下にー 下にー
花ざかりの田舎道を大名行列がとおる
毛槍をもった奴(やっこ)さんを先頭に
春の日なかをぞろぞろと進んでいく
白昼夢のような「奴のねり」に
野ネズミもイタチも道端に出てきて
ポカーンと見送る
通り過ぎた行列の幻に思わず目をこする
蝶さんもブンブン蜂さんも あれ見たか
ミミズさんも蟷螂さんも確かめたよね
たしかにここは昔の脇街道だが
陣笠人足に護られた殿様の駕籠だったとは・・・・
まさか いたずら狐の仕業じゃあるまいね
右に左にと打ち振る毛槍が妖しくないか
陽光をあびたアザミのような紫いろが
どうにも胡散臭いじゃないか
ハコベさん仏の座さん
あれは君らの仲間じゃないかえ
狐の奴がいつの間にか
キツネアザミを摘んで毛槍にしたんじゃないか
ああ 楽しいな楽しいな
道中を急ぐ必要なんてないのだと
お殿様がつぶやいたのかな
民百姓にものんびり見物させてやりたいなんて
まさかそんなと疑いなさんな
狐が仕組んでくれた白昼夢じゃないか
キツネアザミの毛槍が空に舞うのを
祭り気分で楽しもうじゃないか
(『キツアザミの白昼夢』2015/05/19より再掲)
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