「おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな」
この句は、感情の起伏を詠みこんだ芭蕉らしい名句でぁる。
俳句仙人さんの解説によれば、「鵜飼」という謡曲や古典的な和歌を下敷きにしているのだという。
しかし、鵜飼の最中の鵜匠と鵜の仕草は説明抜きに面白く、終わった後の寂しはまた説明抜きにこみ上げてくる。
解説を必要としないほど完成された名句とされる所以であろう。
蛇足ながら、感情の起伏〈対比〉を色鮮やかに示す作法は他のつけ入る隙もない。
長良川の下流で繰り広げられる夏の最高級イベントは、現在でも多くの観光客を魅了する。
篝火〈かがり火〉が持つ象徴性はいつまでも陰影を伴って思い出を紡ぎ続ける。
<参考=鵜飼の鵜>
ぼくの記憶では、海鵜を捕獲して供給する場所が茨城県の太平洋岸の切り立った崖にある。
NHKのドキュメンタリーで放映されたので覚えている方がいるかもしれない。
海鵜は高い崖の凹みに飛来して一休みする。
そのことに注目した捕獲者があらかじめ凹みに潜んで葦簀を張り巡らし、海鵜が飛んでくるのを待つ。
着地するとすかさず葦簀の下から手を伸ばし海鵜の足を掴む。
魚籠に2羽ほど押し込んでその日の捕獲は終了。
鵜飼も面白いが、海鵜の捕獲はもっと面白い。
ただし、注文がなければ捕獲しない。〈許可も出ない〉
鵜匠は新参の鵜に紐をつけて、魚を捕らえては吐き出す訓練を繰り返す。
「おもしろうて やがて悲しき 鵜舟かな」
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