土門拳記念館にて・土門拳記念室から白鳥池を望む
土門拳記念館は写真作品だけでなく館内の雰囲気にも魅了される。記念室にあるソファに座って目の前の白鳥池をじっと眺めていると瞑想するような気分になるし、企画展示室2の椅子に座って窓の外の庭園(勅使河原宏/流れ)を静かに眺めていると、展示室の空調が風の音に聞こえたり、地鳴りや海鳴りのように聞こえたりもする。先日は入館してしばらく来場者がいなかったので、いつもより長くこの極めて個人的なひとときを過ごしていたように思う。
「絵画と巡る土門拳」と題して氏の絵画作品も展示されていた。特に印象に残ったのがモディリアーニ風の作品。キャプションによると、土門拳はいつ頃からか「モジリアーニは天才だ!」と叫び出し、一流の道具をそろえて写真家業を中断して描き始めたという。作品タイトルは「Y嬢」だが、氏のお弟子さんたちはその作品を「ドモジリアーニ」と呼んだという。土門拳とお弟子さんたちの関係性を垣間見た気がした。
歴代の土門拳賞受賞者の作品から棟方志功や藤田嗣治のポートレートまで、実に多種多様で真に迫る作品を鑑賞することができた。生涯を通して何かを追求することの素晴らしさを改めて実感した。