時代は今や一億総評論家の時代です。
テレビでは、様々な分野の専門家と呼ばれる人たちから街行く老若男女まで、時によっては小学生の子どもたちまでもが求められれば、それなりの気のきいたコメントをしているのを毎日のように見かけます。もちろんそれは、テレビ局による巧な映像や音声の編集結果でもありましょうが……。
このたびの大震災後の復興の道筋や支援体制について、あるいは原発や風評被害への対応について、またエネルギー問題について、そして政治や経済・雇用対策について等々、その気になれば、今、私たちは、まことに残念ながら、コメントしたり論評したりする材料に事欠きません。
しかし、一億総評論家の時代だからこそ、それらについてコメントしたり意見を述べたりする人がいれば、私は最後にその人自身に向かって「で、あなたはどうするの?」と問いたいと思います。自らにそう問うことで、私たちは事件や問題に直面している当事者とやっと対等になることができ、彼らと対峙することを許されるのではないかと思うからです。
そしてそれは専門家ならなおさらです。論評したからには「で、私はこうします」と自らがとる行動について言及すべきではないでしょうか。その自覚もなく言葉を発するというのは、いかがなものでしょう。それは、顔も知らない遠い他人に向かって、ああしなさいこうしなさい、それはおかしいよ……、と無責任に言っているのと同じではないでしょうか。
最後に、「で、私はこうします」と表明することで、自分の発言内容に責任を取ることになるのだと思います。言いっ放しでは専門家の肩書が泣くというものです。それは聞いていて空しいばかりです。
たとえどんなに高尚で知識豊かなことを口にしたとしても、テレビでそんな発言しかしない専門家を見ると、「お前さんは専門家として、いったいどこでどんな修練を積んできたんだ!?」と質問を投げつけたくなります。ひとかどの専門家なら、自らがとる行動に見合った発言をしてほしいものです。
いやいや、それではあまりにテレビに期待し過ぎでしょうかね……。