I.衛星放送?
A008.妹
夕暮れ、街の灯は、赤だの黄だのと色とりどりに、輝きはじめていた。横浜は美しい街である。最近、建てられたインテリジェントビルの七階に石井が立っている。
田舎から越してきたころは、街の灯は美しいものに思えたのに、どうも今じゃあってもなくても、同じようなものに感じている。わずらわしいと思うことさえある。
四季ちがう景色を見せてくれた田舎の景色のほうが上等に思えてならない。しかし、注意深く観察すれば、都会にでも季節感はあると石井は自分自身に言いきかせた。
石井はインターホーンに向かって「ただいま!」と話しかけると扉があいた。声が鍵になっているのである。
「これなら、どんな泥棒だって、入れないだろう。科学の進歩とはたいしたものだ」
石井は心の中で思った。しかし、すぐに先日テレビで放送されていた防犯番組を思いだした。泥棒の技術も進歩んでいるのだ。
「お兄さん、時間通りのお帰りね。コンピューターの開発なんかしていると、人間性までコンピューターみたいになっちゃうのね」
内側から聞きなれた女の声がきこえた。石井はとても驚いた。
「また、桃子か!」
石井は不満そうに言った。そして、コンピューターにだってファジー(あいまい)という考えがあるだろうにと思いながら靴をぬいだ。
でも、そんなことは派手な化粧をした桃子の顔を見て言うのをやめた。そして、ひと呼吸おいて、
「今晩も遊びに行くのかい。井上くん、怒っているんじゃないのか」
石井はめずしく歳のはなれた妹に兄らしいことをのべた。
桃子は、ガムをくちゃくちゃかみながら、
「そうよ。あいつったら、別れてくれって、くさくさしちゃうわ…。だから、友だちとパーとしたいわけよ…。兄貴だから、そこんとこ、よろしく! じゃ、時間がもうないからね」
腕時計を見ながら一方的に話している。
石井は、ムッとした。
桃子は「そうそう、ごちそうは作っておいたからね。食べていいわよ。チョウ・サービスね」と言って、外に駆けて行った。
「そ、そ、それが、人の子の親がいうことか?」
石井はむかむかしていた。
「あれが、日本語か、まったく、宇宙人のような妹だ」
石井はあやちゃんを抱いた。しかし、目の前には桃子はいない。
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[レインボー・ループ]もくじ
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夕暮れ、街の灯は、赤だの黄だのと色とりどりに、輝きはじめていた。横浜は美しい街である。最近、建てられたインテリジェントビルの七階に石井が立っている。
田舎から越してきたころは、街の灯は美しいものに思えたのに、どうも今じゃあってもなくても、同じようなものに感じている。わずらわしいと思うことさえある。
四季ちがう景色を見せてくれた田舎の景色のほうが上等に思えてならない。しかし、注意深く観察すれば、都会にでも季節感はあると石井は自分自身に言いきかせた。
石井はインターホーンに向かって「ただいま!」と話しかけると扉があいた。声が鍵になっているのである。
「これなら、どんな泥棒だって、入れないだろう。科学の進歩とはたいしたものだ」
石井は心の中で思った。しかし、すぐに先日テレビで放送されていた防犯番組を思いだした。泥棒の技術も進歩んでいるのだ。
「お兄さん、時間通りのお帰りね。コンピューターの開発なんかしていると、人間性までコンピューターみたいになっちゃうのね」
内側から聞きなれた女の声がきこえた。石井はとても驚いた。
「また、桃子か!」
石井は不満そうに言った。そして、コンピューターにだってファジー(あいまい)という考えがあるだろうにと思いながら靴をぬいだ。
でも、そんなことは派手な化粧をした桃子の顔を見て言うのをやめた。そして、ひと呼吸おいて、
「今晩も遊びに行くのかい。井上くん、怒っているんじゃないのか」
石井はめずしく歳のはなれた妹に兄らしいことをのべた。
桃子は、ガムをくちゃくちゃかみながら、
「そうよ。あいつったら、別れてくれって、くさくさしちゃうわ…。だから、友だちとパーとしたいわけよ…。兄貴だから、そこんとこ、よろしく! じゃ、時間がもうないからね」
腕時計を見ながら一方的に話している。
石井は、ムッとした。
桃子は「そうそう、ごちそうは作っておいたからね。食べていいわよ。チョウ・サービスね」と言って、外に駆けて行った。
「そ、そ、それが、人の子の親がいうことか?」
石井はむかむかしていた。
「あれが、日本語か、まったく、宇宙人のような妹だ」
石井はあやちゃんを抱いた。しかし、目の前には桃子はいない。
閑話休題 環境問題のバイブルといわれるのは、 レイチェル・カーソンのかいた 『沈黙の春』です。 この書物の影響を有吉佐和子も受けている。 レイチェル・カソーン日本協会という HPもあります。 著作などについても、まとめてあったりします。 ここをクリックしてくださいませ。 レイチェル・カーソンが、 『沈黙の春』という書物をかいた。 権威ある人たちが、まず提議したのではない。 そんなことは医療の世界でもある。 「多重人格」というのは、 臨床心理の方が現場で患者をみていて、 発見した病気である。 はじめは、権威ある医師たちは、 それを否定した。 しかし、臨床心理士が発見できたというのも 偶然には思えない。 さほど患者の意見をきかないし 患者を知らない医師が発見できるわけがない 病気だったともいえるのではないか? 大学の構内だけにいては、 『沈黙の春』は生まれなかったともいえる。 最初のころ、 「地球はまわっている」といい否定されたガリレオ。 彼だけではないのである。 |
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