ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 110ページ目 タブレットを操るソムリエ 鼠が飛べない

2014-01-01 00:04:49 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【110ページ】


 和音は、さらにひと口飲むと、ワイングラスを顔の前まで

持ちあげた。

そして、そのままの姿勢で目を閉じ、暫く沈黙が続いた。

和音が目を閉じたまま口を開いた


「ムルソーのワイン名の由来は、ねずみのひとっ飛びという言葉から

生まれましたね?」

「そう、ムルソーのブドウ畑は、お互いに隣接していて、ねずみが

 ひとっ飛びで隣りの畑まで行けるということで?」


 滝川社長は、和音が目を閉じたまま、何を言いたいのだろうと

思った。

その時、和音が急に大きな声を出して笑い出した。


「どうかしましたか?」


 和音は、目を開け、滝川社長の方へ向き直った。


「いや、大きな笑い声を上げて申し訳ございません。

目を閉じていたのは、このワインを飲んでイメージが浮かんできたの

ですが、その光景があまりにもおもしろかったものですから」

「どのような光景ですか?」
 
「小さなねずみが、ブドウ畑から隣の畑へ飛ぼうとするのですが、

届かないで、ひっくり返ってしまうのです。」