君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
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同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 四話「追憶の破片」

2012-02-02 01:36:18 | 『君がいる幸せ』本編五章「時の在り処」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 四話「追憶の破片」

  現在 実戦演習用戦艦Albion
 何も会話をしようとしない二人に、一度は出て行こうとしたセルジュが部屋に戻り、二人にコーヒーを持ってくる。
「トォニィ」
「ジョミー」
 とセルジュは二人に声をかけた。
「僕はミュウではないけど、君達がテレパシーの会話すらしていないのはわかる」
「……」
「トォニィ。何のためにここまで来て、こんな事をしたんだ」
 とトォニィを促すセルジュ。
 そう言われても言い出しかねている彼を見て、諦めたように、ため息をついてからセルジュは自分の分のコーヒーをいれて、二人のテーブルの横に立った。
 そして、まずは今回の事はトォニィから頼まれたのでもなく、軍が動いた訳でもなく自分の独断でしようとした事で、それを知ったトォニィが彼の仲間を貸してくれただけだとジョミーに説明をした。
 その言葉に彼の優しさを感じつつもジョミーは怒っている態度を変えないまま言った。
「こんな事をした本当の目的を教えてくれ」
「その前に、僕の質問に答えてくれませんか?」
 セルジュが言う。
「答えられる範囲でなら…」
「ジョミー。あなたがジュピターの時に各地で集めていた情報を再調査させました。あなたは軍部では常に重要人物と見られていたので、ずっと監視がついていたようなものでしたね。あなたが持ち出し所有している報告のされていないその情報はこちらで再構成させたので、もうほとんど解析が出来ています。ですが、抜け落ちてる箇所が多くて…質問をしますが、間違った所があれば訂正して下さい。ですが…どうしても解けない部分が…」
「…ブルーの謎が解けないのですか?それは僕にも…わからないものです」
 ジョミーが答える。
「OK」
 とセルジュ。
「まずは、前にトォニィに言った。ミュウに関するその発祥についてですが…」
「ジョミーが言っていたのは事実だったんだね」
 トォニィが言った。
 そのままセルジュは続けた。
「今から約600年前、SD体制が施行された当初、人間を精神的に操るだけでなく人間そのものを作ろう言う実験も行われていた。遺伝子に手を加え、実験は失敗を繰り返しながら進んだ。やがて、出来たのは、第六感を強化した人間。能力者。それがのちにミュウと呼ばれる者、あなたたちを作り出した。体力を強化した者はカナリアと呼ばれるようになった。どうも、当初は実験体達は身体バランスが上手く成長出来ずになかなか完成されなかった。そして何年も実験は繰り返された。普通の人間に能力者のミュウ因子(と、今は呼ばれるものを)を植え付けるのも実験されていたが、それは未だに不可能だ。遺伝子操作で実験は続いた。そして、実験は続き400年前にとても強力な能力を持って生まれた者があった。それがオリジン(ブルー)ですね?」
 セルジュが言った。
「人類が彼をタイプ・ブルーと呼ぶよりオリジンと呼ぶのはそういう意味だ。サイオンのタイプが分かれるのはその後、ミュウが人の間に生まれるようになってから、彼が最初のミュウなのは間違いない。彼はミュウのはじまりで、今のミュウのDNAを辿ると全てが彼に行き着くはずだ…」
 ジョミーは答えた。
 相変わらず憮然としているトォニィだったが…。
 そこで、
「そんな過去を探って何の意味があるの?」
 とトォニィが聞いた。
「確かに僕たちは人間に勝手に作られた。作られたのにその能力で畏れられ迫害されてきた。それでも…」
 と、ジョミーは言葉を切る。
「人間との完全なる共存が最終目的。僕たちは許し合わないといけないんだ。ずっと同じ人間なのにと言ってきた僕らは『実際そうだとわかると』自分たちは特別な存在だと、彼らと違うと思っていてはいけないんだ。僕らはどこかで驕っている…」
「…力で支配した方がずっと楽なのに」
「ダメなんだ。それに未来はない」
「わかってる。ジョミー。それはわかるよ。だけど、僕達ばかりなんでそうしなければならないんだ」
「…人類は僕達が起こした戦いでマザーから解き放たれた。けれど、様々な問題が起きた。各地での暴動にはじまり、目立った所では海賊の多発、反政府勢力の台頭、それに踊らされたマザー信奉者の増加。弱者への暴力行為の横行、星系間の小競り合いや戦争回避まで、人間はそれに対処するのに手一杯だったんだ。僕らもミュウを守る為に戦艦を各地に配置させた。SD体制の解放は、君の言うように僕らは力で彼らを従わせただけに過ぎない」
「……」
「あのまま力で支配をしたとしても長続きはしなかっただろう。やがて人類が戦力で押し返してきて、僕らはまたこの宇宙を彷徨い、その望みが叶う日まで待たなければならなかったかもしれない。僕はもう戦いたくなかったし、君たちを戦わせたくもなかった…」
「僕はそうなっても…」
「戦っていないと不安なのか…?それはきっとタイプブルーの業(呪縛)だ」
「…!…」
「トォニィ…今の幸せでは満足できない?」
「……」
「もっと欲しいの?今は違うよね…」
「犠牲の上に立った幸せが怖い…。今はカリナを失いたくない。幸せが怖いんだ」
 とトォニィが言う。
「トォニィ。君は幸せになってはいけないなんて思ってはいけないよ。仲間たちは君が大変な思いで戦ってきた事は知っている。だから…あの皆の涙になったんだ。それを大切に思わないといけない。…幸せを拒むな。今まで感じて来なかった幸福だ。戸惑うのもわかる。だけど、思いっきり受け止めていいんだ。そしてまた、何か起きたら今度は仲間たちと考えてゆけばいい皆もそれを望んでいるのだから…」
「でも、ジョミー」
「幸せになれ。トォニィ」
「でも、ジョミーの幸福は?」
「僕は幸せだよ。そう言ったじゃないか…感じた事がないくらいの幸せだと」
「嘘だ。信じない」
「ジョミーこそ、幸せを拒んでいる…ように思える」
 セルジュが言葉を挟んだ。
 ジョミーに言いくるめられそうになっていたトォニィに冷静さが戻る。
 それを嬉しそうに見てジョミーは、
「確かにそう見えるかもしれないね」
 と言った。

