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ドン・ジュアン

2016-06-19 23:59:51 | 観劇
横浜で、観てきました。
私はKAAT劇場は、今回が初めて。いつも全ツで使う県民ホールの目の前だったので、立地としては迷いませんでした。
…構造がわかりにくい劇場だな、と(苦笑)。まぁ、人が多くて休憩時間もあまりうろうろしなかったので、探検もしてませんが。
イメージは、愛知芸術劇場の、縮小版みたいな感じ?愛知の大ホールは、ロビーも広くて動きやすいけど、KAATはちょっとロビー通路が狭いかな。
渋谷のオーブみたいな、迷路ではないですけど。

さて肝心の舞台。
フランスミュージカルということで、ポップなんだろうなと思ってましたが、楽曲の雰囲気は「ロミ&ジュリ」と「1789」の中間みたいな感じ。
どこまで原版に近いのかはわかりませんが、小池演出と生田演出の視点の違いもあるのかな…結構重くて、宝塚的アレンジは少なそう。
雪組の芝居力、アンサンブルの力量を観た、という感じですね。アンサンブルシーンが多いですけど、見事に揃って迫力もあり、すべて歌詞もわかる。それでいて、個々の芝居も厚みがあるので、全体の濃さが素晴らしいです。
作品の成功は、雪組のこのアンサンブルによる勝利かな、と思います。
かなり重いですし、宝塚としてはきわどい表現、歌詞などもありますが、雪組の宝塚らしいクラシカルな品の良さが、すべてを昇華してます。この品がないと、宝塚版としては成り立たない。
…月組とかでやったら、作品レベルは高そうですけど、リアルになりすぎて怖い作品になったかも(苦笑)。

作品の構成としては、悪行三昧のドン・ジュアンを周囲の人々が語っていく、というのが基本なので、ドン・ジュアン本人の物語というより、それにかかわる周りの人々の物語ですね。
それぞれが持つ、愛の形。恋人として友人として妻として理解者として父親として、どのような愛を注ぎ、それゆえに苦悩し、最後にそれを昇華していく物語。

だいもん君のドン・ジュアンは、前半の悪行三昧が一転、突然恋に落ちて良い人(?)になるので、理解しづらい(汗)。なにか、唐突に感じるんですね。「1789」で、いきなりロナンとオランプが恋に落ちた時みたいな、置いてきぼり感。
だいもん君も、悪行のときは鬼の形相(苦笑)で演じてるので、余計に怖いんですよね。まだ力一杯なのかもしれませんけど…。
舞台を観ると、ドン・ジュアンの悪行のもとは、母親を慕い、愛しすぎた故に母を喪った、そのトラウマ…に見えるんですが、違うかな。
そのために、女を愛することを厭い、恐れ、ただ凍った心で傲慢に捨てていくのみ…じゃないかな、と思いますが、だいもん君は悪行を快楽として演じてるので、なんとなく違和感がある…。
だから、恋に落ちるのが唐突に見えちゃうんだろうか…うーん。
ドン・ジュアンが恋に落ちるマリアは、女彫刻師。冷たい石像に命を吹き込み、その生きざまや心までも宿らせることのできる、神の手を持つ娘。
…ということは、凍った冷たい心のドン・ジュアンの氷を溶かし、命を吹き込むからこそ、ドン・ジュアンはマリアに恋をするのではなかろうか…。
と思うと、ドン・ジュアンはもっと、高慢で冷たく、快楽にふけりながらもただ虚しさを抱えた、哀しく憐れな青年であれば、女たちが惹かれ、友が案じ、父が愛する、人物になるのではないかなぁと、そんな風に思いました。

マリアのみちるちゃん。
女彫刻師、って当時の男社会でそんなことがあるのか?とちょっと違和感もありますが(苦笑)、みちるちゃんは可愛らしいビジュアルにすごく現代的な印象で、彫ってるときの自立したナンバーは面白かった。
それがドン・ジュアンと恋に落ちて、いきなり普通の娘になるので、それもまた唐突で戸惑います。
原作がそうなのか、生田先生の演出でそうなるのか…?

サキちゃんは、ドン・ジュアンの友人ドン・カルロ。物語の語り手でもあります。
…ものすごくカッコいい。抜群のスタイルで、身のこなしも綺麗で華やか。存在感がありました。
語り手なので、実際、ドン・ジュアンよりも歌ってるナンバーは多いかも。ドン・ジュアンを案じながらも、悪行にふける彼を嫌悪し、彼の妻を愛したがゆえに、彼を妬み、それでも彼を許し続ける…。
実際、ドン・カルロのほうが共感しやすく、苦悩も伝わるので、どうしてもドン・カルロの視点から作品を観てしまいます。
サキちゃん、歌も格段に上手くなりましたね。難しいナンバーをたくさん歌いこなしていて、お見事でした。それに、心の伝わるお芝居表現もしっかりできていたので、ついその細かい表情やしぐさを追ってしまいます。

瞳ちゃんが、ドン・ジュアンの妻エルヴィラ。
夫を愛するがゆえに、健気に尽くし、待ち続け、それがどんどん嫉妬と憎悪に変わっていく。その哀しみと激しさに、ドン・カルロが惹かれていくのも納得できる、瞳ちゃんの立派さでした。
むしろ、マリアとダブルヒロインの存在。
ひとこちゃんは、マリアの婚約者でドン・ジュアンに決闘を申し込むラファエル。
アンサンブルシーンを率いたり、ラストのクライマックスの見せ場もあり、とても華があって、お芝居も力強く、安心して観ていられました。
カリちゃん、アンサンブルの中心で歌ったり踊ったり大活躍でしたが、何と言ってもあの美女は…迫力とカッコよさと肉体美(爆)。
がおりちゃんの亡霊が…すごいメイクで、ひえぇなんですけど、でもそれでずっとラストまで出てくるので、ある意味一番インパクト大かも。亡霊なのに、歌ったり踊ったり大変(苦笑)。
ジュンコさんと美穂さんの存在感は、素晴らしかった。お二人がいればこそ、これほどの作品になったなぁと。
出演メンバー一人一人、すごく厚みがあって、レベルも高かったです。

初日から2日目でここまで出来上がっていたら、公演を重ねてどこまでレベルアップするのか、怖いくらいです。
雪組さんのアンサンブルと芝居力を堪能できるという意味で、とても面白い作品でした。
…物語としては、重くてしんどいので、好き嫌いはありそうですけどね。
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