北へふたり旅(15)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/ea/d5425620a4bd0e5faae31c7f6cc79f6b.jpg)
鈍い音がひびいたあと。
12歳年下美女のボールが、左の斜面に向かって飛びだしていく。
「あっ・・・ひっかけちゃった」
ミスしたことは、本人がいちばん分かっている。
ミスショットの代表格、それがひっかけ。
狙いを定めた方向でなく、最初から左へ飛びだしてしまうことをいう。
飛び過ぎれば、雑木林へ落ちる。手前なら、朝露の斜面。
木立ギリギリ、美女のボールが落ちていく。
固いものに当たったのだろうか、ポンとおおきく跳ねあがる。
「木の根にあたったかな?」
全員の目が、跳ねたボールを追う。
2度、おおきく弾んだ後、美女のボールが斜面の向こうへ消えていく。
OBは免れたようだ。
4人を乗せたカートが、第2打地点へ急ぐ。
フェアウェイのど真ん中に、ライバル美女のボールが見える。
妻のボールはライバル美女の後方、10ヤードの地点に落ちている。
しかし。12歳年下美女のボールはどこにも見当たらない。
斜面で2度はねたあと、草の中へ消えたようだ。
全員の足が斜面へ向かう。
ボール探しの時間は、5分。(2019年の新ルールでは、3分)
漫然と探してもボールは見つからない。
探しかたに、コツがある。
同伴競技者が打つとき、落下点まで見届けることが大切だ。
出来ているようで実はこれが出来ていない。見ているようで落下地点まで見ていない。
多くの場合、途中で視線を切っている。
球筋もチェックポイントのひとつ。
右へ曲がるタイプか、左へ曲がるのか、把握しておきたい。
トラブルになった時どちらへ消えたか、探す目安になる。
飛距離の把握も大切。
おおくのゴルファーが、なぜか前方を探す。
ボールとクラブが進化して飛ぶようになったとはいえ、その人の飛距離の
50ヤード先を探しても意味がない。
飛距離の手前から探していく。これもボール探しの鉄則のひとつ。
おたがいを知り尽くしたライバルは、ボール探しも速い。
12歳年下美女のボールは、175ヤード地点の斜面の中に落ちていた。
さいわい前は空いている。
運が味方すれば、グリーンに乗りそうな雰囲気さえある。
「日頃の心がけが良いと、ゴルフの神様がほほえんでくれるのよ。
狙えるわ。あなたの腕なら。うふふ」
ボールを見つけた妻が、ハンカチを置く。
目印を置くことも大切だ。
せっかく見つけても目印がないと、また見失う。
「つぎはわたしの番。
絶好のポジションに、ボールが有るんだもの。
負けずに乗せたいわ、わたしも」
向きを変えた妻が、斜面を下りはじめる。
その姿を遠目に見ていて、なんだか危なっかしい。
露の斜面はすべりやすい。
注意しているように見える。しかしそれでもなんだかバランスが悪い。
(足を滑らさなければいいが・・・)
そんな危惧を感じた時、妻がグラリとバランスを崩した。
(16)へつづく
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鈍い音がひびいたあと。
12歳年下美女のボールが、左の斜面に向かって飛びだしていく。
「あっ・・・ひっかけちゃった」
ミスしたことは、本人がいちばん分かっている。
ミスショットの代表格、それがひっかけ。
狙いを定めた方向でなく、最初から左へ飛びだしてしまうことをいう。
飛び過ぎれば、雑木林へ落ちる。手前なら、朝露の斜面。
木立ギリギリ、美女のボールが落ちていく。
固いものに当たったのだろうか、ポンとおおきく跳ねあがる。
「木の根にあたったかな?」
全員の目が、跳ねたボールを追う。
2度、おおきく弾んだ後、美女のボールが斜面の向こうへ消えていく。
OBは免れたようだ。
4人を乗せたカートが、第2打地点へ急ぐ。
フェアウェイのど真ん中に、ライバル美女のボールが見える。
妻のボールはライバル美女の後方、10ヤードの地点に落ちている。
しかし。12歳年下美女のボールはどこにも見当たらない。
斜面で2度はねたあと、草の中へ消えたようだ。
全員の足が斜面へ向かう。
ボール探しの時間は、5分。(2019年の新ルールでは、3分)
漫然と探してもボールは見つからない。
探しかたに、コツがある。
同伴競技者が打つとき、落下点まで見届けることが大切だ。
出来ているようで実はこれが出来ていない。見ているようで落下地点まで見ていない。
多くの場合、途中で視線を切っている。
球筋もチェックポイントのひとつ。
右へ曲がるタイプか、左へ曲がるのか、把握しておきたい。
トラブルになった時どちらへ消えたか、探す目安になる。
飛距離の把握も大切。
おおくのゴルファーが、なぜか前方を探す。
ボールとクラブが進化して飛ぶようになったとはいえ、その人の飛距離の
50ヤード先を探しても意味がない。
飛距離の手前から探していく。これもボール探しの鉄則のひとつ。
おたがいを知り尽くしたライバルは、ボール探しも速い。
12歳年下美女のボールは、175ヤード地点の斜面の中に落ちていた。
さいわい前は空いている。
運が味方すれば、グリーンに乗りそうな雰囲気さえある。
「日頃の心がけが良いと、ゴルフの神様がほほえんでくれるのよ。
狙えるわ。あなたの腕なら。うふふ」
ボールを見つけた妻が、ハンカチを置く。
目印を置くことも大切だ。
せっかく見つけても目印がないと、また見失う。
「つぎはわたしの番。
絶好のポジションに、ボールが有るんだもの。
負けずに乗せたいわ、わたしも」
向きを変えた妻が、斜面を下りはじめる。
その姿を遠目に見ていて、なんだか危なっかしい。
露の斜面はすべりやすい。
注意しているように見える。しかしそれでもなんだかバランスが悪い。
(足を滑らさなければいいが・・・)
そんな危惧を感じた時、妻がグラリとバランスを崩した。
(16)へつづく