「ねぇ、セルジュ」
 とジョミー。
 そう言われセルジュは少し身構えた。
「幸せの定義は何だと思う?」
「普通なら、自分の事を脅かす存在がない状態が続く事かな」
「それは、SD体制が植え付けてきた幸福感だよ」
 ジョミーが言う。
「…そうだとしても、そういう安定した状態が幸せだと思う」
「うん。それは間違ってはいない。安定した場所は生きていくのに必要だ。僕が目指すのはその先」
「安定した状態のその先?」
「僕達と人間の違いは何?」
「能力がある事」
「それだけじゃないよね。トォニィはわかる?」
「うっとおしいくらいの優しさ」
 とトォニィ。
「あはは。そうだね。ミュウは弱者である事に慣れてしまって、どこかいつも他人を優先してきた。戦いを経験して人としての誇りを取り戻しつつあるけどね」
 優しさ…。
 そういえば大佐(キースの事)はよくそう言っていたな、と思うセルジュ。
「セルジュ、人にも優しさはある。そういう人は沢山いる。けれど、多くの人間はそこをもぎ取られて生きていた。人を意のままに出来るような機械が上に居たのだから仕方ない」
 と吐き捨てるジョミー。
「ジョミー?」
 とトォニィが問う。
「…ミュウと人との違いは、優しさと強さ。だと僕は思っている。何年も耐えてきた粘り強さ。そこが繋がりを失ってきた人間を、人間同士の希薄した関係を繋ぐ役目をするだろう。絆を強くしてミュウと人間は、人は人となってゆくんだ」
「人と人を繋ぐ役目がこれからのミュウの生き方?」
「生半可な事ではないけど、そうなれるといいね」

「やっと人々は安定してきた。これからはもっと君たちを受け入れてゆけるだろう」
 とセルジュが言った。
「よろしく頼む」
 とジョミーは微笑んだ。



  続く