ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 111ページ目 タブレットを操るソムリエ 対決は引き分け?

2014-01-02 23:08:38 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【111ページ】


「和さん、それでヴィンテージは?」


 滝川社長は、和音に答えを急かすように声を強めて言った。

しかし、和音は悠然とグラスを口に近づけて、目を再び閉じワインを

飲み干した。


「おっ、今度はねずみが勢いよく走って、ジャンプしましたよ!

残念、再び隣の畝に届かずひっくり返ってしまいました。ハハハ・・・」


「和さん、ヴィンテージを!」


 今度は、滝川社長の声にいらつきが混じっていた。

和音は、目を開けると平然と一言。


「私には答えることができません」

「それでは、2本目は和さんの棄権ということで・・・・」


 和音は頷く。

2本目のワインは紙で覆われているが、ヴィンテージのところだけ穴を開け、

シールを貼っていた。

滝川社長の専属ソムリエが、そのシールを剥がして、ヴィンテージを3人に

見せながら読み上げた。


「このワインのヴィンテージは1984です。」

「おっ、秋月さんの答えの1985年は一年違いで惜しいのですが

不正解です。和さんは棄権でしたので、2本目も引き分けになり、今回の

テイスティング対決は引き分けということになり・・」

「あっ!」秋月が滝川社長の言葉を遮るように声をあげた。