれている。
 語りたいのだ。歌いたいのだ。黒髪を、くちびるを、眼を。だからこそ、黒髪、くちびる、眼ということばを書いている。「うたえぬ」といいながら、すでに語っている。つまり、これは「撞着語」というか「撞着文体」なのである。それを「よしんば」ということばが強調している。
 もし、この一行にことばを補うとしたら。「隠れていることば」を引っ張りだすとしたら……。
 思いっきり、思いのままに、ほしいままに、だろう。

よしんばきみの黒髪を、くちびるを、「ほしいままに」眼をうたえぬとしても、

 なぜ、「ほしいままに」を書かなかったか。それは「よしんば(縦しんば)」の「縦」という文字の中に「ほしいまま、こころのままに」という意味が含まれているからである。「縦」という文字には「はなつ」とか「ゆるす」「ゆるめる」という意味もある。
 したがって、この「よしんば」は、この詩の、実はキーワード(思想)なのである。書かれていない「ほしいまま」を読み取らなければ、そうせずに「要約」してしまえば、これは多くの「恋をあきらめた詩」になってしまう。
 書かれなかったことば、書かれたことばの肉体の内部に動いている「いのち」を読み取り、それを暗示させる。中井の訳詩は、そういうことをしている。

 余談だが。(この項、「藤井貞和の書評」と関連しているので、この文章の前の文章を参照してください。)
 野沢啓という詩人・評論家が『言語隠喩論』という本のなかで、「隠喩」と詩の関係、あるいはことばの発生について様々なことを書いているが、私がいま指摘したような「隠喩(「よしんば」が「ほしいまま」を隠している)というような具体例は書いていない(ように、私は読んだ)。
 かわりに何やら古今の哲学者、評論家の文章を引用し、詩を隠喩と結びつけ「特権化」している。
 「ことばの肉体」に注目すれば、「隠喩」は、さまざまな形をとって、いのちそのものに触れている動きだとわかる。人間の肉体の運動が矛盾を含んでいるように、「ことばの肉体」も矛盾を隠して動いている。そこに、あらゆる表現(詩だけではない)の、人を引きつけてやまない魅力がある。

 

 


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(49)

2023-10-31 18:10:42 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「一九〇三年九月」。

あまたたび、ああ、あれほども、あのひとの近くに、

 「あ」の音が繰り返される。「あ」は「あのひと」の「あ」に向かって、まっすぐに動いていく。この繰り返される「あ」の声のなかに、いったい、いくつの「あ」の変化があるだろうか。
 「ああ」は、ことば(意味)を探している。「意味(ことば)」は見つからないが、感情があふれてくる。
 「あ」、その単純な音。口を大きく開き、喉を開き、いや、意思で口を開き、喉を開くのではない。感情が、開かせてしまうのだ。その感情に酔っている。その感情に酔いたくて「あ」を繰り返している。

 

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(48) 

2023-10-21 22:05:03 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む


 「精神の成長のためには」何をすべきなのか。どうすべきなのか。法(社会)に「違反せよ」ということばが途中にある。そうであるなら、

官能の喜悦こそ大いなる教育。

 というときの「官能」は、世間(社会)に認められている官能ではないだろう。世間が否定する官能、そしてその「喜悦」が精神を成長させる、つまり精神を教育することになる。
 この書き方は、論理的である。
 それは、その論理が、誰でもが認める公理であるという意味ではない。別のことばでは「超越(する)」とも言う。だから、この詩には「超越せよ」ということばも出てくる。そもそも「官能の喜悦」とは、官能の超越でもある。

 


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(47)

2023-10-19 23:26:46 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「ユリアノスと神秘」。

こう言われて、このアホウは、

 この一行だけでは、ユリアノスが、いつ、どこで、誰に、なぜ、何を言われたのかわからないのだが、つまり、私の引用は、とても不親切でどうしようもないものになってしまうのだが。
 それでも、カヴァフィスがユリアノスをバカにしていることは、はっきり伝わってくる。「このアホウ」ということばの、強さ。よほど嫌いだったのだろう。そう感じるからこそ、「このアホウ」という訳語を中井は選んでいる。
 詩を読めば、何もかもわかるのだが、そして、それがわかったとき、読者もやはり「このアホウ」と思うかどうか。ユリアノスの行動と、そのときの周辺のひとの言動に引っ張られて、歴史の一こまを思い浮かべてしまうかもしれない。それでは、まずい。なんとしても、カヴァフィスのユリアノス嫌いを明確にする必要がある。中井は、そう思って「このアホウ」ということばを選んでいる。
 詩のなかに、詩の登場人物、あるいは歴史の一こまを見るか、それとも作者カヴァフィスを見るか。中井は、カヴァフィスを見ることを選んでいる。

