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どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

どうぶつ・ティータイム(37)

2008-02-04 23:18:32 | 自然

     雪もなんのその

 雪が降った節分の翌日、朝の明るい陽気に誘われて急に高尾山に行きたくなった。
 駅に向かう途中、スリップしたワゴン車が両車線を塞ぐトラブルもあったが、なんとか午前中に高尾山口に辿り着くことができた。
 土産物店の呼びかけを聞き流して、足元に気をつけながら登山道を登り始めた。

 途中までは写真を撮りながらゆっくり進んだのだが、九十九折の先は急坂で間に合わせの靴では滑ってどうしようもない。
 折からバケツを持った管理員が二人降りてきて、顆粒状の白い物体を撒いているので訊いてみると、「塩化カルシウム・・・・」との答え。
「高速道路で撒くものと同じだよ」と、融雪剤であることを教えてくれた。

 無理をして先へ行っても、やがて男坂・女坂なんてものが現れて、難儀するのは目に見えている。
 そこで怪我をしないうちに早々と引き返すことにした。
 ところが下りは上りよりよほど滑りやすい。
 へっぴり腰で基点の広場まで戻ると、閑散としたケーブルカー駅舎に数人の客が集まり始めていた。

 予測したとおりリフトは運行中止。
 ケーブルカーには、それでも二人の客が乗り込んでいて、そろそろ出発時刻が近づいている様子であった。
 昼飯の時間だったし、あらためて山頂に向かう気もしなかったので、回れ右。
 あとは旨そうな蕎麦屋を探しながらたらたらと歩いた。

 このあたりは蕎麦も旨いし山芋も有名だ。
 となれば「とろろソバ」と行きたいところだが、お腹と相談して「麦とろ定食」を注文した。
 自然薯の味と舌触りはやっぱり最高。付いてきた香の物三種と赤出汁のナメコ汁に満足して帰路に付いた。

 帽子屋さんの手前の民家で庭木の美しい家がある。
 石垣の上の生垣も丸く手入れしているのが目を和ませる。
 感嘆して声を漏らしそうになった視線の先に、のんびり昼寝の猫。
 雪が降るごとに近づいてくる春の気配を一身に受けながら、薄目をあけて日向ぼっこの最中である。

「立春かァ・・・・」
「立春なんだなあ」
 特に変わったことのない一日を、ありがたく享受する。
 こんな日があっても、まあいいか。
 熟れたコロ柿に群がる鳥たちも、妙にうきうきしてたもんな。



 
 

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2 コメント

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猫の幸せ (知恵熱おやじ)
2008-02-06 00:40:59

僕もこの猫のように暮らしたいナー

人間は大変だー。


怠け者の知恵熱おやじ
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春の気配が (くりたえいじ)
2008-02-06 16:41:00
まだ真冬並みの寒さ。そんななか、高尾山に登ろうなんて! ?
でも、Uターンしてよかった。

雪道は上るより下るほうが怖い。やはりそうなんですね。先日の都会地での雪でも、まだ積もっている階段を下りるとき、びくびくしたもんね。ましてや山道を下りるなんて……。Uターン、正解でした。

そして、峠の蕎麦屋さんで、山かけ麦ごはんセットは、これまた正解。あの辺り自然薯が美味しいそうですからね。

石垣でうたた寝するみたいな猫。貴重なワンショット。何か満ち足りたような表情がまたいい。彼らはもう、春の気配を感じ取っているんでしょう。
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