どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

自薦ポエム119 『カマキリの物思い』

2022-01-29 00:27:32 | ポエム

 

しきりに降りそそぐ広葉樹の枯れ葉

追われるようにカマキリが逃げてくる

暑い夏が過ぎたらおまえも物思う仲間に入るのか

かたい地面をコツコツ叩きながらどこへ向かうのだ 

 

見たところおまえはまだ就活の年頃だな

景気はいいのか悪いのかはっきりしないし

めっきり獲物の減るこの冬をどう過ごすのか

まだ当てさえ見つけていないようだ

 

周りを見回しても行き交う人は年寄りばかり

耳は遠いし目もしょぼしょぼ

カマキリよりものろい足取りで

近くのドラッグストアに買い物にお出かけらしい

 

カマキリよ秋の深まりが早すぎないか

おまえも年金の積み立て組なんだろうが

期待していた受給年齢は遠のくばかり

やってられねえよとぼやくのも無理はないかもな

 

ヤマザクラやクヌギの葉が鬱陶しいのかい

おまけに山椒の葉まで小言のように降りやがる

すたこらさっさと逃げ出す気持ちがわかったよ

すまねえなあ僅かだが年金をいただいているんでな

 

だけどおまえには可能性がある

カマキリの世界には将棋はないのかい

碁でもオセロでもいいんだけどな

おまえの手つきは何をやっても似合いそうじゃないか

 

なになに地震予知のほうが向いてるってか

おまえそんなに自信があるのか

地中深くの岩盤破砕の微細動が感知できるのか

それができるなら将棋やオセロよりも価値がある

 

まあ深くは追及しないでおくよ

とにかく秋の深まりが早すぎるんだ

年金受給者にいわせりゃ正月が来たと思ったら

もう年賀状に追われる季節かって感じだもの

 

遠慮せずに逃げ出せよ

いやなものに縛られることはない

もたもたしているとカラスに狙われるぞ

じいさんが見守っている間にさっさと消えな

  

(2018/10/23より再掲)

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