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(46)

2023-10-18 22:21:27 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む


 「紀元前二百年」。

我等の共通ギリシャ語、

 「我等のギリシャ語」ではなく、「我等の共通ギリシャ語」。こういうとき、その「我等」のなかには「異質」が存在するということである。「異質」を超えて「共通」がある。そのとき、単に「我等の共通言語」といわずに「ギリシャ語」という。
 ここには乱暴な「思い上がり」のようなものがある。その「思い上がり」のために、たぶん、ギリシャはローマに屈した。

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(45)

2023-10-03 22:21:04 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「さるギリシャ大植民地にて、紀元前二百年」。とてもおもしろい一行がある。

重箱の隅までつつかれ、刻まれ、粉々だあ。

 ギリシャに「重箱」はないだろう。だから、これは意訳。
 さて。
 ここからが問題。
 「重箱」がないとして、それでも「重箱の隅までつつく」に類似した言い方はないといえるか。他の部分に書いてあるが、「些細なことを問題にし」難癖をつけるというのは、どの世界にもあることだからね。
 だからね……というのは、私の飛躍なのだが。
 だからね、ことばを読むときは「動詞」を中心にして読まないといけないのだ。動詞とは、つまり肉体の動きだが、その肉体の動きは、どのひとにも共通するものがある。肉体にできることは限られているからね。肉体は「概念」ではないから、他人とまったく違ったことができる人は限られている。みんな、似たりよったり。
 だから、感情も似るんだろうなあ。
 カヴァフィスの時代のギリシャも、カヴァフィスが描く紀元前のギリシャも、わかったつもりになれるんだろうなあ。
 これは、だから、注意しないといけない、ということかもしれないのだが。
 つまり、「わかったつもりになるなよ」と。

 だから。

 この一行、中井の訳は、ちょっと「意地悪」でもあるね。


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(44)

2023-09-26 10:28:29 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「小アジアの田舎にて」。戦争後の「宣言起草」、結果は思いもかけないことに。しかし、あわてることはない。なんとなれば、

名前のところだけ変えればいい。

 この詩は、事実にもとづくというよりも、「寓話」(寓詩)である。だからこそ、そこには不思議な「真実」がある。「事実」を超える「真実」がある。それは、いつでも、どこでも、だれに対しても「ぴったり」重なる。
 この「ぴったり」は、この詩に書かれているのだが、その「ぴったり」を含む行を取り上げるか、「名前」の行を取り上げるか、私は、ずいぶん悩んだ。「ぴったり」の方に中井の、訳語の工夫があるかもしれない。
 工夫といえば。
 タイトルの「小アジアの田舎にて」にも工夫がある。中井の訳か、カヴァフィスの選択か判断できないが、「小」のなかには「大」が含まれている。どんな小さなところにも「真実」は不動のまま存在している。「田舎」にも「都会」にも、ひとは、同じように生きている。「名前」が違うだけで、「生きる」ことは「ぴったり」重なる。
 やはり「ぴったり」の方が、この詩の「ポイント」だったかもしれない。
 詩を読むときは、「意味」に引っ張られてはいけないね。

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(43)

2023-09-23 10:30:08 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 主人公は「名哲学者の学校出」。サッカスのもとで哲学を学んだ。しかし、厭きた。政治に首を突っこんでみた。つまらなかった。キリスト教の教会にも顔を出した。曖昧宿の常連にもなった。顔のよさが幸運をもたらした。でも、将来は?

いつでも誂え向きのがあるさ。

 「誂え向き」以外に、ことばがあるだろうか。この詩の主人公、甘えん坊にぴったりのことばではないか。
 甘えん坊とは、いつも「誂え向き」の世界に受け入れられて、のうのうと生きて行ける人間のことだが、なぜだろう、そういう人間と、その手の世界は「一体」になっているようにも感じる。
 それこそ「誂えた」ように。
 そして、そのことばはまた、この詩のために「誂え」られたもののようにも感じてしまう。「一体」になっている。

 


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